放課後 〜食堂の先には〜
放課後、マリナは三人の女生徒たちと一緒に、食堂の方へ向かっていた。
目的地は食堂ではない。そのさらに先にあるという、学生街だ。
一緒にいる同級生は、アリス、ケイト、ナタリー。昼休みからずっとアレクセイの話で盛り上がっていた彼女たちは、放課後になるなり、
「先輩のこと、もっと教えて!」
とマリナを誘ったのだった。
食堂を右手に見ながら石畳の通路を進む。
通路の右側には、背の低い植栽が続き、その向こう側は食堂のテラス席だ。今はもう、テーブルや椅子が片付けられ、窓が閉じられている。清掃員が掃除をしていた。
通路を進んでいると、
「見えてきたわ」
ナタリーが前を指差した。
つられてマリナも前を見る。
空に向かって伸びる煙突と黒い車体。
「え、あれって……」
「鉄道よ」
先に行ったアリスが車掌と話し、その横でケイトが手招きをしている。マリナはナタリーと一緒に足を速めた。
客車に乗り込んだマリナは、ひそかに驚いていた。
(まさか、乙女ゲームの世界で汽車に乗るなんて……)
客車といっても側面は開放され、簡易的な屋根が取り付けられているだけだ。
機関車、客車、貨車の短い編成で、前世の高速鉄道とは比べものにならないが、馬車よりは少し速いようだ。
シュッシュッというリズミカルな排気音、石炭が燃えるツンとする臭いが、風にのって流れてくる。
乗客はマリナたち四人だけだ。
「全然、人がいないね」
マリナが言うと、
「まだ実験中で、あまり乗る人いないんですって。でも、せっかくだし乗ってみたいじゃない」
ナタリーが教えてくれた。
新しもの好きな女子は、どこの世界にもいるようだ。
そんな他愛ないやり取りをしているうちに、汽車は目的地に到着した。
プラットフォームがあるだけの、小さな駅に降り立ち、車掌に礼を言って別れる。
汽車はすぐに発車し、小さくなっていった。この先には製氷工場や農場があり、毎日この列車で、食堂へ氷や食材を運んでいるそうだ。
「さて、行きますか」
駅前は円形の広場になっていて、中央には時計塔が建てられていた。広場にはベンチが並ぶ。屋台も出ており、その前では、客と店主が楽しそうに何かを話している。時計塔の周りでは、待ち合わせだろうか、何人かの生徒が時間を気にしていた。
「ここが……」
「学生街よ」
ナタリーが笑った。
お読みくださり、ありがとうございます。
本日20時に続きの2話を投稿する予定です。
引き続きよろしくお願いします。




