23. 友達追加
「アルフ!」
馬車を降りて、保護者席へ向かう両親と、式の準備のために会場へ向かうガルドと別れたアルフがクラス分けを見にホールへいくと、先に来ていたマリウスがアルフを見つけて手を振った。
まだ人は少なく、アルフもそれに応えてマリウスの元へ歩く。
「俺達同じクラスだぜ」
そう言って指を指した先に、確かにアルフとマリウスの名前が同じクラス内に書かれていた。
クラスの名前は一組だった。
『誰か知ってるヒト、いる?』
アルフは亜空間から取り出したボードに、指をはしらせた。
白い盤面に、黒い文字が浮かぶ。
「ああ――って、何だそれ?」
『魔力に反応して色を変えるよう、特殊加工した板。父上に作ってもらった』
「へぇー、魔力を指先から出して字を書くんだ。消すのはどうやるんだ?」
マリウスの質問に、アルフは盤面をカツンと弾いた。
すると一瞬全面が黒く塗りつぶされ、次には元通り白い面が現れた。
「おおお、すっげー。あとさ、さっきそれ亜空間から取り出した?亜空間倉庫の術使えるのか?」
『この指輪に、術が掛けられてる。あとは魔力を流すだけ』
本当は術を使ったのだが、使えないことにすると決めてあるので用意していた指輪を見せる。
右手の中指に嵌められた指輪には、あまり大きくはないが魔石がついている。
初級魔術ではないが上級魔術でもない亜空間倉庫の術なら、十分術を込められる大きさだ。
「へーえ、便利だなー」
マリウスは普通に喋ればいいが、アルフは字を書いてそれをマリウスに読ませるという手順を踏まなければならない。
どうしても、話のテンポはおかしなことになる。
それに苛立つ様子を少しも見せないマリウスに、アルフは嬉しくなった。
「あ、そうだ。知ってる奴だったな。そうだなー、こいつと、こいつはちょっと親しいかな。後はまあ、大体顔と名前を知ってるくらいで、話した事はないな」
同じクラスの内二人の名前を指し、教えてくれる。
「有名どころだから知ってるんだけどな。こいつらとかは知らないから、俺と同じような知名度の低い貴族か、奨学生だろうな」
その後アルフとマリウスは雑談で時間を潰し、入学式の会場へ向かった。
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式典というものは、退屈なものである。
その式典に意味を見出せるものならともかく、七歳になったばかり、もしくはまだ六歳の子供たちには、退屈なものでしかない。
クラスごとに分かれた中で、マリウスと隣り合って座っていたアルフは、小さくあくびをかみ殺した。
それをチラリと見たマリウスは、アルフを軽く肘で小突く。
見られていたことに気づいたアルフは、恥ずかしそうに小さく笑いかけた。
そうこうしているうちに式は終わり、生徒たちは自分の教室へ向かうべく立ち上がる。
そんな中でアルフとマリウスは、椅子に座ったまま混雑がおさまるのを待った。
人が少なくなったところで席を立つと、後ろの方の席にいる二人が目についた。
「?」
「ああ、さっき話した二人だな。丁度いいから紹介するよ」
二人の様子に首を傾げたアルフに、マリウスが気付いて促した。
「ティル」
「ん?よう、マリウス。久し振りだな」
「ああ、久し振り。そっちは相変わらずみたいだな」
呼び掛けた相手とは別の、もう一人に目を向けて苦笑する。
先程から、アルフがティルと呼んだ少年は、眠りこけている少年を起こそうと奮闘しているのだ。
「ああ、まったく、いつものことながらな」
「アルフ、こいつはティレル・ハンデスト。ティル、こっちはアルフレッド・アートライド」
「おう、よろしくな。ティルでいいぜ」
『よろしく、ティル。アルフと呼んでくれ』
家名のところは聞き逃したのか気にしなかったのか、平然と手をさしのべる。
肩に付かないくらいで切り揃えられた栗色の髪に、暖かみのあるオレンジの瞳。細身だが弱々しさは感じない。
アルフは板を見せながら、その手を握り返した。
「なんだ、喋れないのか?魔術の授業はどうするんだ?」
『最低限の術は、無詠唱で使えるよう訓練してる。騎士課程に進むから、それで問題ないはず』
「へえ、騎士課程か、マリウスと同じだな。俺は薬師を目指すんだ」
「ティルは大きな商会の三男だ。まあ、大きいって言ってもアルフの家と取引できるようなとこじゃないけどな」
「うるさいなマリウス。――で、いい加減起きてるくせに寝たふりしてるこいつが、ノール・ファランドール」
「うぐっ」
ティルが首に腕を回して締め上げると、うめき声を上げてティルの腕をタップする。
柔らかそうな白い癖毛に色の濃い目の肌と、この国では珍しい色合いをしている。うっすらと開いた瞳は海の青。
頃合いを見てティルが腕をはなすと、喉をさすりながらうらめしげにティルを見る。
「いくら寝たふりをしようと、おぶっていってはやらんぞ。置いていくから、次はちゃんと起きろよ」
「え~?ケチ~」
「ケチじゃない。ほら、話は聞いてたんだろうが。アルフに挨拶しろよ」
「う~、えっと、アルフだっけ。まあ、よろしく」
『よろしく』
まだ眠そうなノールと、握手をする。
「君たち、もうそろそろ教室へ行った方がいいんじゃないかい?」
そこへ掛けられる声。
覚えのある声にアルフがそちらへ顔を向けると、やはりガルドだった。
周囲を見回してみると、確かに新入生はもうアルフたちしか残っておらず、片付けのために在校生が動き出していた。
「あ、すみません、すぐに出ます」
慌てたマリウスがノールの腕をつかみ、無理やり立たせる。
「では、失礼します」
相手が誰かわかってはいないようだが、何となく察しているのか深々と頭を下げて、ティルと一緒にノールを引きずって行く。
アルフと目があったガルドは、友達ができてよかったね、と笑いかけてくれたので、笑顔で頭を下げ、マリウスたちの後を追った。




