魔術師
そいつはあまりにも奇天烈だった。その意味が、浸潤する。
吸血鬼に血を吸われて法悦を得る吸血中毒者、現実を闊歩する死体、恋する屍体愛好者、獣化の兆候をその身に刻んだ変質者、その中にあってさえ、彼は異質だった。黒一色の服装に、金と銀の刺繍は生物的な印象を与え、きわめつけはサテンのマント、それはこれ以上ないほどに、彼の存在を、魔術師としての彼の存在を印象づけていた。
そいつが、目の前に止まり言葉を発する。
「制約と誓約に従い。私は、この世界の成り立ちと君の為すべき事を示そう。魔女を捜したまえ、そいつが扉であり鍵だ。それがどうやって現れるのか、それがどうやって存在するか、そんな事は私の知った事ではない、ただ、君の魔女を捜したまえ、では、頁をめくろうではないか、さぁ、君の、君だけの物語を始めよう」その瞳は、深遠なる狂気の色に懲り固まっていた。
そいつは唄うように歩く、その存在そのものが唄となって世界に響く「奇異、奇妙、奇天烈、かつ奇想天外、その体現者、それこそが魔術士、世界は優しいと勘違いするほどには残酷だ。そうして私は悦楽の夢を見る」
男は唄い続ける、いや、その存在が唄う文字列となって滲み出る。
「叶わぬ夢を追い続け、叶ったその瞬間に望みを無くす、絶望せよ、絶望せよ、徹底的に絶望せよ、そこに真実はある、そこにこそ真実はある。そこにしか真実は無い」




