表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第10章 調べる鳴人、疑われる彼女、ラーメンの原価

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/91

51 証拠が、ないのである

 いつも通りの、活気あるお店。

 いつも通りの、仕事ぶり。

 働いている時は、余計な事を考えなくて済む。

 だって、それどころじゃない忙しさだから。

 でも、ふと思い出す。思い出しちゃう。


 鳴人、随分と余裕が出てきたんだな。

 作者権限で、もう少し苛めてやろうか…

 外はかなり寒いにも係わらず、お客は相変わらず行列を作って並んでいる。

 狭い来々軒の店内は、常に満員の状態だ。

 ほとんど待たせる事もなくラーメンを出し続けているせいもあり、回転率も良い。

 親父と俺の、威勢の良い掛け声。

 れんげちゃんの、気配りの行き届いた接客。

 アツアツのラーメンの湯気。

 お客の食欲と体温。

 その全てが、来々軒を熱く加熱している。

 店内はかなり熱いにも係わらず、俺は相変わらず疑念と疑問を募らせていた。


 証拠が、ないのである。


 精肉業者は業界でもかなりの老舗で、信用度も高い。

 チャーシューはそこの社長が半ば趣味で作った、採算度外視の超高級品だった。

 それを仕入れる代わりに、常に優先的に最高の牛骨や鳥ガラを卸して貰える事になっていた。

 親父やれんげちゃんには内緒で、伝票を持って直接社長と掛け合ったのだから、間違えようもない。

 最初は不審な顔をしていた社長だが、れんげちゃんの話をすると途端に愛好を崩した。

 名前も知らないラーメン屋と取引なんか出来るかと思っていたのだが、れんげちゃん、社長のこだわりを見抜いていて、チャーシューを採算の取れる値段で仕入れて構わないと、取引を持ちかけたのだった。

 そういうことならと、付き合いを始めてみると。

 見る間に大手ラーメン屋並みの仕入れ量になって、社長自身もびっくりしているという。

 俺の事を親父の息子かなんかと勘違いしたようで、自分の所ではもっと取引を増やしても良いし、期待しているという。

 なにより、自分のこだわりで作ったチャーシューを定期的に仕入れて貰っているのが大きいようだ。

 おかげで、古参の従業員や家族から冷やかされていたのが、今では大いに見返してやれたと喜んでいた。

 来々軒の繁盛ぶりは、自分のこだわったチャーシューに寄る所が大きいのだと思っているようだ。

 本業が忙しくて、ラーメンを食べに行けない事を残念がっており、御挨拶がてら、是非店のほうに寄らせて欲しいと、固く握手されてしまった。


 調味スープの方も、似たようなものだった。

 高級な醤油を製造している会社はいくつかあるようだが、来々軒の取引先のカタログを、あえて大学の方に送って貰った。俺の自宅と来々軒はほとんど同じ住所なんで、先方に不審がられないようにという対策だ。

 そこは決して大手の会社ではなく、むしろ自家製造的な雰囲気の、紀州に本社のある会社だったが、仕入れ値は伝票のそれと同じだった。

 他の醤油会社とも、値段の差異は感じられない。まっとうな仕入れ先のようだ。

 カタログの感じでは、高級料亭などに品物を卸している会社のようで、本来はラーメン屋などと付き合うような所ではないようだが、れんげちゃん、どこでこんな会社の事知ったんだろう?

 味噌も、同じ感じだった。長野にある、調べなければ分かりようもない名前の会社としか付き合っていない。

 そこの赤味噌、白味噌を二種類取り寄せて、配合して味噌ダレとしているようだ。こちらは値段の調べようがなくて、直接TELして問い合わせてみたが、仕入れ値に不審な点はなかった。むしろ、新しい顧客には敷居が高そうで、ちょっと高めの値段を提示された。れんげちゃんは、そういう意味では「上手く」やっている方だ。


 調理鍋に関しては、すぐに調べがついた。

 インターネットで製品名を検索すると、必要な情報はすぐに手に入った。

 ここの調理器メーカーは、業界でも信頼性が特に高いらしい。

 その分値段も張るので、大手メーカーにはなれないようだが。

 お客の評価も、公的な製造物評価機関の評価も、軒並み高い物だった。

 伝票の値段と照らし合わせても、定価そのままであり、不審な所はない。

 というより、製品に自信があるので、分割での購入は受け付けていないようである。

 にも係わらず、分割払いにして貰っているのは、れんげちゃんの力量なのだろうか?

 原材料。

 ただ、拘っているわけじゃないんです。

 一見さんお断りの業者と渡りをつけて、仕入れているんです。


 ならば、そことつるんで、不正に着服をしているに違いない。

 あれ?

 適正に処理されてるぞ?


 逆に、どうやって取引して貰っているんだ?

 不正を探しているはずなのに、来々軒のラーメンの旨さの秘密が、明らかに…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ