~友達って、いったい誰のことよ…~
キキョウは近頃、朝目が覚めてもスッキリせず頭がボンヤリして眠いことが多いので、毎日学校まで1時間歩いて頭をスッキリさせて、しかもキレイに体重を落とすことにした。
歩いているといろいろと頭の中が整理できて、夢で触れあう昔の日本の男の子たちは皆まっすぐで人としての芯があること、ただのエロい馬鹿に思える男たちもいつ死ぬかわからないような暮らしのなかでその日その時を貪欲に一生懸命生きているだけなのかもということを感じられる。
自分をモデル事務所に連れていってくれた同級生は、
あれから学校ではキキョウを避けるようになっていてまったく話をしなくなってしまったのだが、モデル事務所のミドリさんが言うには彼女はドラッグ使用者に人気がある店の常連女子高生ではないかと事務所が疑ったとか。
彼女がオーディションで上半身を脱がなかったのはタトゥーがあるからで、事務所スタッフがそれを彼女がしゃがんだときに見たのだとも言われたことには驚いてしまった。
たしかにドラッグは学校のクラスメイトのそれらしい誰かに頼めば最終的にはキキョウでも入手可能だろうと思う。
マリファナ、ハッシッシュ、スピード、エス、コカイン、シンナー、トルエン、脱法ハーブなどなど、名前くらいは普通の高校生でも知っているけれど、キキョウにしてみれば違法にそれらを入手するためのお金も少額ではないし大学進学や健康と引き換えにする程の価値があるとは思えない。
モデル事務所はドラッグに近い業界だと勝手にイメージしていたが、それほどいい加減なところではなく何人もの人達と一緒に一つ一つ造り上げて地道に仕事をするところなのだとわかったことは、社会勉強だ。
看護師の母をみていると医療職は経験年数に関係なく時給1万5千円の医師と2千5百円の看護師という、医師ライセンスを持つ者だけが勝ち組であとは安月給の下働きという世界観なのが分かるので、医学部が無理な自分の進路としてはありえ無い。
偏差値エリートの父も結局は主夫でパート塾講師をしていて生活費はギリギリの母頼みが現実なので、もしモデル事務所でのキキョウの仕事がうまくいけば金銭的には望ましいことだ。
自分にはこれといって何もないキキョウはたとえ夢で他の女の体験をするにしてもせっかくの大事な何かが理解が出来ない気がして、しばらく現実を生きて経験値をあげてから夢を写メることに決めた。
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日曜日は、まだ客を入れない朝早い遊園地に撮影スタッフらと入って更衣室でヘアメイクをしてもらったあと用意されていた可愛い風の衣装を身につけて、デートシーン撮影の相手背の高い男の子と並んで歩いた。
撮影すべきスポットは決まっていると教えられたが、移動は2人で歩いて恋人らしさを演出することになっていて男の子が話しかけてくれた。
‘キキョウちゃん、こういうのは初めて?’
’そうなんです‘
‘彼とデートしてる?’
’いないです、デートとかしたこと無いです‘
‘じゃあボクが初恋人だね’
’はい‘
‘可愛い顔で笑うね’
’何て呼べばいいですか?‘
‘ユージで’
3ヶ所目のローラーコースターの撮影ではかなり打ち解けて、キキョウからもハグしたりくっついたり出来るようになり、常にうまくリードしてくれるユージはカメラマンと3人の観覧車の中でキスをしてきた。
キキョウは自然な流れでキスをしてくれたユージを本当に好きになっている感覚になり、帰りたくない、という仕草が自然に出来て撮影スタッフからも好評でユージが連絡先を書いた小さいメモを目立たないように手渡してくれたことが嬉しかった。
仕事が終わって帰宅してからもユージとの楽しいデートが忘れられず、お風呂から出て眠る前に勇気を出してユージがくれた連絡先にLINEしてみた。
ユージは撮影の時と変わらず丁寧で優しく、舞台のオーディションが終わったあと待ち合わせようと言ってくれたので早速明日の夜会えることになった。
写メった夢体験をしないまま眠ることが増えてきてしばらくは男の子を身近に感じる機会が失くなっていたキキョウにとって今日のユージとのキスはこの現世のホンモノの男の子とのキスだ。
翌朝学校に歩いて行きながら、キキョウは夢の中で顔もよくわからない相手とキスをしたの後と昨日の仕事としてユージと現実のキスをした後の胸の熱さがなんだかよく似ているな、と感じた。
どちらかと言うと夢の中の限界を拡げたいのもあって、ユージに初めての相手になってもらいたい…、と思ったキキョウは、ユージとの待ち合わせに行く前にいつだったか思わず買ってしまった美しい花びら風レースの高価な新しいブラジャーとお揃いのパンティを身につけておいた。




