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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第10章

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1008.団体戦

「ぐっ……!」

「だぁっ、くそ! 足が!」

 それぞれが悲鳴をあげ――第一陣の騎士たちの動揺を誘った。上級騎士であろうと、ほんのわずかに意識が背後に持っていかれる。

 しかし魔王は、あえて反応の少ない騎士に勝負を仕掛けた。


「こっちか……ッ!」

 魔王が大剣を振りかぶり、鍔迫り合い――のち、押し切る。


 魔王と相対した騎士はぐらりと姿勢を崩し……あえて、後ろ跳びして尻餅をついた。正面きっての勝負を避け、連携を重視したのだ。

 首を刎ねるには、魔王はもう一歩踏み込まねばならない。


「ム。やるのう」

「――オオッ」

 魔王の側面にいた騎士が、その隙を突く。

 ショルダータックルで、小柄な体をぶっ飛ばそうと試みた。


 が、魔王はそれをひらりと回避。

 流れるような動きで、今度は背後にいる騎士へ切り掛かる。


「がっ……!」

 今度こそ、痛烈な一撃を見舞う。

 その騎士は、上級騎士にあがりたてであり……〝バレット・ビット〟への動揺をつかれる形で、剣も鎧ももろとも切り裂かれる。


 悲鳴と鮮血が舞う。

 死にはしない。

 だが重傷。失血死もありうる。


「構うな! 集中!」

 それでも第一陣の残りの四人は、助けに動くことはなかった。

 むしろ一切の動揺を見せなくなり、改めて魔王を取り囲む。


「――っ! タンク、散開ッ!」

 その間にも、〝バレット・ビット〟は猛威を振るう。

 第二陣の四人の騎士たちを四機が翻弄しつつ、残り一機が瀕死の騎士の元へ向かう。

 その全てに、守りが入った。


 盾部隊は十人――第二陣の四人に一人ずつつき、瀕死の騎士には二人つく。

 最前線でタメをつくるのはもちろん、戦いの最中にあっても治療部隊として機能するのが、〝応援陣形〟における盾部隊である。

 魔法の盾と俊敏な動きで〝ビット〟の攻撃を防ぎつつ、怪我人に〝治癒の魔法〟を施す。

 そうして盾部隊が第二陣の遊撃隊をフォローする——のと同時に、残りのメンバーが第一陣のサポートに入った。


「雑な集団戦と思うたが……なかなかやりよる」

 魔王の剣の腕は達人級。

 いかに上級騎士といえども、一手目で動きを見切られ、二手目で斬られる。鎧があろうが、〝身体硬化〟で防ごうが、関係ない。


「くっそ……!」

 怪我を負った騎士は、無理せず後退。

 その代わりに、控えていた盾部隊の騎士が魔王との間に割り込む。


 魔王シャーロットがムッとし――しかし、隙を晒さない。

 小柄な体で巨大な剣を構え、盾へ強烈な一撃を入れる。


 騎士は踏ん張ったものの、パワー負け。

 ふわりと体が浮き、一歩分後退する。


 そこへ、

「――そらッッッ!」

 魔王は間髪入れずに追撃をかけた。


 右足を軸に、大剣を振り回して一回転。

 そうやって残りの三人の騎士へ牽制しつつ、もう一撃、再度盾めがけて入れ込む。


 すると、今度は簡単に吹っ飛んだ。

 後退していた騎士も巻き込んで、二人一緒に戦線を離脱。


「――。〝ヤタガラス〟が破られたか」

 魔王は少しばかり空を見上げたのち、地面に大剣を突き刺した。

「〝消失の魔法〟……わしの姿が見えねば使いもせんか。となれば」

 大剣を触媒として、地面に巨大な魔法陣が描かれる。


「今は三ツ頭が限界じゃが――いでよ、〝ヤマタノオロチ〟」

 召喚されたのは、またも〝生きた魔法〟。

 全長十メートルはあろう三つの頭を持つ大蛇が、首をもたげる。

 〝炎〟と〝水〟と〝雷〟。

 頭一つ一つに属性が与えられ、それぞれ変容していた。

 燃える頭が巨大な火の粉を撒き散らし、透き通った頭が濁流を吐き、雷の頭が無限に放電を続ける。


「メイドよ。こうなっては〝消失の魔法〟は使えまい?」

「……!」

「もうこやつはわしの支配下にはない。ただ暴れる獣よ。――〝錯覚系統〟も意味がないじゃろ」

 〝生きた魔法〟の最大の利点を、魔王は熟知していた。

 〝ヤマタノオロチ〟に全ての騎士の視線が集中する間に、地面に突き刺した大剣を引き抜く。


「俺たちは魔王に集中すんぞ……!」

「うっす」

「はい」

 遊撃部隊の三人は、すぐそばで〝ヤマタノオロチ〟が暴れていようと、一瞬たりとも魔王から視線を外さない。


「よい面構えじゃ。――来い」

 一人の騎士が、先導するように仕掛ける。


 これに対し、魔王も同じようにして攻めた。

 真っ向から剣を切り結び――パワー勝負。


「ふっふ! よう耐えた!」

「ぐ、ん……ッ!」


 セルカークという名の騎士も、剣の腕に覚えがある男。

 いかにパワー負けしたといっても、やりすごす技術はある。耐えて、慣れて、受け流す。

 だが、こと魔王との鍔迫り合いでは、ほんの一瞬であろうと〝負けた〟事実が重くのしかかる。


「――そら」

 セルカークの一瞬の硬直を、魔王は見逃さなかった。

 流れるような動きで、その懐へ潜り込む。小柄な体を活かして、自らの大剣を潜ったのである。


 そうして、足払い。

 セルカークの体幹が揺れ――その隙を逃さず、魔王は首をガシッと掴んだ。


「ぐ……!」

「すまんのう。なにせ一対三……こうでもせんとサシの勝負には持ち込めん」


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