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~時代の流れの狭間に散るとき~

ソファに座って夢から覚めたようにボンヤリしていたユージとキキョウは、ミドリが隣の部屋で誰かにメールしているのを見て、どちらからともなく手を取り合って音を立てないように部屋を後にした。


2人とも背が高く日本人らしくない圧倒的なスタイルの良さから人目を引きやすいのでどこに行けるともわからなかったが、とにかく、部屋を抜け出して、何かから一緒に逃げられたような爽快な気分が味わえた。


もう朝の通勤通学の時間帯にかかっていたので駅に向かう方の道は人が集まるように増えてきていて、顔を隠して知らない道を反対の方向に進んでいった。


キキョウはフードを被りユージはミドリがくれた帽子を深めに付けて並んで足早に歩いていたが、朝のラッシュタイムはとにかく人が多かったので自然と湾沿いの公園のベンチに向かっていて2人はしばらくそこで座って過ごすことにした。


どこか力なく歩く薄着で寒そうなユージに寄り添ったキキョウは、いつものスマホアプリの異次元夢の中にいるような気がしてならなかった。


キキョウは両腕をユージの痩せた身体を包むように添わせて身体を出来るだけくっ付け、ユージはキキョウの肩に腕を回して、2人はもう1時間近く時おり優しいキスをしながら穏やかな気持ちに包まれて座っていた。


‘キキョウ、ありがとう…’

’遊園地の仕事、やって良かった…ユージに会えたもの…‘

‘キキョウと一緒に人生を生きたかったな…’

’これから生きようよ‘

’いつの頃からかな…キキョウに会いたくて…人を好きになるって…’

‘ユージ…?’

’…‘

‘眠ったの…?’

’…‘

‘!’


キキョウはもたれ掛かって返事をしなくなったユージの身体から夢の中で嗅いだのと似たガソリンのような匂いがしたように思い、

慌ててミドリに連絡をした。


それから後の事はあまり覚えていないキキョウの頭に、どこからともなくいろいろな声が聴こえてきて止まらなかった。


’私のスケジュールはどうなんのよ、他の仕事やめて入れたのにさ‘

‘まだ迷惑かける気かぁ’

’あと2年くらい頑張れなかったかね…‘

‘マンションの中でなくて助かったわ…’

’やっとマネージャーになれたのに‘

‘せっかくの映画、どーすんねん’

’やっぱりなぁ‘

‘中学行ってないからって、少しは自分の頭でものを考えてなかったのかねぇ’

’2年先まで契約、どーすんだよ‘

‘サイズの合う衣装が無くて、これだけ揃えた苦労が水の泡だ…’

‘チャンス来たかも…’

’ここ数年は大スターだったんだから、まあ、仕方ないか‘

‘あんだけ売れるとおかしくなるんやね’

’おい、代役探そう‘

‘お気の毒だけど、あとは任せて…’

’心不全でいこう‘

’首と手首の事は出すなよ‘

‘ホントに戻らないのか’

’舞台は中止だ‘

‘仲間も恋人もいないままで…’

’伝説入りするにはあと2年は活躍しないとな…‘

‘レコーディングは延期だ、代替アーティスト探しからだ’

’番組差し替えを‘

‘特番組むぞ’

‘誰か、出生とか素性はわからないのか?’

‘誰かに彼の人生についての書き下ろしを投稿させろ’

’前の夜に酒を飲ませた女は何者か調べろ‘

‘服毒か?’

’一緒に居たのは女らしいぜ‘

’あり得ないわ、嘘だよね…‘










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