~衆道ってBLというかパワハラでしかない~
夢から覚めるタイミングについては自分が嫌だと思った時なのか、一定の時間が過ぎた時なのかよくわからないままだったが、
気になった絵の中の女を次々に体験していても自分に無い経験は体感できないことがキキョウにもわかってきた。
スマホを使ってこんなことができることを知ったのは夢の中で教えられたことだったが、自分の夢に現れたその人物のことは顔も声も姿も記憶からすでに消えてしまったのか何ひとつ思い出すことが出来ない。
高校に進学したとはいえ将来やりたいことも強く興味を惹かれることも特にないキキョウにしてみれば頑張って勉強する意味もわからず、相手もいないのに恋でもしたいと考えるような日々を過ごしているので時々通学のバスで見かけるよその高校の男の子を探したりしていた。
‘キキョウ!おはよ’
’おはよ‘
‘最近よく図書館で宿題してるらしいね?’
’ほんのちょっと寄るだけよ‘
‘じゃあ放課後付き合ってくれない?’
’いいよ‘
‘実はさ昨日の帰りに駅前でモデル事務所に誘われちゃってさ、付いてきて欲しいんだ…’
’え、すご‘
‘キキョウだってタッパあるんだから声かかるかもよ’
’まさか…’
2人は放課後、一度帰宅して私服で恵比寿駅まで行き名刺の住所を探しながら20分程歩いてモデル事務所に着いてしまった。
’こんにちわ、あなたたちオーディションに来たのね?‘
小さいビルのエントランスでモジモジしていると綺麗な女が声をかけてきた。
‘はい、昨日名刺をもらいました’
’2人とも背が高くて脚も長いわね‘
‘2人でオーディション受けても良いですか?’
’そのために来たんでしょ?一緒にいらっしゃい‘
その女は笑うと目尻のシワがかなり多いがおでこや頬はツヤツヤしていて20代後半からお金をかけた50代前半のどの辺りの年齢かわからない感じだ。
中年男2人とその女がキキョウら2人に華やかな世界で活躍するために必要な努力と責任感の話をしたあと、若いモデルらしき女の子が3人入ってきて指示されたとおりに上半身を脱ぎ笑顔でウォーキングをした。
やってみるように言われたキキョウの友人は結局脱ぐのを拒否したのだが、キキョウは夢でいろいろな体験をしたからなのか見せるぐらいのことには特に抵抗も無い自分に驚いてしまった。
当然キキョウだけ来月の撮影会に出るよう誘われ、17歳の現役高校生のため親の承諾を得るようにと書類を渡された。
家では母も父も仕事の内容を自分たちに事前に報告してもらえるのならばやりたかったらやっても良いと好意的だったが、いずれ鼻を高くする美容外科を予定しましょうと言われたことは看護師の母にも黙っていた。
そのモデル事務所は有名大手の系列で誰もが知っているモデルやタレントを何十人もかかえているところだとわかったため、ふとモデルをやってみたくなったキキョウだったから他人の前で上半身を脱いで歩けたのだ。
モデル事務所には未知の夢が溢れていたので初めて会う人たちの前で、しかも初めての場所で自分の裸の胸を出してでも何かを得たかったキキョウは、
戦国時代の男の子が権力者の欲っするままに自分の身体を提供した‘衆道’という縛りも、誰かのためと自分のために得ようとする夢に近づくためだったのだろうと理解した。
キキョウはウォーキングというより裸の乳房が揺れるのを爪先で感じながら視線を感じつつ歩いていただけだが、
こんな、’恥ずかしくて嫌なことを我慢するなら高みに登る機会をやるぞ‘なんていうのはパワハラ確定だな、と思った。




