表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第10章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1040/1042

1011.総動員

「はっ、バカが! 味方も巻き込んじまうってのによオ!」

「バカはお前じゃ! こっちこい!」

 魔王は、壁のような魔法の障壁を張り、〝紅の炎〟を防いだ。しかし、それも完全なものではなく、回り込まれて左足を焼かれる。


 それでもなんとか後方の四人と合流し、空へと飛んで逃げる。

 そこでコルニーは肝を冷やした。まるで津波のような〝紅の炎〟の勢いは止まらず、倒れていた騎士たちをも飲み込んでしまう。


「げ、元帥……! み、み、みんな……っ」

「あら、心配には及びませんわ。火の扱いには心得がありますので」

「へ……?」

 その言葉通り、騎士たちには被害が出ていなかった。〝紅の炎〟の波を被ったと言うのに、誰一人として悲鳴をあげていない。


 その事実に呆気に取られる――暇もなく、次なる危機が上空から迫ってきた。

 〝魔王〟が巨大な魔法陣を創り出し、〝生きた魔法〟を産み落としたのである。雷光とともに〝雷の怪鳥〟が現れる。


「また、あんなのが暴れたら……!」

「ふむ……。なるほど……。あのような力技でも……」

 コルニーたちが慄いている間、リリィは興味深いとでもいうかのように〝怪鳥〟を観察していた。


「元帥……? 元帥!」

「元帥元帥元帥!」

 ピアーもミリーも、もはやそれしか口にできていない。

 その様子がおかしかったのか、リリィは思わずと言ったように吹き出した。


「ふふ。大丈夫ですわよ」

 〝怪鳥〟が翼を広げて襲いかかってくる。その恐ろしい様相にコルニーもたまらず悲鳴をあげたが――それも「あ」と止まった。


 〝雷の怪鳥〟の前に、誰かが躍り出たのだ。

 そうして、抜剣。

 振り抜かれた剣の軌跡通り、〝怪鳥〟は真っ二つになり……霧散した。


「む。お見事ですわ」

「そのわりには、随分不満そうですね」

 リリィの隣に降り立ったのは、クロエ・サーベラス。エグバート王城に向かっていた彼女が、ギリギリのところで駆けつけてくれたのだ。


「そういうわけではありませんが……。先ほどの剣技、見たこともないものでしたので」

「魔法を切る剣です。〝波動術〟が一番効率的なのでしょうが、魔法でも同じことができるのではないかと思い立ちまして。お教えしましょうか?」

「――いえ。わたくしも、オリジナルを創ります」

「ふふ。リリィさん、意外とそういうところで頑固ですよね」

 竜ノ騎士団〝元帥〟と王国騎士軍〝近衛騎士総隊長補佐〟。その二人が並び立つ安心感といったらなかった。

 加えて……。


「――ふがっ?」

 妙なタイミングで、キラが起きた。


   ○   ○   ○


 五分間、眠ったからといって何が変わるわけでもなかった。

 キラの体は相変わらず傷だらけで、疲れ切ったエルトは眠りについてしまっている。

 戦場はといえば、むしろ悪化していた。

 〝魔王〟と〝四天王〟は合流し、おそらくはそのせいで騎士たちは全員倒されている。気配面で探ってみたところ、死人はないようだが、手当を急がねばならない重症人が何人もいる。

 リリィとクロエが駆けつけてくれたとはいえ、状況は逼迫しているといえた。


「リリィ……クロエ……。あの五人、頼める?」

「もちろん。というより、キラは下がってなさいな。今にもミリーたちが泣きそうですわよ」

「そうです。あとは私たちで片をつけます。増援ももう少しで到着しますので」

 反論したいところだったが、二人の言う通りだった。

 キラは立ち上がることはおろか、自力で上半身を起こすことすらままならない。コルニーとピアーに助けてもらって、ようやく姿勢を維持できる体たらく。


「じゃあ……。僕はサポートに回るよ」

「……。また無茶をする気ではありませんわよね?」

「まあ……。キツイと思ったら後退するよ。そうでもしなきゃこの状況を乗り切れないってことで……大目にみてほしい」

 怪訝そうに振り返ってくるリリィとクロエだったが、それ以上は何も言わなかった。

 キラはコルニーとピアーに声をかけて再度横になり、目を閉じた。

 そして。


「〝術式:流転〟」

 ぶっつけ本番、見よう見まね。

 全神経を集中して、エルトとブラックの技術を体現する。


「〝精霊化〟」

 〝覇術〟も〝波動術〟も〝雷の神力〟も。これまで得てきたもの全てを動員して、キラ自身が〝精霊化〟を果たした。


〈おお……。こんな感じなんだ〉

 幽体離脱を疑似体験しているような感覚だった。ふわりと自分の体から離れていくのを如実に感じる。

 とはいえ、目も耳も、手足すらない。

 気配面で視覚の役割を果たし、〝波動術〟で音を汲み取る。体を動かすのは〝雷之加護〟を得た〝雷之力〟となる。


「キラ、それは……! 心臓は大丈夫なのですか?」

〈最低限にとどめたからね。だから広範囲で活動はできないし、攻撃なんてこともできない。離れた位置で〝声〟でサポートするのが精一杯。ただ、怪我の痛みを感じない分、こっちでいるほうがむしろ楽かも〉


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=811559661&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ