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リインカネーション  作者: 岐塔
学院生編
39/64

37. 蛇姫の加護



「伝心、か。色々確認しておきたいな。使用可能な距離、は今は無理だから、とりあえず他の条件を検証するか」


リオンの言葉に、アルフは少し考えて、意識のみをマリウスに向けた。


[マリウス、聞こえる?]

「え?あ、うん。聞こえる」


突然のことにマリウスは驚いたが、すぐに返事をする。

どうやら話しかけたい相手を見ていなくても通じるようだ。

次に、ミルドとセセリアの二人を対象とする。


[爺様の仲間の方々ですね。孫のアルフレッドです。アルフとお呼びください]

「は~い、あたしはセセリア・ソーリアで~す」

「僕はミルド・ソーリア。リアの旦那さんだよ」


二人はアルフに応えて名乗る。他の者に聞こえている様子はない。

明確に届ける相手を意識すると、その相手以外には伝わらないようだ。


(さて、次は難しいな。誰も意識せず、周りに意思を流す。そもそも言葉なんて誰かに伝えるためのものだし、こうして考えてることも自分に対するものだし。――ああ、そうだ)


[爺様。ウィンガード殿下と、俺の友人のマリウスです]

「おう。はじめまして二人とも」

「……お噂はかねがね」

「は、はじめまして!」


違和感のない会話の流れに、上手く行った事を確信する。

誰にあてるとも意識せずにただ思考を垂れ流すだけ、というのは難しいので、アルフは別のやり方を試した。最初に範囲を指定してみたのだ。

そしてそれは、成功した。



[爺様、伝心のスキルの概要、大体把握しました]

「そうか。じゃあ次は、蛇姫の加護だな」

「内容は読めばすぐわかるけど~」

「疑問は、どうやって取得したか、だね」


セセリアとミルドの言葉に、アルフたち三人は顔を見合わせる。

蛇姫、という言葉自体に覚えはないが、思い当たることはある。


「ん?どうしたちびすけ」


三人の様子に気付いたリオンが首を傾げるのに、アルフは黙って研究資料を渡した。

リオンが読み終わるのを見計らって、アルフは言う。


[生き残った被検体が、一体だけいた]

「……何?」


アルフの言葉にリオンは辺りを見回し、不自然な布の小山を見つけた。

……アルフの取り出した布では彼女の身体を全て覆うには小さく、布の下から蛇体が覗いている。


「これは……ラミアか」

[ラミア?」

「魔物領にいる魔物よ~。男がいない種族でぇ、ヒトの男を捕まえて子供を作ったら、その男を食べちゃうんだって~」

「けど……これを見る限り、ラミアは実験の結果生まれた種、ということになるよね」

「てことは――こういう研究所は他にもあって、そこから逃げ出したりしたのが外で増えて、今のラミアになった……」

「ラミアの他にもいるかもしれませんね」

「あ~、ちょっとヒトっぽいのとか、やたらいろんな種類の生き物が混ざった感じがするのとか、怪しいわ~」


「しかしちびすけ。生き残りがいたってことは、こいつは生きてたんだな?」

[うん。けど、殺してくれって頼まれた。だからこれで]


女の胸を貫いた短剣を、リオンに見せる。

かつて自分がアルフに渡したものだから、それがどういうものかリオンにはすぐにわかった。

それが本当に、女の望みだったことも。


「そうか。じゃあ、この加護はお前への感謝の印か」


リオンの言葉に、アルフはふと思った。

この加護が彼女から自分への感謝ならば、これは自分に限ったことではないのではないか、と。


[マリウス、声に出さないで俺に話しかけてみて]

「え?えっと……」


急に言われて戸惑いながらも、マリウスは何とか言われたとおりにやってみる。


[えーと……何言えばいいんだ?あ、アルフとお祖父さんそっくりだな]

[やっぱり……]

「なんだよアルフ。どうしたんだ?」

[爺様、ガードとマリウスのこともカードで調べてください]

「ん?いいけど……」


リオンは新たに二枚のカードを取り出した。

そしてアルフがしたように、各々の血をカードに認証させる。



   ウィンガード・ヴァン・カーフィ・ミレイド・エルフール・アランシア・シグサイ(11)


   状態 健康


   スキル

   剣術 6 魔術 7 弓術 4 格闘 5




   マリウス・レインフォール(9)


   状態 健康


   スキル

   剣術 5 魔術 3 弓術 3 格闘 4



アルフと同じように、名前、状態、スキルと表示され、その下。



   EX

   蛇姫の加護 伝心



二人にも、蛇姫の加護と伝心があった。

やっぱり、とアルフは思った。

今までそんなこと出来なかったのだから、伝心のギフトを得たのはここでだ。

それならば、三人の取った行動に大した違いがない以上、他の二人もギフトを得ていておかしくない。


「何だ、二人にもあるのか」

[……三人で、刺したから]

「アルフレッド一人に押し付けるわけが無いだろう」

「あんなこと、一人でさせられません」


お友達ねぇ、と微笑ましいものを見るような顔のセセリアにガードは一瞬ムッとした顔をしたが、なにも言わなかった。


「蛇姫の加護は当然ラミアだとして、多分伝心の方もラミアだな」

[そうなの?]

「魔物は、言葉以外の何かで意思の疎通をしてるらしいんだよな。鳴き声なんかでもない。きっと連中は、このギフトを生まれつき持ってるんだろうな。で、お前が喋れないのを見てくれたのかもな。二人のぶんはおまけとか、サービス?」


潜入任務で重宝されるな、と笑ったあと、不意にリオンは真面目な顔をした。


「ギフトのことは、ここだけの秘密だ。特に伝心。まあ、陛下とかエトランドとかマーリアなら構わない。悪いが第一王子とかウィルとかレインフォールの家族には言わんでもらいたい」

「……わかった」

「は、はい」


利用される可能性を危惧しての言葉に、二人は頷く。

アルフも、それは仕方がないと受け入れた。

三人が理由を理解した上で頷いたのを確認して、リオンはよしと笑みを浮かべた。



「さて、それじゃ帰るとするか」



リオンの言葉にアルフたちは、どうやって?と首をかしげた。


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