幼馴染も義妹にはかなわない
昼休み。
俺は屋上で裕子と裕子の作ったお弁当を食べていた。
「凄いな。これ本当にお前が一人で作ったのか。」
そこには重箱に三段のお弁当。1段目にはたけのこの炊き込みご飯。2段目にはエビフライやハンバーグ、3段目には野菜とフルーツが置かれている。
「もちろん。これでも料理は得意なのよ。薫が望むなら毎日だって作ってあげるわ。」
裕子が得意げにそう言うと俺の横から箸が伸びエビフライをつかんだ。そしてエビフライは保温式のお弁当箱に入れられたカレーに浸され、美玖の口元に届けられる。
「しっかりあげられていて美味しいですね。特にこのカレーにつけることでカレーうどんの様な気分が味わえます。」
「別に良いけど、美玖ちゃんも食べるんだね。」
「悪いな。米難民なんだ。助けてやってくれ。」
「なによ。それ。」
裕子の疑問をよそに美玖は今度はハンバーグをとってカレーにつける。
「これは新しい。デミグラスソースがカレーに溶け込むことで一気に洋食屋の味になりますね。」
「なんか複雑なんだけど。どうせ食べるなら普通に食べなさいよ。なんで全部カレーにつけるのよ。」
「米難民のやることだ。放っておけ。」
「だからなんなのよそれ。」
それからしばらく俺達は裕子の手のこもった料理を食べた。正直、少し作りすぎな位だったから三人で食べたことでちょうどいい感じだった。勿論、筍の炊き込みご飯もお米難民の手によってカレーに浸されたことは言うまでもない。
一通りの料理を食べ終えると裕子が言った。
「ねえ。ちょっと聞いても良い?」
「何だ?」
「最近、二人って仲良くない?前はこんなに話してなかったし、もっとぎこちない感じがした気がする。何かあったの?」
裕子の言葉に最後の炊き込みご飯を全てカレーに入れようとしていた美玖が露骨に動揺した様子で言った。
「えっ。べっ別になんでもないですよ。なんですか。急に。」
「その反応は絶対何かあったでしょう。」
「何の話かさっぱり分からないデス。」
美玖は、わざとらしく目線を外す。どうやら美玖は嘘をつくのが下手糞らしい。
「俺が少し話をしたんだ。」
俺が助け舟を出すと裕子は少し驚いた様子になった。
「話?何か話をしたの?」
「ああ。俺達は兄妹なのに会話が少なかっただろ。だから、もっと話をしようって言ったんだ。」
「ふーん。そうなんだ。まあ良いんじゃない。美玖ちゃんは昔は薫にべったりだったもんね。逆に、最近距離がありすぎるのが不自然だったくらいだし。」
裕子の言葉に美玖が目を見開いた。
まあ気持ちは分かる。そもそも美玖が俺から距離をとったのは裕子のせいである。それなのに平気でこんなことを言う裕子はおかしいと思っているのだろう。
もっとも裕子のことを美玖より理解している俺からしたら今の言動にはの違和感も感じない。本気で思っているのだ。今の裕子は。
しかし、そんな裕子に対する理解程に俺は美玖を理解していないのだろう。美玖は予想外にも急に俺の腕に抱き着いてきた。
「はい。もう遠慮しないことにしました。私と兄さんは今よりもっと仲良くなるべきなんです。だって兄妹なんですから。」
いや。普通の兄弟は抱き着いたりしないだろ。
当然のことながら裕子は凄く驚いている。
「えっ。急にどうしたの。こんな学校で薫に抱き着くなんて。いや。家でも駄目だけど。」
しかし、美玖は勝ち誇った様子だ。
「えー。駄目なんですか?私は妹だからどれだけ兄さんにべったりしても許されるんですよ。まあ彼女でもない裕子さんは駄目でしょうけどね。雨女ですし。」
だからその雨女いじりはやめてやれよ。
後、美玖の行動の意味はやっと分かってきた。こいつは夢の中の裕子に対して仕返しをしているのだ。わが妹ながらなんて料簡の狭い奴なのだろう。
「ちょっと。とにかく離れなさいよ。」
珍しく少し動揺した様子の裕子を眺めながら、俺は午後の授業に思いをはせたのだった。




