魔女喰らい・魔女狂い
「言語術式砲塔、それが世界を変えた号砲の名前だ。たったひとつの魔術師の才能、それしか持たぬ一人の魔術師の才能、なぜここに居るかは問わぬ。なぜここに在るかは問わぬ。望みを叶える鍵はお前の願望、その扉こそが魔女だ、私は敗残者、望みを次代に繋ぐために、誓約にもとづき扉を開こう、魔女を見つけるための願望器」うらぶれた路地にぼろぼろのフードをまとった者が言う。
「さぁ、私の手を取れ、新たなる物語」
「そこまでよ、『魔女喰らい』」
「お前こそ、だ。『魔女狂い』」
「自身の願望器を亡くしたのなら、手を出さず、口を出さず、沈黙を貫け、『魔女喰らい』」
「お前こそ、もはや自身の遺志に引きずられるだけの屍体の分際で手を出すな『魔女狂い』」
そうして、現れた二人目もやはり、いかれていた。けぶるような熱気の中、黒い皮の異装で全を固め、あちこちからぶら下がる鎖のじゃらじゃら、じゃらじゃらとした音が耳障りだ。
「「ならば、いつものように結末を始めよう、既に書かれてしまった物語を、未だ変革されない物語を」」
「「ならば、始めよう。ならば始めよう、己の意志を貫き通す為の戦いを!!」」
「「さぁ、構えたまえ、用意したまえ、その自身の心の在りようを準備したまえ、死にたくなければ」」
「告げよう。この世界に記命された我が名を”絶望から始まる織りなす道”」
「では、我も告げねばなるまい。この世界に記命された我が名を、止まることを知らぬ、それが我、”全人願望”だ、そしてこれが、これこそが”全人願望”だ!!」
そうして放たれたのは、欲望の光、その光の中に居座るのは、おどろおどろしい斑模様の蛙、その異様に巨大な口が人間の言葉をしゃべる。
「また、無理を通す気か、我が愛しい娘」
「It's Right(その通り)、Are You Ready(準備は良いか)? Big Mouth(大口)」
「ああ、いつでもだ、では、選べ、何を我に差し出すか、全ての望みには対価が必要だ、さぁ、選べ、敵の血肉、自身の血肉、差し出されることごとくを喰らって汝が望みを果たそう、我が愛しい娘よ」
「代償は敵の流す血、だが、その前に、いつものように我が肉の痛みを差し出そう、未だ肉を持つ故の苦痛を差し出そう」
そう言って彼女は 自身の指を喰いちぎり、それをじゃらじゃらとしゃらしゃらと鳴り続ける鎖で補填し、皮のベルトでそれを縛り付ける。ああ、だから彼女はがらんどうなのだ、レザーのスキンで覆われた半身と、その傷口のようなファスナーはまさしく彼女自身の傷口なのだ。




