俺と幼馴染が付き合うはずがない
その日の夜。俺は再び夢に捕らわれていた。夢の主は勿論、美玖である。夢の中では、リビングの食卓で俺と裕子が左右に座っており、向かい側に美玖が座っている。
「それで。お二人から話って何なんですか。」
「実は、今日は美玖ちゃんに伝えたいことがあってきたの。」
「伝えたいことですか。」
「ええ。そうよ。とっても大事な話。」
裕子は、そう言うと俺に抱き着いた。
「ちょっと何してるんですか?」
美玖は慌てた様子で裕子を俺から離そうとするが俺は落ち着いた様子で美玖を制した。
「良いんだ。」
「何が良いんですか?良いわけないじゃないですか。」
落ち着かず畳みかける美玖に裕子は満面の笑みで答えた。
「そういうこと。私達、付き合ってるの。」
「えっ!?」
美玖は目を大きく見開き、そのまましばらく固まってしまった。
前から思っていたことだが、驚いたり、困った時の美玖の可愛さは抜群な気がする。元々が人形っぽいからだろうか。
しばらくすると少し意識を取り戻したのか、美玖は泣きそうな声で言った。
「そんな。兄さんに彼女が出来るだけでも悪夢なのに。それがよりによって裕子さんなんて。」
「ごめんね。私達愛し合っちゃったの。」
裕子はそう言うと美玖にウインクをした。完全に美玖を煽っている態度だ。
ちなみに、本当の裕子は良いやつだからここで美玖を煽ったりはしない。美玖の想像の中の裕子はどれだけろくでなしなんだと考えると少し面白く感じる。
「兄さん。今からでも遅くありません。裕子さんとは別れてください。この女は運動部でもないのに、20分休みにクラスメートとバレーボールするような女なんですよ。それに雨女なんですよ。」
雨女は、別に良いだろ。
「何を言われても俺の気持ちは変わらない。俺は裕子に惚れたんだ。」
「惚れた!?」
美玖は夢の中の俺の言葉にまた固まってしまった。
そんな美玖の様子を気にしたそぶりもなく夢の中の俺は満面の笑みで裕子を抱き寄せた。
「ああ。俺の心は全て裕子の物だ。」
「ごめんね。でもしょうがないわよね。好きになっちゃったんだもの。」
美玖は、俺達の様子を見て、涙ぐみはじめた。
「ねえ。兄さん。」
「なんだ?」
「なんで私じゃなくて裕子さんなんですか?私にあって裕子さんになかったものはなんなんですか。」
美玖の言葉に夢の中の俺は少し考える様子を見せた。
「やっぱり距離感だな。」
「距離感?」
「ああ。やっぱり俺は、恋人とはいつもべったりしていたいんだ。でもお前って、あんまり側にいてくれないだろ。朝も別々だし、学校でも話しかけてくれないじゃないか」
夢の中の俺はどうやら恋人とべったりしたいタイプの面倒くさい男らしい。すると美玖は声を大きく張り上げた。
「そんな。私だって出来ることならずっと兄さんのそばに居たいわよ。ただ、周りの目とか裕子さんのことを気にしてできなかっただけよ。」
「つまりその程度の愛ってことだろ。裕子は、周りの目なんか気にしないで、ずっと俺のそばに居てくれるぞ。」
俺の言葉に裕子は俺に抱き着いた。ちなみに裕子も付き合ったらそんなにべったりなタイプではない気がする。
「じゃあ、私も四六時中、兄さんのそばにいるわ。兄さんのためならすべてを捨てたってかまわない。必要なら学校だってやめる。だから私と付き合ってよ。」
「うーん。」
「何が駄目なのよ?」
「やっぱりお前はただの妹だからな。そういう目では見れない。」
俺の言葉に美玖は悲鳴を上げ、そのまま夢が途切れた。恐らく美玖が起きたのだ。悪夢を見て、突然目覚めるあれである。




