惑わしの森8
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「だから、俺が言っただろうが!
先に松明を作るべきだって!」
「アレクシスがどんな動きをするかなんてわかるはずがなかろう。
それに、今更、そんなことを言ってどうなる!?」
森に入って三日目、とうとうランプの油がなくなった。
それに、水ももうほとんど底を尽き、それなのに、まだ水場はひとつも見つかっていない。
本当にまずい状況だ。
喧嘩をしていてもどうにもならない。
俺達は手探りでそこらの枯れ枝を集め、それを松明代わりにすることにした。
ところが、そんなにわか松明じゃ、ほんの少し進んだだけで火が消える。
これじゃあ、どうにもならない。
俺達はもうそれ以上進むことを諦め、焚き火をしながら、この先どうするかを話し合うことにした。
出来る限りの枯れ枝を集めたが、どうせこんなものはすぐに燃え尽きてしまう。
なんとも心細い話だ。
「こうなったんじゃ、一旦、森を出た方が良いんじゃないか?」
「森を出るだと?
アレクシスはどうするつもりだ!」
「……いいか?もうランプの油も水もないんだぞ。
そんな状態で、これからどうやって、アレクシスを探すって言うんだ?」
「しかし、この森の近くに町はない。
何日も歩いて町まで油を買いに行って、その間にアレクシスが遠くに行ってしまったらどうするんだ!」
「おまえ…本当にわからないやつだなぁ!
そりゃあ、その間にアレクシスには先に行かれるかもしれない。
だけど、ここには水もないんだぞ!
水がないってことは生きられないってことだ!
死んでしまったら、アレクシスを探すことだって出来ないんだぞ!!」
話してる間にもどんどん頭に血が上っていくのを感じた。
本当にとんでもないわからず屋だ。
俺一人で森の外に出られるなら、一人で出て行きたい気分だったが、残念なことに、俺にはもうどっちが森の入り口だったのかさえまったくわからない。
何日も暗い森の中を彷徨ったんだ。
わかるはずがない。
だから、奴がその気になってくれないとどうにもならないんだ。
奴は、黙りこくっている。
心の底では、俺の言うことが正しいってこともわかってるのかもしれない。
だけど、俺の言う通りにはしたくない…きっと、そんなところだろう。
本当に困った状況だ。




