読まれる世界(ミス・リード)
「ようこそ、神の文字列の支配するこの世界へ、私はこの世界を訪れる者の水先案内人、ミス・リードだ」そいつは、その真っ赤な唇から吐き捨てるようにして言葉を紡いだ。
呆然としている間にも、そいつの言葉は続く。
「そう、ミス・リードだ。正しいことを見つける為の瞳を差し出した。ミス・リードだ。では、ここに象徴を、この世界に在り続け、君の求めるものをさがすための記命録に象徴を」その両の瞳を隠した眼帯の下で、そこだけ真っ赤な唇から紫煙を吐き出しそいつは言った。言うと同時、一冊の真っ黒な本を何もない空中から取り出すと、その真っ白な頁に僕の左手を挟み込む。
「さぁ、さぁ、儀式は終わり、これで君の自由は拘束される。さぁ、さぁ、魔女を捜せ、君の君の為だけの魔女を、君の、君の願望を叶えるためだけの魔女を、正しき事を聞き分ける耳さえつぶした。ミス・リードの名に於いて誓約はなされ制約は成された。さぁ、さぁ、この腐れた物語の主人公。君の歩いた後にこの世界の物語は削られ、君の物語がそれらにとって変わる。さぁさぁ、魔女を捜せ、それだけが唯一、君に与えられた選択」
言うと彼女はそのねじくれた爪の生えた指を差し出し、肩にそれを喰い込ませて、唄うように言う。
「始まりは、一冊の本。そこからあふれかえった文字列を並べ替えて、並べ替えて、混ぜこぜにして、ごちゃ混ぜにして、冷蔵庫で冷やして、レンジでチンして、沸騰させて、お鍋で暖めて、それで、できたのがこの世界、さぁ、さぁ、魔女を捜せ!!!」
言葉とともにその扉は閉じられ、Bomb! と可愛らしい音を立てて消失する。




