災難5
「見ての通りだ。
わしは綺麗好きだから毎日掃除をするからな。 今更、そんなものは残ってはおらんよ。」
「そうか…」
残念だが、仕方がない。
アレクシスの身体の一部なんて、俺達だって持ってないんだから。
「……いきなり押しかけてすまなかったな。
あ、これは土産だ。」
俺は、買ってきた酒をバーバラに差し出した。
「えっ?もらっていいのかい?
コンパスは作れないのに…」
「あぁ。構わない。
良かったら飲んでくれよ。」
「ありがとうよ。役に立てずにすまなかったな。
……それにしてもこれからが大変だな。コンパスがなければフクロウを探すことなんて出来んだろう。」
「いや、アレクシスの行き先ならわかってるんだ。
イザベラって魔女のところだ。」
「なんでそんなことがわかるんだ?」
俺は、フクロウじいさんのところでのいきさつを話した。
「なるほど、そういうわけだったか。
だったら、イザベラの家に行けば良いじゃないか。」
バーバラはいとも簡単にそんなことを言う。
「残念ながら俺達はイザベラの家を知らない。
でも、アレクシスの居所はコンパスが教えてくれるからそれでなんとかなると思ってた。
なのに、そのコンパスをなくしてしまって…それで困ってるんだ。」
「なんだ、そういうことか。イザベラの家なら知っておるぞ。」
「えっ!?ほ、本当なのか?」
それは思いがけない言葉だった。
ユリウスも思わず身を乗り出した。
「以前にも言わなかったか?
イザベラという者は酒を造っておってな。
わしもたまに買ってるんだが、その酒がいまひとつうまくないんだ。」
そうだ…そういえば、以前、バーバラと酒を酌み交わした時に、そんな話を聞いたことがあった。
「頼む!イザベラの家を教えてくれ!」
「あぁ、かまわんよ。」
俺は早速地図を広げた。
「今いるのが、だいたいこのあたりだ。
町はここだ。」
「なるほど…だとしたら……
イザベラの家はだいたいこのあたりだ。」
バーバラは地図の一点を指差した。
「このあたりは山の連なった場所なんだが、山と山の間にけっこう大きな泉があってな。
その泉がみつかれば、イザベラの家もすぐに見える。」
「やっぱり方角は間違ってなかったんだな。
それに、そこだとここからそう遠くはない。」
「あぁ、険しい山道だが、人間の足でも一週間もあれば着くんじゃないか?」
「ありがとう、バーバラ!
本当に助かったよ!」
俺は嬉しくてバーバラを抱きしめたいような気分だった。
「お安い御用だ。
……今夜はもう遅い。
またうちに泊まっていけば良い。」
「ありがとう、そうさせてもらうよ。」
今回ばかりはもうだめかと思ったが、バーバラのおかげで、問題は解決に近付いた。
あとはイザベラの家に行って、アレクシスを譲ってもらうだけだ。
ずいぶん長くかかったが、きっと今度こそはうまくいく。
そんな期待にも似た予感があった。
その晩は、アランやユリウスも加わって、ひさしぶりにとても楽しい気分で酒を飲むことが出来た。
ユリウスも珍しく機嫌が良い。




