36. スキルとギフト
(?)
キョロキョロと辺りを見回すリオンに、アルフは首をかしげる。
『爺様?』
どうしたのだろう、と思いつつ、リオンの目の前に文字を浮かべる。
「え、あ、ああ。……ちびすけ、お前喋ってないよなぁ?」
『当然』
何をいまさら、と思いながらもアルフは答える。
しかし、ふと思う。
そう訊ねるということは、リオンにはなにかが聞こえたということだ。
ミルドとセセリアも、どうしたのかとリオンを見る。
「いやなぁ、今、誰かが爺様って言ったように聞こえたんだが……」
「僕は何も聞いてないけど?」
「あたしも聞いてな~い」
「俺も聞いてないな」
「俺もです」
はて、と顎に手を当てて首を傾げるリオンに、アルフ以外が聞いていないと声をあげる。
それをきいて、リオンはますます不思議そうな顔をする。
(ん……?)
しかしアルフは、リオンの言葉を訊いて考え込む。
リオンと同じように、顎に手を当てて首を傾げる。
「アルフ?」
アルフの様子に気付いて、マリウスが声をかける。
難しい顔をしたまま、アルフは板を取り出して文字を綴る。
『爺様が現れたときに、爺様、と頭の中で言った』
それを読んだ全員が、首を傾げる。
「――あ、図書館で覚えた術。念話、だっけ。あれ使ったとか?」
ふと思いついてマリウスが言ったが、アルフは首を横に振って否定した。
そして、ミルドも否定する。
「あのときに動いた魔力はなかったよ。だから術じゃない」
「そうですか……」
「……じゃあ、理由はどうあれ、あれはやっぱりちびすけの声ってことでいいんだな」
「まあ、今までの話をきいた限り、そうだろうね」
「てことは……ちびすけを調べるべきだな」
確か……と呟きながら、リオンは亜空間倉庫のリストを呼び出し目的のものを探す。
「あった。これだこれ」
リオンは取り出したカードを手に、アルフを座らせ、自分もその前に腰を下ろす。
「これはギルドカードにも使われてる術の、簡易版が込められたカードだ。この部分に血液を認識させると、その血液の持ち主の情報が表示される」
それをきいて、アルフは一切の躊躇いも見せずに指先に傷をつけ、カードに血を擦り付けた。
カードは数回光をはしらせ、やがて静かになった。
興味を引かれて、全員が頭を突きつけてカードを覗き込んだ。
アルフレッド・ウィルト・エクス・シグサイ・アートライド(10)
状態 健康
スキル
剣術 8 槍術 11 魔術 14 弓術 6 格闘 9 錬金 10 調合 9
EX
魂の書 蛇姫の加護 伝心
「ほーう」
「あららー……」
「うーん……」
「………………」
「………………」
表示された内容を見て、思い思いの声をあげる。
この世界には、スキルというものがある。
大抵のスキルは特別なものでもなんでもなく、努力しだいでは誰にでも入手可能なものだ。
尤も、スキルを覚えたからといって、何かしらの技が使えるようになるとか、そう言った類いの話ではない。
スキルとは、いわば熟練度のようなものだ。
一定の経験を積めばスキルを覚える。これが1。繰り返していけば2に上がり、熟練度が上がったということだ。
しかも、この熟練度。例えば剣術なら、ひたすら素振りを続けていけばいずれは上がる、というわけではない。
熟練度を上げるためには、相応の技量が求められる。
そして一般的な冒険者は、得意分野が5を越える程度だ。
つまり、表示されたアルフのスキルは、色々とおかしい。
リオンは流石俺の孫と喜んでいるし、ミルドとセセリアは流石シーヴの孫と感心しているし、マリウスとガードは流石アートライドの直系と呆れているので、誰も言葉にはしなかったが。
それ以上にとんでもないものがそのあとに続いていたので、10才でこの数値だという現実を、自分が受け入れやすい理由を引き合いに出して誤魔化した、とも言えるが。
スキルの次の項目。EX――エクストラスキルは、別名を恩恵と言う。
通常では手に入らない特殊なスキルのことだ。
例をあげると、毎日神に祈りを捧げ、神のための奉仕活動を行っていると、比較的簡単にその神の加護が得られる。奉仕活動の内容は、神によって違ってくるが。
「何だこれ。初めて見るギフトだな」
リオンも幾つかのギフトを持っている。だからアルフがギフトを持っていてもそこまで驚きはしないが、見たことのないギフトに興味を引かれた。
ポンポンと、ギフト名の上を二回続けて叩く。
『魂の書』
受け継がれし魂の証。その軌跡。
『蛇姫の加護』
蛇系の魔物から襲われなくなる。攻撃をすると解除される。下級の魔物なら従えることもできる。
『伝心』
任意の相手、もしくは不特定多数に声を届けることができる。魔術ではないので魔力消費無し。
「魂の証……?」
「いや、まあそれも気になるが、というか全部気になるが、取りあえず原因はこの伝心のギフトだな」
逸れそうになった所を、リオンが修正する。
周りの反応をよそに、アルフは口元がひきつらないようにするので精一杯だった。
(魂の書ってギフト扱いなんだ。 まあ、他の人には見えないんだから大丈夫だろ。それより伝心でうっかり心の声が漏れないようきをつけないとな)




