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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第10章

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1005.元帥VS魔王

「ミリー、平気か……っ?」

「うん……! キラさんを……助けなきゃ……!」

 まだ十二歳で、身体も小柄で。戦うことすら知らないミリーが、疲労で顔色を悪くしながら、なおも足を止めない。

 そんな少女が隣にいるというのに、弱音など吐いてはいられなかった。


「――見えたっ」

 先をいくリーウと騎士たちが立ち止まっている。

 彼ら彼女らの視線の先には、理解不能な戦場が広がっていた。


 何かボールのようなものがいくつも空を飛んでいた。

 まるで獲物を狩る鳥のように縦横無尽に飛び回り、黄色い光線を打ち出す。

 その標的となっているのは、〝元帥〟キラ。


 彼はその全てを回避していた。

 右足を一歩引くことで、体を少し沈めることで、頭を傾けることで――無限に続くレーザーを避けている。


 しかもその上で、〝魔王〟の猛攻をさばいている。

 というより、接近戦を待ち望んでいたかのようだった。


 パワーをいなし、レーザーを避け。それを数回繰り返したのち、タイミングを見てグッと踏み込み、鍔迫り合いに持ち込む。

 とはいえ、立ち止まっていてはレーザーの餌食になる。

 細かな足運びで位置をずらしつつ、その動きこそをフェイントとしてミスを誘う。


 その思惑に、魔王は踊らされていた。

 タイミングをずらされては斬られ、踏み込み方を間違えては斬られ、大剣の構え方の隙を突かれて血を流す。

 圧倒的な剣術の差に、魔王がたまらず後退。キラはそれをも見越していたが、レーザーに阻まれてしまう。


 そんな人間離れした戦い方に、皆が絶句していた。

 コルニーたちはもちろん、リーウも騎士たちも割って入るようなことはできない。ただただ、その様子を見守るだけ。


「ハァ……ゼェ……! くそっ……!」

 だが、キラもすでに限界が近かった。

 腕や足には焼け跡があり、他にもいくつか線のような黒い筋がある。当然〝元帥羽織〟はボロボロで、靴が脱げたのか両足とも素足だった。

 何度か膝が沈み込むこともあり、ギリギリのところで横っ飛びになってなんとか誤魔化している。

 そんなところへ。


「ヌン!」

 〝魔王〟シャーロットが、大剣を手に斬りかかる。


 地面にうつ伏せになって倒れていたキラは、草原を掴むようにして後転。

 間一髪で回避し、即座に魔王へ接近戦を仕掛ける。


「このバケモンが……! おとなしく狩られんかっ!」

 刀による一撃を、魔王は大剣で簡単に弾いた。そうやって防いだ流れで、上段から振り下ろす。


 キラはそれを見越していた。

 弾かれて流れる刀に身を任せ、くるりと回転。


 避けつつ、カウンター――を、魔王も予見していた。

 素手で、首元へ迫り来る鋭い刃を掴み取る――正しくは、五本の指で受け止めた。


「……ッ!」 

「じゃが、もう頭が回らんか。無理もない――大技を構えられんよう〝バレット・ビット〟を主軸としたんじゃ。あの〝雷〟は喰らいとうないんでなァ」

「っとに……!」


 何かしなければ。何かしなければ。何かしなければ――。

 そう思えば思うほどに、コルニーは頭の中が真っ白になっていく。

 見方を変えれば、キラが〝魔王〟を抑えている状況である。刀を掴まれたのを利用し、力で押し込もうとしている。


 そこへ割って入って、魔法でもなんでも叩き込めば良かった。

 だが。〝魔王〟が垂れ流す恐ろしい気配が、そうさせてくれない。一歩でも踏み込めば、何か仕掛けてくる……そんな嫌な空気を纏っていた。

 リーウも、三十人はいる騎士たちも、誰一人として迂闊に入り込めないでいた。

 そうしているうちに、〝バレット・ビット〟の一つがレーザーを放ち――。


「ぐ……!」

 キラの右の太ももを貫通。

 ぐらりと、その体が倒れる。

 そこへ。


「しまいじゃッ!」

 魔王の大剣が降り注いだ。

 キラはこれを腕でガードし――そこが限界。


 そのままパワー負けして、背中から叩きつけられる。

 まるで爆発でもしたかのように、地面が陥没。


「キラ様!」

「元帥!」

 リーウや騎士たちがなりふり構わず駆けつけようとしたのを、誰あろうキラが咎める。


「来ちゃ……ダメだッ!」

 一難去ってまた一難。

 魔王のパワーをなんとか受け止めたというのに。およそ二十の〝バレット・ビット〟が、キラを至近距離で包囲した。

 決着をつけようと全ての砲口が瞬く。


「ああ……っ!」

 その場にいる全員、最悪の結末を想像しながらも、見ることしかできなかった。

 おそらく〝魔王〟シャーロットも、自らの勝利を確信していただろう。

 ただ。〝元帥〟キラだけは、その瞬間まで諦めていなかった。


「――頭回ってないって? それァお互い様でしょ、魔王サマ」


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