災難2
「また山かぁ…」
イザベラの家まではまだずいぶん遠いのか、コンパスが光ることはない。
でも、やっぱりイザベラの家にいることは間違いないらしく、針が指す方向は一定だ。
今はまだ遠くとも、俺達とアレクシスの距離が広まらないとわかっているのはやはり心強いことだ。
今までは平坦な道だったが、今日からはまた山道だ。
山を迂回して行くことも出来るには出来るが、それだとだいぶ遠回りになる。
だから、俺達は山を進んで行くことにした。
「あんたも山育ちなんだろ?
なのに山が嫌いなのか?」
「そういうわけじゃない…わ。
山は嫌いじゃないけど、歩くのに骨が折れるからちょっと…ね。」
「そうか?
ずっと山ん中で住んでたら、このくらいなんともないんじゃないか?」
「え?そ、そりゃあまぁそうだけど…平地と比べたら、ほら、やっぱり違うから…」
考えてみれば、確かにアランは息を切らしたことがない。
長年山で暮らしてると、山道もなんともなくなるものなんだろうか?
俺はお宝を探しにいろんな山にも行っては来たが、生まれたのは町中だから、やはりアランのようには歩けない。
嘘がバレないように気を付けないと…
「こことあとひとつの山を越えたら、その後は平坦な道に出そうだな。」
「そうだな。あと少しの辛抱だ。頑張ろう!」
俺達はペースを早め、強行軍で進んで行った。
その甲斐あって、けっこう険しい山道も思ったよりも早く進むことが出来た。
どうにか山をひとつ越え、俺達は、ちょうど二つ目の山の頂上近くに差し掛かっていた。
「それにしても良い眺めだなぁ…」
季節柄もあるのか、それともこのあたりの特有のものなのか、赤や黄色に色付いた葉がとても美しかった。
高いところが苦手なアランは、あまり下を見ようとはしない。
それとは逆に、ユリウスはけっこう平気なようで、 切り立った斜面ギリギリのところに立って、あたりを眺めていた。
奴も自然の美しさ…みたいなものは好きみたいだ。
「ユリウス、山をひとつ越えたけど、アレクシスにはまだ近付いた様子はないか?」
ユリウスはコンパスを取りだし、蓋を押し開けた。
「残念だが、アレクシスは…」
「あ!あんなとこに白いフクロウがいるぞ!」
俺はカラフルな葉の間に白いものをみつけ、声を上げた。
それがアレクシスではないことはわかっていながらも、つい、いつものくせで白いフクロウを見ると反応してしまう。
「なにっ!?」
その時だった…
ユリウスが身体をひねって俺の指差した方を見たその時、奴の手からコンパスが離れ、山の斜面をころころと転がって行ったんだ。




