1012.精霊
キラは〝雷之力〟を駆使して飛び回り、〝ちびえると〟同様動き回れることを確認した。そのままコルニーたちの頭上に降り立つ。
残念ながらその表情を読み取ることはできないが、雰囲気からして呆気に取られているのがわかった。
〈三人とも。〝声〟、聞こえる?〉
「え……? へっ……! き、聞こえます……」
〈良かった。どうやら〝魔王〟たちも作戦会議中みたいだからね。この間に、リーウの治療を頼みたいんだよ〉
「は……。はい……」
〈じゃあ、頼むよ。リリィとクロエがいるから、何も気にせず治療に集中して〉
「け、けど……! 元帥は、どうすれば……だって、こんなに怪我が……!」
〈ん? ああ、まあ、大したことないから放っておいても大丈夫だよ。ただ、万が一ってこともあるだろうし、ミリーにはついててほしい。様子がおかしくなったら叩いて起こして。――さ、行動開始〉
ミリーたち三人は互いに頷き合ってから、素早く動いた。
〈で……。〝魔王〟だけど、リリィが相手した方がいいかも〉
「あら。わたくしですの? あらゆる魔法に対抗するには、クロエが適任のように思いますが……」
〈魔王には〝百門詠唱〟ってのがあってさ。百の多重詠唱を使うんだよ。〝ショート〟で封じてはみたんだけど……もうかかりが弱くなってる〉
「百の……。規格外ですわね」
〈そのうえで力技の〝古代魔法〟もあるから……。手数では付き合わない方がいいかも、ってこと。リリィの〝紅の炎〟、〝魔法周波数〟の理論でかなり火力上がったしさ〉
「なるほど」
〈で、どういうわけか〝再生の神力〟を使うんだ。仕留めるなら徹底的に焼き尽くさないといけないんだよ。……たぶん〉
「――〝再生〟っ?」
〈ね。ほんと厭になる……〉
色々と聞きたいこともあるだろうが、リリィはどこまでも理性的だった。
すぐに頭を切り替えて、〝魔王〟を警戒しながら戦略を立てる。
〈クロエ、〝四天王〟なんだけど……。ざっくり説明すると、近接主体が二人、遠距離主体が二人。処理しやすいのは、やっぱグランドかな。パワーとスピードがあるけど、基本身体強化しか使わないから、一発目から封じれば簡単。で……〉
「……? あの。〝四天王〟とはいつ交戦したのです?」
〈え? そりゃあ、〝魔王〟とまとめてだよ。なんてったって五人一緒に現れたんだからさ。まあ、正面切っての一対五ではなかったけど〉
「……はあ。それで?」
〈……? 何か言いたそうだけど、まあいいや。一番面倒なのが〝錯覚系統〟を使うシーラ。僕は〝覇術〟で常時無効化できるけど、クロエはまだ〝波動術〟が使えないから……。僕がサポートにつくよ〉
「お願いします」
〈それと、多分〝四天王〟に加えて、〝バレット・ビット〟が飛んでくると思う。〝古代兵器〟というかなんというか……ともかく、ボールみたいなやつがレーザー撃ってくるんだよ。魔王が使ってたんだけど、リリィの〝紅の炎〟には効き目が薄いだろうから、たぶクロエに回してくるはず〉
「ふむ……。王城でも似たような武器と対峙しました。そちらは〝レーザーサーベル〟……剣でしたが」
〈……! あとで詳しく聞かせて。――二人とも、準備はいいね〉
魔王陣営も、戦略を定めたようだった。
しかし、いかに〝魔王〟といえども、王都襲撃は失敗に終わったと考えているに違いない。
なにしろ、〝元帥〟と〝総隊長補佐〟がこの場に駆けつけたのだ。何か騒動が起きていた王都を離れたと言うことは、それも終息しつつあると思っていい。
となると、〝魔王〟としてはこの場での戦いに意味はない。本来であれば、最初現れた時のように、〝転移の魔法〟を使って退散すべきところ。
それができない、あるいは時間がかかるのは、間違いなく〝ショート〟の影響。
素直に歩いて帰ってくれればとも思うが……。〝魔王〟シャーロットはそんな弱腰ではない。
この戦いを制した上で、最低限の手柄を持って帰るに違いない。とりわけ、死にかけの〝元帥〟の首は取っておきたいだろう。
――とどのつまり。
完全勝利以外、キラたちには道は残されていない。
〈――クロエ! リーウが治療に入った! 〝四天王〟を引きつけて、戦場を移動してほしい!〉
「無茶を言います……!」
魔王はリリィに任せて、キラはクロエについた。
本当ならばエルトのようにピッタリそばについてフォローしたいところだが、ただでさえ死にかけな身には無理な話。
そういうわけで、戦況を上空から見渡し、かつ、互いに声が届く位置に浮遊する。
〈〝バレット・ビット〟が五機、飛来してる! 威力は高くないけど、熱で貫通してくる――から気をつけて!〉
「何秒後に仕掛けてくるでしょうかっ」
〈――およそ十秒!〉




