表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第10章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1039/1042

1010.一縷の希望

「ああ……! 元帥の顔色……また悪く……! なんで……!」

 ピアーの言う通り、黒髪の少年キラの容体は悪くなるばかりだった。呼吸は安定しているものの、どんどんと顔から血の気が引いていく。

 それもそのはずで、〝治癒の魔法〟が全く効いていない。

 ミリーが応急手当てしなければ止血もままならないほど。痛々しい傷は、いまだに全身に残っている。


 なんで。何か手立ては。他に魔法を。

 焦りと言葉だけが、コルニーの中でループする。これほどに何もできないのかと、無力感が虚無感を呼び込み……。


「キ、キラさんは、〝治癒〟がかかりにくい体質って聞いたから……! きっと、間違ってない……から、諦めないでっ」

 ミリーの声かけで、なんとか脱力せずに済んだ。

 戦うことはもちろん、〝治癒の魔法〟も使えない彼女の方が、焦りも無力感も大きいはずなのに……それでも、現状から目を逸らさず、冷静さも失っていなかった。

 まだ十二歳。だがれっきとした女傑。

 そんな彼女に支えられては、腐ってはいられない。


「わかった。折れるとこだった……ありがと」

 コルニーはそうやって言葉にしてから、〝治癒の魔法〟をかけ直しつつ、戦場をしっかりと眼にする。


 戦況は悪くなるばかりだった。

 先ほどの恐ろしい怒声をあげた大男の元には、〝元帥代理〟リーウが盾部隊三人と共に向かった。

 〝消失の魔法〟を中心に立ち回りながら、なんとか抑え込んでいる。


 一方、〝魔王〟はもう止める手立てがない。

 魔法部隊によって三ツ頭の大蛇はなんとか対峙できた。

 盾部隊を中心として、〝煽り手〟が指示を繰り出し、集団戦で押さえ込もうとはしている。

 だが、〝魔王〟と張り合えるほどの剣士がいない。

 ユーデールとラナークとセルカークでその役割を担っていたが、耐えきれずにやられてしまった。死んではないようだが、戦線復帰は不可能。

 そのうえ――。


「ねえ……。なんか……霧が出てない……?」

「え……?」

 〝魔王〟の優勢を固めるかのように、増援が現れた。

 地面を這うような濃い霧が騎士たちを惑わし、ついで幾つもの悲鳴が聞こえる。

 さらには爆発音も轟き……煙が晴れると、あっけなくも全員が倒れていた。その代わりに立つのは、五人のエルフ。


「なんじゃ……。帰っとけと言うたろうに」

「っるせエ! 黒髪に借り返さなきゃアよオ……傷が疼いてしかたねエ!」

「同意ぃ〜……。失くなった腕の分はよぉ〜……キッチリ責任取ってもらわねぇとよぉ」

「フン……。戦闘狂は大変ね。治してもらった方が早いでしょうに。アタシは、もうよく目が見えるわよ」

「humm……」


 不意打ちとはいえ、たかだか十数秒で、〝元帥代理〟も含む三十人余りの騎士たちが無力化された。

 その事実を、コルニーは受け止めきれなかった。


「アア〜……? アア! いんじゃねエか!」

「声がでかい……。何もするでないぞ。わしの獲物じゃ……こやつには聞かねばならんことが山ほどある」

「ケッ……」

 目をかっ開く大男を制し、〝魔王〟が近づいてくる。

 あまりにも恐ろしい光景に、コルニーはぴくりとも動くことができなかった。キラを庇って喚くことも、ピアーとミリーに警告することも、頭から消える。

 一縷の希望はもちろん、絶望すら浮かばなかった。


「そう心配せんでも、取って食ったりはせん。――と、説得しとる場合ではないのう」

 そんな時。

 キラの言っていた〝五分〟がやってきた。


「全員、退避じゃ!」

「――あなたは、逃しませんわよ」

 一体、何が起きたのか。コルニーには理解できなかった。

 ただ……。空から何かが降り注いだこと。大男たちがうめきながら後退していくこと。

 そして、〝魔王〟が回避行動に移る前に、〝元帥〟リリィ・エルトリアが現れたことだけは、なんとか把握できた。


「ちぃ……!」

「おや。力勝負ですか。――望むところ」


 〝魔王〟が大剣を握り締め、振り切る。

 同じく、〝元帥〟リリィも白銀の剣を振るう――だけでなく、弾いてしまう。


 テクニックでいなすのでもなく、スピード勝負で手早く制するのでもなく。

 正々堂々、真正面から、ものの見事に。

 力勝負を制したのである。

 〝魔王〟の姿勢が、完全に崩れる。


「まずい……!」

 〝魔王〟もタダではやられない。力負けしたことで目を見開いていたが、足捌きで姿勢を立て直し、後退を試みる。

 だがそれを、リリィ・エルトリアが許さない。


「〝ルージュ・ブレス〟!」

 剣の代わりに突き出された左の掌から、〝紅の炎〟が吹き荒れる。

 目の前にあるもの全てを焼き払う勢いで。〝魔王〟だけでなく、その増援四人をも標的としていた。


「はっ、バカが! 味方も巻き込んじまうってのによオ!」

「バカはお前じゃ! こっちこい!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=811559661&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ