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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第18章 皇龍のラーメン、彼女の立場、麺打ちの修行 

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128 もういいわ、仕方のない人たちね

 そのままれんげちゃんは俺を引っ張って、店の中から厨房に入っていこうとする。

 おいおい、一体なんのつもりだよ。

 そりゃあマズイよ、マズイだろう。

「ちょっとれんげちゃん、どこにいく気だよ、勝手に入っちゃ怒られるよ」

 楽しげに談笑しながら店内に入ってきた家族連れが、ギョッとした顔で俺たちをみている。

 ワゴンを運んでいたウエイトレスたちも、何事かと足を止めた。

「すいませんお客様、そちらは関係者以外立ち入り禁止ですので…」

 案の定、黒服の元ホスト風のお兄さんたちが素早く近づいてきた。

 そりゃ、当たり前だよなあ。

 前に親父が銀行員相手に息巻いてみせた事があったけど、さすが親娘というべきか、血筋のなせる業というべきか。

 いや、血は繋がっていないんだったか。

 でも、ホントにマズイってば、この連中。

 身のこなし、立ち居振る舞いからすぐに判るよ、彼ら、なにか武道をやっているに違いない。声にも有無を言わせない張りがあるし、店内で接客をしていなかった事からも、こういう場合のための警備をかねているのだろうし。

 って、そんな冷静に判断している場合じゃない。犯人は俺たちになってるよ!

「す、スイマセン、すぐに引き上げますから。

 …ちょっと、れんげちゃんってば!」

「あなたたち、新入りなの?」

 と、れんげちゃん、俺の顔を見もしないで、黒服たちの顔をじっと見据える。

 瞳に宿る権威。命令する事に慣れた口調。

 今までとは別人の、彼女がいた。

 いや、違う。単に俺が彼女の事を知らないだけだ。

 元から彼女に備わっていた性格が、そのまま現れただけだ。

 それほど、そんな高圧的な態度が板についていた。

「い、いえ、あの、どちら様で…」

 彼女の急な変貌に、黒服たちも勝手が違って、戸惑っているようだ。

「チーフマネージャーの室戸(むろと)さんは、今日は非番なの? まさか、あの人まで辞めさせたわけじゃないんでしょう?」

 え? え?

 誰、それ?

 しかも黒服たち、もごもごと何か言い訳しているし。

 なんか、俺を除いて話が通っているぞ。

「宗主様にこんな対応が露顕したら、あなたたち、もうこの業界では働けなくなるのよ。もっとしっかりしないと」

「は、はあ…あの、あなた様は…」

 宗主、様?

 そういえば、店に入る前に、ちらっとそんな事を言っていたような気がする、んだけど。

 躊躇いがちにでも、聞いてみようと思ったら、黒服たちが代わりにれんげちゃんの事を聞いてくれた、ん、だけど。

 れんげちゃんは、大げさにため息をついてみせて。

 もういいわ、仕方のない人たちね、と目線と言葉だけで黒服たちを制して、そのまま俺の服の裾を引っ張って、厨房の中に入ってしまった。

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