45話 強者2人
敗者復活戦は、1回戦で敗れた3名によるバトルロイヤルだ。
演武台にはガロス、フィリア、そしてザイン。
ルール説明で言及されていた安全障壁が、敗者復活戦出場者である3名に付与されているという旨の説明が審判役のアイザックから告知されている。
決定打を受けて障壁が作動した時点で当該選手は失格、最後まで残った1人が準決勝へ進出できるというルールだ。
「おいドラゴ、ザインの『機械仕掛けの豪腕』ってあんなんだったっけ?」
隣に座るフェンの疑問は俺が抱いたものと同じだった。
マギクス・アルムの4本の腕の先には1回戦で見せた3本指が付いたアームではなくドラゴンの頭を模した銃口が装着されている。
「それでは、只今より敗者復活戦を執り行う。3名とも構え。始めっ!」
試合開始の合図と同時に、ザインの声が会場に響き渡る。
「いくぜぇぇぇぇぇっ!!!!!『機械仕掛けの豪腕』、竜頭拡散砲モード!!!!」
ザインの声にあっけにとられるガロスとフィリア。
ズギュゥゥゥゥゥゥウウウウン!!!!!
けたたましいチャージ音と共にマギクス・アルムの4本の腕の内、2本の竜頭に魔力の光が集まっていく。
「フィ、フィリア!あれを止めるんだ!!」
「わ、分かった!」
ガロスとフィリアがチャージを止めようとするが、残った2本の腕から放たれる魔力砲がけん制する。
「くそ、近づけねぇ」
「まずいよ!」
アーレウス寮の二人が手をこまねいているうちに、ザインのチャージが終わったようだ。
「もう遅いぜ!喰らえ、『竜魔砲撃』!!!!」
GI・GA・GA・GA・GA・GYAOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
チャージされて高密度に凝縮された魔力の奔流が、まるで本物のドラゴンブレスのように2つの竜頭から放たれる。
「ちょ、やばっ!演武台障壁起動!」
「すっげぇぇぇぇぇっ!!!!」
「こ、こいつは……」
「な、な、なに……?」
「これは流石に……。やりすぎでは?」
竜頭から放たれた極太レーザーのような魔力砲は、圧倒的な面制圧力をもってガロスとフィリアを飲み込んでいく。
審判のアイザックは客席や他の演武台への被害を防ぐために障壁を起動し、フェンは興奮の叫びを上げ、ミレイとリオレスに至っては驚愕を通り越して呆れの域だ。
シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ…………
光が収まると安全障壁もろとも吹き飛ばされたガロスとフィリアが目を回して倒れている。
「しょ、勝者ザイン・ペブロック!!」
「よっしゃあ! あがるぜぇぇぇっー!!」
ガゴンッ!!ゴンッ!!
ザインの勝鬨の叫びと共に魔力砲を放っていた2つの竜頭パーツが演武台の上に転がった。
「あ、やっぱり耐久が足りなかったか。急造だったしな」
どうやら、魔力砲の出力に耐えきれなかったようだ。
「ま、勝てたからよしとするっす!どうせ次の試合では竜頭拡散砲ではどうにもならなそうな予感がするし」
そう呟くザインの視線の先には、観客席に座るアリスタ・リ・エ・クレアードがいた。
----ザイン視点----
さて、やれるだけのことはやったぞ。こっからは出たとこ勝負っすね。
「個人戦準決勝1年生の部、第1試合。アリスタ・リ・エ・クレアード対ザイン・ペブロック。両者入場!!」
おっ、選手入場のアナウンスだ。
「よーし!やるぞ!」
声に出して気合を注入!
うおぉぉ!!すげー歓声だ!やっぱり準決勝ともなると注目度も違うっすね!
演武台も中央のでかいのだし、敗者復活戦でギャンブルした甲斐があるってもんだ。
中央演武台は40メドル四方、学年別の演武台の倍以上の広さ!
ここに立てるのは準決勝からの4人だけで、しかも俺は1回戦で負けて這い上がってきた身っすからね。
「勝ったら準決勝でドラゴっちと当たるかも」なんて言ってたけど、まさか本当に準決勝まで来れるとは。
ま、敗者復活だから対戦相手は変わっちまったけど。
演武台へ上がると正面には、メーティス寮の第1席。
アリスタ・リ・エ・クレアード。
近くで見るとやっぱりかわいいっすね~。いやいや、集中、集中。
さて、俺の取柄は人並み以上の魔法力と魔力量、それを生かすための魔道具でどこまでいけるか。
1回戦で負けて分かった俺の弱点は、ずばり魔法!
物理攻撃はマギクス・アルムの装甲や自動迎撃システムがある程度対応してくれるけど、魔法への対策が不十分だった。
今回の装備がアリスタ相手にどこまで太刀打ちできるかが、今後の試金石ってところっすかね。
「あら。2回戦で見なかった顔ね」
「敗者復活からっすよ。文句あるっすか?」
「どうせ負けるのだから、いちいち敗者復活戦なんてしなくてもいいのに」
うわ、めちゃくちゃ煽ってくるじゃないっすか。いいっすね、燃えてきた。
「やってみないと分からないっすよ」
「第1試合。アリスタ・リ・エ・クレアード対ザイン・ペブロック。双方構え」
竜頭は、まだ2つ残っているがこれの使いどころを間違わないようにしないと。
「始めっ!」
「起動! 『機械仕掛けの豪腕』『魔法反射装甲』!」
背中のバックパックから4本の腕。1対は豪腕、もう1対は竜頭。
さらに4本の腕、肩と胸、さらには脚装具を覆う白い六角形の板で構成された『魔法反射装甲』。
仕組みは単純、魔法の向きと速度を変換する魔法で跳ね返す。
「さて、そのおもちゃで私とどこまで遊べるのかしら?」
アリスタが指を鳴らすと、青白い炎の波が正面から押し寄せてくる。
うおっ!2回戦でウトを完封したやつっすね。耐えてくれよっ!!
炎が魔法反射装甲に触れた瞬間、一気に魔力が持っていかれる。
「ぐっ!」
なんて高密度の魔法なんすかっ!?
魔法は反射できたっすけど、消費魔力が尋常じゃない。
「へぇ~、私の魔法を跳ね返すなんて思ったより面白いわね。その、おもちゃ!」
跳ね返したはずの魔法がアリスタに届く前に霧散しているのを見ると、魔法のコントロールを完全に掌握されているっすね。
「さて、じゃあ今度の炎はどうかしら?『原初の煌』」
超短縮詠唱から放たれたのは、白く輝く炎。
これは、無理かも!
「『魔法反射天蓋』!そして、チャージ!!!!」
魔法反射装甲が装備から分離してドーム状のシールドとなって俺を囲う。
10秒でいいっ!頼むっ!
魔法の反射には成功するが、アリスタの圧倒的な魔力量が生み出す白炎は反射した魔法すら悉く焼き尽くして迫りくる。
その魔力量は流石に反則だろっ!くそっ、もう、やるしかないっ!
「いっけぇー!!!!『竜魔砲撃』!!!!!!」
GI・GA・GA・GA・GA・GYAOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
発射と共に魔力バッテリーが過負荷に耐えきれずに爆発!
ぐっ!
魔力の奔流が魔法反射天蓋、炎すらも貫いてアリスタへ迫る。
「生意気ね。『冥焔幽殲』」
アリスタの掌にあるのは冥き青を湛えるこぶし大の焔。
なっ?!俺の竜魔砲撃が、焼かれているっすか?
アリスタの冥焔幽殲に触れた竜魔砲撃がすべて燃やし尽くされた。
ガシャ、ガシャンッ!!
打つ手なしっす。
竜頭が落ち、機械仕掛けの豪腕も魔力バッテリーが吹っ飛んで機能を停止。
魔法反射装甲に至ってはアリスタの炎魔法と自らが放った竜魔砲撃で壊滅。
「参りました~」
「そこまで! 勝者、アリスタ・リ・エ・クレアード!」
ドサッ!
つ、疲れた。
尻もちをつくように座り込む俺に全く構うことなくアリスタは演武台を後にする。
くそっ、悔しいっす。理論は良かった、竜頭も魔力反射装甲も、想定した動作だった。ただ、アリスタの魔力量が反則なんすよぉ、はぁ。
ってことは次の課題が見えたっす。ずばり、バッテリー容量か。あの魔力量に対抗できるほど高密度に圧縮した魔力!それを溜めることができ、尚且つ放出の負荷に耐えうる魔力バッテリーか。
……よ~し!アイディアが沸いてきた!
----ドラゴ視点----
「あ~、ザイン負けちまったなぁ。結構いい線行くかと思ったけどアリスタってやっぱり化けもんだよな~。でも、あの装備めちゃくちゃかっこいいよな!」
「確かに、敗者復活戦とアリスタ戦のドラゴンの頭は良かったな!『機械仕掛けの豪腕』はかなり伸びしろがありそうだ」
ザインはまだ、ありあわせのパーツや材料であのレベルの装備を開発しているからな。刻印やパーツを自作できるようになったら、学院で一番厄介な奴になっているかもしれない。
「じゃあ、行ってくる」
フェンとの会話を終え、俺は観客席から演武台へと向かう。
中央演武台は補修作業中。急がずとも多少時間に余裕はある。
さて、準決勝の第2試合だ。
作業が終わった中央の演武台に上がる。
1回戦、2回戦と違い観客たちの視線がこの演武台へ集中している為、物理的な圧力を生んでいるかのように錯覚するほどだ。
ま、あいつもそんなもんで緊張するような玉じゃないだろう。
赤い髪を一つに束ねたシャーリーが正面から歩いてくるのを観察する。
「やっと勝負できるわね!」
「なんでそんなに俺と勝負したいんだよ?」
「強い奴に勝って、私が最強だって証明する為よ」
随分と自信があるみたいだな。
「第2試合。ドラゴ・グリント対シャーリー・ロマ・グレゴール。双方構え」
刀を抜く。さて、苦労して仕上げたのにメルル戦では活躍の場がなかったからな。
「先に言っておくわ」
「なんだ?」
「勝つのは私よ!」
「始めっ!」
GAAAAAAAAAA!!!!!
獅轟。
開幕からいきなりか。
轟音が生む空気の壁が正面から叩きつけられるが、身体強化で耐える。
「おらぁっ!!!」
距離を一気に詰め、上段蹴りを繰り出すシャーリー。
その両足は既に部分獣化を終えていて、金色の毛に覆われたふくらはぎが跳ねるように床を蹴り、演武台に罅を入れる。
「おっと」
身体強化のレベルを上方修正し回避。部分獣化による身体能力の向上が俺の見立てよりいいみたいだ。
赤い影がすばやく俺の死角へと移動し次の攻撃を繰り出す。
「うそっ?!これを防ぐの?」
シャーリーが完全な死角から繰り出した貫手。鋭く伸びた爪が刀の腹とぶつかって、ガキンッ、と硬い音を響かせた。
「死角からくると分かっていれば対処は簡単だぞ」
そう、いくら早くても攻撃がくる方向が分かれば対処はできる。ま、そうなるように誘導するのも技術だしな。
よしよし、獣人族の爪と正面からぶつかっても刀身はびくともしないな。師匠に習った耐久強化の刻印はうまく機能しているみたいだ。
そのまま刀を振りぬくと、シャーリーが床を蹴って後退する。
「くっ、なんて馬鹿力!」
「いや、お前さんに言われたくはないぞ」
距離をとったシャーリーを観察しながら、髪の色は赤いのに部分獣化した場所の毛並みは金色なんだな、などと栓無き事を考える。
「決勝戦まで取っておくつもりだったけど、しょうがないわね」
そう言ってシャーリーが、息を吸う。
GAAAAAA!!!
さっきより短い咆哮。だが、込められた魔力量が段違いだ。
さすがに身体強化だけで受けたら痛いか?
「はっ!!」
刀に魔力を纏わせて獅轟を斬る。
「想定内よ!」
部分獣化は脚だけじゃないのかよ!?
両腕、両脚の部分獣化とさらに身体強化魔法?!
シャーリーの動きがさらに早く、そして攻撃はさらに鋭く強くなる。
キンッ、キンッ!!!
「まだまだぁっ!」
シャーリーのラッシュをすべて刀で弾く。
「おらぁっ!!!」
ちっ、緩急をつけたフェイントと強引な体当たりでリズムを崩しに来ているな。
部分獣化している部分が燃えるような赤い毛並みへと変化していく。
さらに強くなってきたか?
だが、部分獣化が進むにつれて呼吸も乱れてきている。
そろそろ終わらせたほうが良さそうだな。
ガギンッ!!!
俺は身体強化のレベルをさらに上げ、シャーリーの攻撃を大きく弾くと一気に距離を詰める。
「終わりだな」
「は?うぐっ!!」
俺はシャーリーの鳩尾に試合を決める一撃を入れた。
手加減はしたが結構強めに入った一撃でシャーリーは意識を手放し、そのまま演武台へと倒れこんだ。
「そこまで!」
アイザックの声が響く。
「シャーリー・ロマ・グレゴール、戦闘続行不能。勝者、ドラゴ・グリント」
読んでくださってありがとうございます。
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