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世界最強の憑魔術師に覚醒したので第二の人生を楽しみます!  作者: 雉子鳥幸太郎
二章

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ひとつ上の男

「また君か……」


 ブネはやれやれと小さく溜息をつき、白衣を靡かせながら目の前に降り立った。

 俺を上から下まで舐めるように見た後、「ふん」と鼻を鳴らす。

 

 どうすればいいんだ、この状況は……。


「どうやら少しは()()()なってきたようだね」

「どういう意味?」

 質問には答えず、

「ふむ……、今回、私が呼ばれた理由はなんだろうか……」と、両手をポケットに突っ込んだままウロウロと歩き始めた。

「理由?」


「君に言ってもわかるまい」


 む、その言い方は何かイラっとするな。


「そんなの、言ってみないとわからないだろう?」

「ほぅ、そうか。では少し話をしようか」


 ブネは宙に浮き、胡坐を掻いた。

 冷静になってみると、凄い光景だ。

 銀髪の美少女悪魔が、黒い下着姿で白衣一枚だけ羽織っている。

 昔見たエロアニメにも負けてないな……。


「私はなぜ浮いていると思う?」

「へ? さぁ、それは……魔力か何かで……」


「ふむ、君の言う『魔力か何か』という具体性の欠片もない力で、私は浮いているのだな?」

「あー、いや……悪かった、俺にはわからない」


「意外と素直だな、よろしい。さて……、また、こうして君の前に呼ばれた。こうして見る限り、君も中々成長しているようだが……私の力を貸すにはまだ早い気もする。どうしたものか……」


 ブネは前屈みになって、俺を覗き込むように見つめる。

 銀色の髪がはらりと流れる。

 クレバスの如き谷間が刻まれた胸元に、目が誘い込まれそうになるのをグッと堪えた。


「どのくらい強くなったら、力を貸してもらえるんだ?」

「明確な定義は無い。だが、私が貸す気になれば、例え君が赤子だろうが貸す」

「それは……ブネの気持ち次第ってことかな?」

「そうなるな」

 無表情のまま、目線も合わせずに答える。


 むぅ……ブネは是非とも憑魔しておきたい。

 レベルSダンジョン、そして桐谷を相手にするには手札を増やさなければ……。


「確か……ブネはポータルを調べているんだっけ?」

「それは違うな。私が研究しているのは、この世界そのものだ。ポータルはその一端にすぎん」


 ブネは地面に降り立つ。

 両手をポケットに入れ、楽しそうに魔石を回収している石丸さんをチラッと見た。


「部外者は少し眠ってもらおうか――」

 そう言った瞬間、石丸さんがすとんとその場に倒れた。


「石丸さん⁉」

「案ずるな、眠っただけだよ」

「そ、そうか……」


 顎に人差し指の背を当て、ブネは俺に言った。


「この世界、そうだな……宇宙に存在する物質、反物質、放射線、素粒子、つまるところ『物』を取り除いたとする、そこには何が残ると思う?」

「何も残らないんじゃ?」


「違うな、(フィールド)が残るのだ。まあ、それは静かな海のようなもの……、時折、何かの拍子に波が起こる」

 ゆっくりと辺りを歩きながら続けた。


「場に波が起こることで、粒子が生まれる。全部で17種、4つのカテゴリに分類され、それぞれに役目がある」

「一体、何の話なんだ?」


「君のいう『魔力か何か』を解説してやっているのだ」

「え……」


「何だ、知りたくないのなら止めても良いが?」

「知りたい! 知りたいです、続けてください」


 小さく頷き、ブネが後ろで手を組む。


「例えば、全ての物を構成しているのは『レプトン』と『クォーク』だ。太陽や月、私も君も、全て。そして、物に性質を与える粒子も存在する。『ボゾン』『フォトン』『ヒッグス』とまあ……即ち、この世界は4つのカテゴリに存在する17種の粒子の相互関係によって、生み出されている――よっと」


 なぜか、ブネは俺の背中に飛び乗った。

 俺は慌てて足を持って肢体を支える。

 すべすべの肌、肩に押しつけられた柔らかな感触に、思わず鼓動が高鳴る。


「ここからが本題だ。我々の知る魔素(マナ)とはその粒子の一つ。『アザトース』と呼ばれるカテゴリに属していて、こいつは物に超常性を与える。君がいうところの『魔力か何か』の正体がこれだ」

「わかったようなわからないような……」


「むぅ……。よし、馬鹿にでもわかるように言ってやろう、アザトースに凄く作用できれば、世界に凄い事が起こせる。凄さは作用できる度合いで決まるのだ、わかったか」

「でも、どうやってアザトースに作用するんだ?」


「それがわかれば、誰も苦労していない。言ったであろう、私も道半ばだと」

 ブネが耳に息を吹きかけてくる。

「おわっ⁉ ちょ……そろそろ降りてくれない?」


「断る」


「え……」

「今、気が変わった。力を貸してやっても良いが……条件がある」

「ホントか! 何でも言ってくれ!」


「よろしい、では、君。私の実験体(モルモット)になりたまえ」

「じ、実験……? い、いや、それは……死ぬのは無理だよ?」

「命は保証しよう。なぁに、ただの実験だ。心配するな」


 ブネの顔は見えない。

 どうする……俺は騙されているのか?

 しかし、ブネは強そうだしなぁ……。


「一つだけ教えてくれ、実験って何をするんだ?」

「アハハハ! それを言ったら実験にならないだろう?」


 初めて笑い声を聞いた。

 背中に乗ったブネが太ももで締め付けてくる。


「ほれほれ、どうだ? 私の力が欲しくないのか? ん?」


 首筋に吐息が掛かる。

 背筋がゾクゾクっとした。


「お、俺を拘束するつもりじゃないのか?」

「否、君の自由も約束しよう、これでどうかな?」


「わ、わかった――、俺に力を貸してくれ」


 ふわっと身体が軽くなった。

 ブネが宙に浮き、俺の前に降り立つ。


「よろしい、契約は成立した。では早速……」

「ちょちょ⁉ な、何をするつもりだ?」

「ほぅほぅ、中々の反応だな……」


 そう言って俺の唇を指でなぞる。


「ぐむ……」


 俺の口をこじ開け、指を突っ込んできた。


「んーっ!」

「ほらほら、実験なんだから我慢したまえ」


 ブネは怪しい笑みを浮かべながら、俺の舌を指で弄ぶ。


「体温、心拍数ともに上昇……アハハハ! 興奮しておるのか?」


 左腕を後頭部に回し、俺の口からゆっくりとブネが指を抜く。

 唾液の糸がキラリと輝いた。

 宙に浮きながら、俺の腰を両足で蟹挟みする。

 そして、白衣の中の豊満な胸へ顔を押しつけられた。


「さらに上がったな?」


 グイッと髪を引っ張られ、顔を上に向けられる。

 目の前には上気したブネの顔がある。


「力が欲しいか……? ん?」


 ブネは舌を蛇のようにくねらせて、問いかけてくる。

 俺は無言で頷いた。


 すると、俺の頬に舌を這わせながら、

「ん……聞こえんなぁ……それでは何もしてやれぬ……」と息を荒くする。


「ち、力を貸してくれ……」

「なぜ?」

「……どうしても、力が必要だから」


 ――耳に舌先が入ってくる。


「だから、それはなぜだ……?」

「れ、レベルSダンジョンに行く……」


「ほぅ……それで私の力が必要だと?」


 灰色の瞳で俺の目を覗き込む。


「あ、ああ……必要だ」

「そうか、必要か……」


 ブネが足先で触れた。


「え⁉ ちょ……」

「ふむ、まあ……良いだろう、頃合いだ」


 ガッとブネが俺の頬を片手で掴んだ。


「口を開けろ」

「ぐ……⁉」


「ほぉ……さらに上がったぞ。ふむ、君は乱暴にされるのが好きなのかな?」

「ち、違う……」


 恥ずかしさで頬が熱くなった。


「ふふ、まあ良いさ。これからたっぷりと実験ができる……さぁ、来るが良い」


 ブネが舌を出す。

 俺は唇を合わせようとした。

 だが、からかうようにギリギリ届かない所で舌をくねらせる。


「……っく」


「ほら、頑張れ? もう少しだぞ?」


 俺は力の為だと恥ずかしさを捨て、舌先を伸ばした。

 すると、ブネがその舌先に自分の舌を絡める。


「⁉」

 ――脳が痺れるような衝撃が走った。


 一気にブネの舌が入ってくる。

 冷たい……全身の毛が逆立つ!

 次の瞬間、大波が押し寄せるように、今まで感じたことのない程の快感が俺を呑み込んだ。


「あ……が……ごがぁ……⁉⁉」


 声にならない!


 何だこれは!


 星が流れていく。

 幾千の星、無数の銀河が見える!


 身体の感覚が消えた。

 自分と世界の境界線が無い。

 全て世界に溶け出したような感覚……。


 ――バシュンッ!


 凄まじい音と共に実体の感覚が戻った。


「お、俺は……」


 ブネは居ない。

 両手を見ると、紋様が浮かび上がっている。


「これが、ブネとの憑魔なのか……」

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― 新着の感想 ―
[一言] クトゥルフやん!
[良い点] なんだろうこの奪われちゃった感!
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