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生産者と生産者

最近雨多いですね。

 光は霧散した。

 あらゆる悪を倒す剣の輝きは消え、ロベルトは刃を地面に突き立てた。顔には明らかに疲労の色が出ていた。


「……神器、魔崩しの水晶。……いやはや、これが無ければ危なかったよ。流石は元勇者と言っておくべきか」


 だが、ロベルトの渾身の一撃はかすり傷の一つもつけられてはいなかった。ハイドラは手に水晶の玉を浮かべ、全く余裕の表情で立っていた。


「ならば、物理で殴り倒すまで!」


 リリアが鬼の力でもって強襲する。体からは黄金の光が発せられており、頭のほうでその光は鬼の角のような形をとっていた。

 突然の攻撃であったが、ハイドラはそれに反応した。薄い膜のような物が彼の前に出現し、殴りかかるリリアの攻撃から身を守る。その薄い膜に当たった衝撃か、リリアを中心に砂嵐が吹き荒れた。

 シヅキはものすごい威力だと感じていた。あんなものをまともに喰らえば、体が千切れるかもしれないとも思った。

 しかし、全く通じていない。


「無駄だな。鬼の力は知り尽くしている。対処はたやすい」


 そう言うとハイドラは手でリリアを掃った。すると、リリアの体は宙に浮き後ろの廃れた建物に投げ飛ばされた。

 そして、今度は先ほどとは別の赤色の水晶を取り出すと小さな声でつぶやいた。


「神器、魔人の吐息。さあ鬼の子よ、わきまえるといい。お前の力など人間とさほど変わらないことをな」


 赤い水晶はギラギラと光り出すとバチバチ音を鳴らし始めた。ハイドラはその水晶をリリアめがけて投げた。するとそれは野球ボールのように放物線を描いて飛んでいくとリリアの上空で炸裂した。爆音と爆風にリリアは成す術なく吹き飛ばされた。

 そして、今度はロベルトのほうを向くと杖上の物を出現させた。


「お前にはこれが一番だろう。神器、自戒の杖」


 ハイドラがロベルトに向けて杖を振った。しかし、何も起こらない。


「……なんだ? 何も起こらない……」


「いや、ロベルトはもう廃人だ。こいつのトラウマを、さらに強い形で増幅させたからな」


 ロベルトは先ほどと全く同じ体制で座り込んでいた。一ミリも動かず、ただぼんやりとしていた。心ここにあらずと言った風貌をしていた。


「……案外、脆いものだな。こいつのように強い人間ほど、心がガラスで出来ているということかな?」


 ハイドラはシヅキの前に立った。すでに主力の二人を下し、もう抵抗できないと判断したのだろう。


 ……だから、油断したのだ。


 ~~


 火薬の弾ける乾いた音が鳴り響いた。シヅキが奥の手を使ったのだ。銃弾はハイドラの肩にしっかりと直撃し、血液が飛び散った。


「……なに?」


 シヅキは唇を噛みながらロベルトに感謝した。ロベルトはある事実を、シヅキの知りたかったことを教えてくれた。リリアもまたただやられたのではなく、彼にヒントを残した。


「……お前はロベルトとリリアに勝った。だから俺にも勝てると思ったのだろうが、当てが外れたな」


 目の前の一見最強の男には弱点がある。

 ロベルトとの戦いの時、恐らくハイドラが持つ最高位の防御神器を悦郎は見た。それはいかなる魔法攻撃も通用しないという恐ろしいものだろう。

 しかし、リリアの攻撃をかわすときに使った様子がないところから見て物理攻撃には無力なのだとシヅキは推測した。

 そして、リリアの攻撃の時は鬼の子がどんな攻撃を知っていて対処をしていた。ロベルトの時も同様である。

 つまり、全く未知の武器には対策を講じることが出来ないとシヅキは予測した。


「……それは、お前の世界の武器か?」


「さてどうかな。まあ、それを教えてしまったらお前に勝てないんで勘弁してくれ」


 シヅキはこの勝負の肝となるのはいかに自分の手の内を隠し通せるかということだと思った。現代兵器が強いわけではない。それがどんなものかを理解されたらもう勝てない。相手が知らないからこそ、付け入るスキがある。そして相手はこの世界の神みたいな存在、この世界に関しては知らないことはないだろう。

 だからこそ、この戦いはシヅキでなければ、異世界から来た生産者でなければ勝てないのだろう。


「……ただの愚かなろくでなしだと思ってなめていたが、詰めが甘かったか」


 ハイドラは大きく跳躍してシヅキと距離を取った。先ほどの傷はもう塞がっているようであった。


「ハイドラ、お前が俺のどこが気に入らないかは知らない。俺はお前の言う通りロリコンのろくでなし野郎だし物作り位しか取り柄がない。でもな、お前はそんな俺を知らないだろう? お前は自分の分からない奴にはとことん弱い。だから、お前が俺を理解する前にぶっ倒す!」


 ハイドラの強さとは膨大な知識とそれから導かれる適切な神器運用から来ている。だからシヅキは今回、一切の異世界武器を使う気はなかった。相手の知識の及ばない未知こそが人文の最大の武器なのだから。


「さあ異世界の生産者、お前の神話を壊させてもらう」


 シヅキは両手に銃を構えた。そして自分を中心に大量の大砲と地雷原を瞬時に用意した。


「……確かに、お前が今何をしたのか全く分からんな」


 ハイドラは息をのんだ。神器やこの世界の法則に至るまでそれらの理解は自分が一番だと自負していたが、初めて未知の異文化と遭遇したのだ。

 彼にとってはどんな強靭な戦士の大軍よりも恐ろしい光景であった。


「……ならば、全てを理解するまで。お前の知るものに追いつく。お前の知識を追い抜く!」


 生産者と生産者、作るものの違う二人は武器を構えた。


このラスボス戦のテーマは初見殺しです。普通は敵が仕掛けてくるであろうことを味方サイドがやるという形になります。

ちなみに初見殺しでないと核兵器でも勝てないほどの強敵です。というか、ハイドラはチート過ぎて作中のどんな人でも勝てないレベルです。大体この人を除外して強さランキングを作者は考えています。その場合はやっぱりロベルトが一番強いです。

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