幼馴染はチャンスを逃さない
そんな夢を見た朝。
俺が食卓に降りて行くと机の上には、書置きとともにコンビニのサラダが置いてあった。
(これ。美味しいので食べてみてください。)
書置きの主は美玖だ。どうやら、最近ははまっているコンビニのサラダを俺の分も用意してくれたらしい。
俺は、パンをトースターに入れて、朝食の支度を始めた。美玖と朝、会うことがないのは昔と変わらないが、机の上のサラダの存在は俺と美玖の関係が昔より深まりつつあることを感じさせてくれる。
そんな感慨深い気持ちを感じながら朝食を食べ終えると家のチャイムが鳴った。どうやら裕子が迎えに来たようだ。
「薫―。今日は暖かくていい感じの日ねえ」
「そうだな。というかお前。今日は随分、テンションが高くないか?」
「当たり前でしょ。昨日は薫が私にときめいてくれたんだもの」
裕子は屈託のない笑顔でそう答える。
言うまでもないことだが裕子は凄く可愛い。学校でも人気者で毎日の様に告白されている。
そんな彼女にこんなことを言われながら、反応を濁し続ける俺はいつか、天罰をくらうのかも知れない。
「ときめいてなんかねえよ。」
「えー。まあそういうことにしておいてあげる。それよりもお昼よ。今日は屋上で一緒に食べましょう。」
「急にどうしたんだよ?」
「別にー。あっ。弁当は買っちゃだめよ。今日は私が作ってきたんだから。」
よく見ると裕子は凄く大きな箱を風呂敷で包んでもっている。
「弁当ってそれか?」
「ええ。重箱で三段もあるから楽しみにしててね。昨日はこのせいで眠れなかったわ。」
「そんなに気合入っているのか?」
俺の言葉に裕子はまっすぐこちらを見つめた。
「ええ。勿論。覚悟しておいてね。久しぶりのチャンスだもの。一気に私に惚れさせて見えるわ。」
まずい。最近の裕子からは何か強い意志の様なものを感じる。そしてそれに惹かれる自分がいないわけではない。
「急にやめろよ。大方、道子さんになんか変なこと言われたんだろ。」
裕子の攻勢をただ流すしかない俺は、内心に強い罪悪感を抱きながら裕子にそう言った。




