30. 捜索と探索
最初の階層は額に一本角を生やした狼型の魔物だった。
次の階層は角の生えた大蛇。
その次は角の生えた獅子。
どの階層も一種類の魔物しか出てこなかった。
最初こそあれこれと試していたガードだったが、今では確実に首を狙って早目に仕留めるようにしている。
今はガードとマリウスが先を行き、アルフは一歩下がったところを付いていっている。
前を行く二人の背中を眺めながら、アルフは魔力を下へと伸ばす。
いくつかの階層を突き抜けて、下へ下へと伸びていく魔力。
その魔力が、不意に何かに弾かれた。
(……?)
足を止めずに、チラリと足元に視線を向ける。
階層は、あと三つ。そしてそのさらに下に、アルフの魔力を弾く何かがある。
(……これが、ここに跳ばされた元凶、かな?)
何があってもいいように魔力の消費を抑えようと、アルフは探査のために使っていた魔力を打ち切った。
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「それで、転移先はわかったのか?」
急遽学院に呼び出されたエトランドが、会議室で状況の説明を受けてマースに問う。
ガードの事が一番問題になるのだが、国王は簡単に時間を割けない。
よって、この件に対処する責任者はエトランドに決まった。
「今のところ、魔物領のどこか、としか判っておりません」
言いながら、マースは懐から紙の束を取り出す。
「本棚の上部に取り付けられた突起物を解析した結果、発見された魔術陣です」
「……ここが転移先か」
受け取った紙束をめくり、書き写された陣を読み解き、その部分を指でなぞる。
「はい。ただ、座標、というもので表しているようで、正確な位置はまだ」
「魔物領だというのは何故?」
「遺跡から発見された古い文献に、遺跡の場所を記したものが複数発見されています。同じように座標で記されているので、それと照らし合わせると転移先もやはり魔物領と思われます」
「……だが、おおよその場所はわかるな」
紙束をさらにめくり、マースの集めた資料に目を通す。
「地図は」
「あちらに」
テーブルの上に広げられた大きな地図のところへ、エトランドを促す。
未だ全容の知れない魔物領の地図は、ほとんど白地図のようなものだ。
リオンのような冒険者や、五年ごとに行われる軍の演習をかねた遠征で調べた情報がポツポツと記載されているだけだ。
それとて、あまり正確な情報ではない。
地図にある場所から、一日二日ずれていることは珍しくない。
「……父上なら、ご存知だろうか」
考え込んだエトランドは、不意にポツリとこぼす。
エトランドは、リオンの持っている情報は国所有のものより詳細だと思っている。
それはまあ、概ね間違いではない。
ただ、普段リオンが入り込んでいるのは、他の冒険者や国の人間が入るところよりも奥地になるので、国境近くのことは他の冒険者たちに任せて、国に情報を上げていない。
奥地の情報も、実力の足りないものが不用意に入り込まないようにするため公開していない。
少ない仲間内で共有しているだけだ。
よし、と決めて、エトランドは立ち上がった。
「エトランド様?どちらへ」
「ギルドへ行く」
リオンがどこにいるかはわからない。ギルドを通して連絡を取るしかないのだ。
「でしたら私が」
「いや、私が直接ギルド長と話す」
「分かりました」
「お前はここで待機していろ」
「はい」
少々の不満はあったが、マースはエトランドの言うことに否を唱えることはせず頷いた。
会議室を出ていくエトランドの背中を見送って、マースは少しでも多くの情報を集めようと、また文献をひっくり返し始めた。
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アルフはダッと飛び出して、ガードとマリウスが取りこぼした魔物の首をはねる。
ここはもう、アルフが探知した最後の階層だ。
この次には、あの謎の空間がある。
ここまで来て、ガードとマリウスの二人では厳しくなってきた。
出てくる魔物たちは上の階層とあまり違いはないとアルフは判断するが、簡単には勝てなくなった理由はその思考力にあるとアルフは考える。
それまでは単純に飛び掛かってきていたが、今はガード達の様子をうかがい、フェイントを混ぜたりもするようになった。
「あ…ありがとう、アルフ」
後ろに回り込まれていたことに気付いていなかったマリウスが、ドサリと魔物の落ちる音で気付き、青ざめた顔で礼を言う。
ガードが最後の一体を倒し、ふうと息をつく。
「だんだんキツくなってきたな」
実力的には二人ともまだ余裕のはずだが、命のやり取りをするのは初めてだ。
他国では命を狙われる事も多い王族であるガードだが、この国の王族にはそんな危険はない。
マリウスも、勿論命の危機など知らない。
アルフはヴィレクの訓練の際に、森で狩りをしたことがある。
「さて、一休みしてから次の階層へ行くか」
ガードの言葉に、アルフは周囲に結界を張り、亜空間倉庫から食料を取り出した。
「……お前の亜空間倉庫はどれだけ用意周到なんだ」
『お爺様に、用心を怠るなと言われてるから』
呆れたようなガードの言葉に返しながら、亜空間が開けない特殊な場所だったらヤバかったな、とアルフは思った。




