第158話 守るための覚悟③
アルテンシアの皆を真央に託し、来た道を戻る。
「・--・---・・・」
「■■■■■■!!」
「あぁっ、もう何言ってるかわかんねえよ!」
だが、複数の世界が合体したのだ。
数千万という数の人が街道にのみ居るはずもなく、他の場所に転送されていた異世界人が襲いくる。
「戦士装備!」
「・-・・-・-・-・・・!?」
「◇◇◇◇◇◇!?」
咄嗟に赤き鎧兜を顕現し、迎撃する。
流石に足止めにしかならないが、今はそれでいいはずだ。
「真央のようにはいかないな……」
(アレを基準にしたら終わりでしょ)
(人類の敵じゃなかったことが奇跡なレベルだよ)
「人の彼女に対して酷くない君たち?」
そう、古代からの二人に小言を放っていたときだった。
「フッ」
「っと!?」
音も、風のうねりも無かった。
だが直感で危機を察知した俺は、迫り来る刀と首の間に盾を入れ、死を弾き飛ばす。
「良き反応だ。戦場をくぐってきただけはあるか」
「貴方は……真央の御先祖様!?」
てっきり、俺を狙う異世界人だと思っていたため動揺してしまう。
気高き白い髪を持つ侍の名は、藤原宿禰城山獅狼道真。
ヒノワ皇国第一皇子シゲシゲ直属の転生者であり、アルテンシアでも指折りの猛者だ。
だからこそ、理解ができない。
「どうして剣を向けるんですか。敵はフォタァザでしょう!」
「確かに、そうなのだろうな。神殺しを成し得れば、この動乱も収まるだろう」
「なら!」
「然し」
一族を束ねてきた頭領の眼光に威圧され、思わず、すくんでしまう。
「我が宿願は子孫の繁栄。拙は此の眼で、羅刹にも勝る子孫を目にした。故に」
「……っ」
「試させてもらう。御前が我が子孫と釣り合うか!」
御先祖が踏み出すと同時に、既に距離は全く無くなっていた。
すぐさま再び防御の体勢をとる。だが二度も通じるはずもなく、盾越しに正拳を喰らい吹き飛ばされてしまう。
左腕に走ったのは痺れではなく、槍で穿たれたかのような激痛。道を極めた武人は、防具越しに筋肉や骨を破壊してくるのか。
(どうしてアルテンシアの人同士で……!)
(マオを呼び戻してくる。こんな暇はないはず)
「手を出すな!」
だが関係ない。ここで引いたら、俺は彼女に顔向けできない。
「これは俺一人で越えなきゃいけないんだ。真央を守るための覚悟を、御先祖様に示さなきゃいけない!」
「よくぞ言った! さあ拙を乗り越えてみせろ、中嶋尋ッ!!」
だからこそ、今こそ発現す時なのだろう。
「最強装備ッッ!!」
玉虫色に輝く、救世の装備を!
「更に輝きを増したか、其の意気や善し!」
「真央に誇れない自分が嫌なだけだ!」
「なれば我が全てを以て、御前の首を落とすまで!!」
「越えてみせる。越えなきゃ、男が廃る!!」
極限の集中を以て、無限自在に延びる虹の剣を振るう。
だが、届かない。否、ヒノワ皇国のときは殆ど手も足も出なかったのだ。やっと届いたと思わなければ気合で負ける。
「ゲガギバベベ!」
「uparyaaa!!」
互いに目にも留まらぬ速さで打ち合い、教皇国の地を、建物を斬り伏せているのだ。
当然、待ち構えていた異世界人も加勢してくる。
「邪魔だッ!」
「失せろッ!!」
「ブプゥウウ!?」
そんなものは関係ない。
いまは、眼前の強者を倒すのみ!
「ッ!?」
体感にして数分。限界まで空気を張り詰め合い、ようやく侍に隙ができた。
「終わりだッ!!」
そして俺は虹を数弁這わせ。
自らの覚悟を示すべく、首を取った。
「やった……ッ!?」
だがシロウの剣は鈍りを見せない。
「良き反応だ。然し一拍遅れたな!」
「くっ、でも!」
すぐに復活した首を再び取る。
それでも、奴は倒れない。
「甘い!」
「くたばれ!」
「まだ逝かぬ!」
「倒れろ!」
「滅びるものか!」
「終われぇええッ!」
「見えたッ!」
今度は俺の首が飛びかけた。
すんでの所で極彩色の剣身を入れて防げたが、このまま打ち合ってもキリがない。
「……能力。そうだ、御先祖も使っているはずなんだ!!」
見落としていた。本当の能力と最強の装備を手に入れて、自分が優勢だと勘違いして慢心していた。
観察しろ。相手の能力は何だ?
超回復? 違う、肉片が無くなろうが再生していた。
不死? これも違う、ハルマやニグアスが能力無しで再現していた。
驚異的な身体能力、そして肉体の不死性。
「本体は、別に居る?」
結論が出た。いま打ち合っているシロウの肉体は人形のようなもの。
操っている本体を倒さねば、勝ち筋はない!
「迷いが生じたか、なれば!!」
目線を横に逸らしてしまったのがいけなかった。
俺は完全に的外れな読みをしてしまったのだ。
眼を見れば一目瞭然だった。思念の類は無いし、なにより己の肉体を熟知し、偽りなき自信を持っているじゃないか!
躱せない。慢心を捨てられない。
「ぐ、ぅううああっ!」
「首は繋がったか。然し、左腕は貰った」
「ッ……!」
痛恨のミスをしたが左腕だけで済んだ。まだ首も、右腕も残っている。
再生を待っている暇はない。出血が多くなれば勝ち筋も細くなってゆく。
ならばこそ。
俺は深く息を吐き。
「何の真似だ?」
最強の装備を、解除した。
「……驕りを捨てられないのなら。装備も能力も、捨てればいい」
「安物の鈍と白地で、拙を断つと?」
馴染みの道具屋で買っている普段着に、プロキア兵に馴染み深い鉄剣。
当然、防御力も攻撃力も俺の装備には極めて劣る。加えて、侍の剣技を全く見切れなくなるだろう。
一撃貰えば即死。だからこそ。
「これが、お前を倒すための最適解だ!」
極限を数段越えた覚悟を以て、古強者を斬り伏せる!




