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~新世界の英雄譚~  作者: 宇良 やすまさ
第10章

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1004.ひよっこ

  ○   ○   ○


 竜ノ騎士団〝見習い〟コルニー。つい一ヶ月ほど前、友人のピアーとともに入団したばかりの新人騎士である。

 弱冠十四歳での入団は、コルニーやその周りにとって快挙と言えた。

 なにせ、騎士学校〝中等部〟在学中の騎士団入り。

 騎士学校の最終目的を、高等部に進学することなく、一足飛びに達成したのだから……学校をあげてのお祭り騒ぎとなった。

 クラスメイトや担任教師、隣のクラスから先輩から後輩から、全く関わりのない高等部の先輩や先生まで……。試験合格を知らせるとみんなから祝福されて、コルニーはピアーと一緒に世界をとったつもりにすらなっていた。


 だが……少しずつ、現実を知っていくことになる。

 まず衝撃的だったのが、〝北の三番の伝説〟。

 試験の課題は、王都に戻ること。そのためには〝疫病問題〟をクリアする必要があったのだが、コルニーはそれどころではなかった。

 他の受験者たちとなんとか折り合いをつけ、協力関係を築き、一晩明かしたところでようやく街に着いたのだ。

 その苦労あってこその喜びだったが……ものの一時間で王都に戻った受験者がいたという。


 次なる衝撃は、〝王都武闘会〟で目の当たりにした。

 新人騎士たちも武闘会に参加する権利が与えられていた。〝ランクアップシステム〟により下級騎士からのスタートも夢ではなかった。

 しかし、コルニーもピアーも、前線に出て戦うことを想定して訓練したわけではない。なにせまだ中等部……真剣を持ったことも何度とない。

 そういうわけで参加を見送ったのだが、それが普通だと思っていた。

〝ランクアップシステム〟は魅力的ではあるものの、経験を積んだ騎士たちに敵うはずがないと思い込んでいた。

 二万を超える観客を沸かすような戦いなどできない。どうせまばらな拍手が続くばかりだと……。


 だが、違った。

 新人クラスからの参加者は二十名ほど。

 その全員が、血を流す覚悟で前のめりに戦っていた。〝がんばったで賞〟など、誰も望んでいなかった。

 とりわけ鳥肌が立ったのが、セドリックVSバックス。

 剣技と格闘術のぶつかり合いには、互いの意地が見えて……コルニーもピアーも、声をあげて応援していた。


 そして、忘れもしない新人式での顔合わせ。

 〝元帥〟リリィの演説の後、新人たちの配属先が発表され、そこで同期となる〝北部第一騎士寮〟のメンバーと挨拶することとなった。

 王都配属となった五十五人のうち、〝北部第一〟は九人。大学や冒険者の出が多く、年齢層は比較的高め。二十歳以下は三人しかいなかった。

 コルニーもピアーも、新人騎士の中でも最年少と思っていたのだが……もっと下がいた。


 それが、パン屋の娘のミリーである。

 その時はまだ誕生日を迎えていなかったということもあって、弱冠十一歳。今年はおろか、ここ十年でも最年少での合格というのだから、皆で驚いたものである。

 しかも、騎士学校に通ったことはなく、誰かに師事したこともないのだという。試験に向けて、少し手ほどきをしてもらった経験があるだけ。

 まさしく、生まれながらの騎士。各々の資質を問う〝疫病問題〟が見出した、ある種の天才と言えるだろう。

 世界は広く、自分は井の中の蛙にすぎなかったのだと……コルニーとピアーは、改めて思い知ったのである。


「ハァ……ハァ……!」

「うぅ……もっと……! 走り込みしとけば良かったぁ……!」

「ハッ、ハッ……! ピアー、無駄口は……体力減るぞ……っ」


 〝元帥〟キラが……あの物腰柔らかな黒髪の少年が、〝魔王〟を足止めしている。クロエ・サーベラスからそう聞かされれば、取るべき行動は一つだった。

 すなわち、猛ダッシュ。

 幻覚のパニックの対処に、どれだけ時間をかけていたのかはわからない。

 だが、三十分は下らないはずであり、黒髪の少年キラはそれだけの時間を〝魔王〟と戦っている。

 一分一秒が惜しく、ほぼ全速力で走り続けていた。


「センパイたち……元帥代理も……なんで、あんなに……っ」

 ピアーの疑問も最もだった。

 コルニーとピアーとミリーは、たった今門をくぐったところ。

 だというのに、リーウも騎士たちも、走る速度を落とすことなく何十メートルと先にいる。


 皆、三十分間も無為に過ごしたわけではない。幻覚が感染するという前代未聞の事態に、全身全霊で当たっていた。

 とりわけリーウは凄まじかった。

 魔法で感染者を抑制しつつ、指示を飛ばして隔離を徹底し、その上で幻覚の解除法を見出したのだ。コルニーたちはその指示に従うだけで精一杯だったというのに、一人で何役もこなし、最適解を出し続けていた。

 〝元帥代理〟に選ばれるだけはある……化け物じみた胆力だった。


 他の騎士たちも並大抵ではない。

 感染者を傷つけないように細心の注意を払い、しかしだからといって戦うことを躊躇しなかった。

 峰打ちで転ばせたり、体当たりで尻餅をつかせたりして確実に無力化していき、元感染者をそのまま放置はせずに安全な場所へ運ぶ。

 決断力も視野の広さも意志の強さも、誰もが高い水準で兼ね備えていた。

 やはり、まだまだ世界は広いのだと実感する。


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