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とっておきの交渉術を教えようーー結果の方は御覧じろ



料理長が2種類のポップコーンを乗せたカートを押して私の後ろへと続く

私が目指す場所は一つ。お父様の執務室だ


屋台をするには屋台自体を作るための費用とそこで働く人達への労働費、土地代と材料代がかかってくる

いくら材料代が安いと言っても他の費用についてはどうにもならない


私には今のところ資産がない

なので、そこはお父様に頼る他ないのだ



今回の作戦としては魔法を諦めるかわりに店を出したい。その商品はこちら!というものだ

魔法の話を出して駄目と言わせてからの屋台の話を持ってくる


有名な交渉術の一つだ

まずは大きな要求を伝える、その後本題である少し下げた要求を伝えるのだ

大きな要求は魔法を使えるようになりたい、下げた要求が屋台をやりたい、だ


この交渉術は人は相手の要求を断るごとに罪悪感を感じるという良心を利用してのテクニックだ。良い子は悪用しないようにここぞという時に使ってね


気づけばお父様の執務室の前だ



ふぅう、と大きく深呼吸。大丈夫、相手は性格の悪いクソ上司じゃなくて優しい素敵なお父様。何も臆することはない。目を閉じて気持ちを落ち着ける


こんこん、と控えめに、でもしっかりとノックする

中からお父様の返事と入室を促す声が聞こえてきた



いざ、行かん!!戦場へ!!



ーーーーーー



「どうかしたのかい、ルーナ」


執務室に入ると正面にある仕事机に向かったお父様が書類から顔を上げて私に視線を向ける


「お父さまに、お話があってきました」


「話?」


お父様が持っていたペンを置く


「お父さま、わたし、魔法がつかえるようになりたいです」


真っ直ぐにお父様の顔を見つめながらゆっくり、ハッキリと話す。まずは大きい要求からだ


「ルーナ、それは前にも言っただろう?お前には無理だ。諦めなさい」


一ヶ月前と同じようにお父様も返してくる。優しく、でも反論は許さない口調だ

ここまでは想定通り


「…じゃあ、あきらめる代わりに、わたしのおねがいをきいてくれませんか?」


少し間を開けてから、おずおずと話す

大切なのは伝え方と相手の態度を見極めること


「お願い?」


すんなり諦めると口にしたことから代わりに引き合いに出されたお願いという言葉に反応を示すお父様。お父様としても予想はつかないだろう


「はい。お願いをきいてくれるのなら、今は魔法についてはあきらめます」


お父様に頼るのは諦めるって意味だけどね。魔鉱石さえ手に入ったらこっそりと魔法を練習していくつもりですから!

これは魔法のある世界に生まれた以上抑えることは出来ない欲求なのだよ


「…いいだろう、内容にもよるが出来る範囲でルーナの望みを叶えよう」


よっし!いい流れだ!


「わたし、屋台をしてみたいんです!」


「……屋台?」


お父様は声を大にして言った私の言葉に首を傾げる。寝耳に水というか、考えてもなかっただろうから当然と言えば当然の反応だけど

ポップコーンの試作をしているのは両親には内緒にしていた私の努力はこのお父様の反応で報われたね


「はい!そうです!私、街にある屋台をしてみたいんです!」


もう一度、私の要求を突きつける

顔は可愛いスマイルを浮かべておく


「ルーナ、お店というのは、そう簡単には出来ないんだよ。屋台を用意してあげれても、何を売るのかなんて決められないだろう?今更新しくお店をしても売れないからね」


思いつきで話してると思っているようで、お父様は立ち上がると私の元へと歩み寄ってきた。すぐそばまで来てしゃがみこみ、私の顔を覗き込みながら諭すように屋台をするにあたっての問題をあげていく


お父様の言いたいことはわかる


問題の多くはお金で解決できるけど、最も大切なのは“何を売るのか”だ

屋台という代物が目新しくない以上、新しく何かをするにしても今までにないものにしないと利益になんてならない

せめて、初期費用くらいは回収できないと財政に響かないといっても見過ごせない出費となってしまう


お父様からすれば可愛い娘ではあるけれど、ハイハイと言うことを聞くにはお願いの規模が大き過ぎるのだ

思いつきで話してると思ってるだろうから余計だろうけど、やっぱり反対はされた


だからこそ、このタイミングがベストなのだ



「ゲイブ、はいってきて」


あ、ゲイブは料理長の名前ね


料理長ことゲイブは私の声に反応して扉を形式的にノックしてから執務室へと入ってきた

本来ならお父様の入札の許可がいるけど、プレゼンには勢いが大切!今は流されてもらいましょう!


「料理長…?何故…」


まさかの人物の登場に思わず立ち上がるお父様

ゲイブは私が最初に伝えておいた言葉通りに静かにカートと共に進み、私のすぐそばで立ち止まった


「お父さま、これを食べてください」


ゲイブの持ってきたカートに乗っているポップコーンを示しながら食べることを促す


「え?…これはなんだ?」


突然のゲイブに娘の言葉、未知なる食べ物とドンドン新しい情報が付け足されていく状況に困惑気味のお父様。ポップコーンへと視線を向けると見慣れないその食べ物に眉を寄せる


食べてと伝えたが、手を出そうとはしない


仕方ない、こうなれば奥の手を使おうじゃないか



「ゲイブ」


私が声をかけるとすぐにゲイブはポップコーン(塩バター)の入ったボールを持ち、私に差し出す

私はそれを手に取り、お父様と向き合う


視線がガッチリと絡んだのを確認してから、愛想100%の私の中での最高に可愛い笑顔でポップコーンを近づける


「はい、お父さま…“あーん”」


バカップルがよくするのにお馴染みの『あーん』をお父様にお見舞いする。これに抗える程お父様の意思は強くない…いや、親バカ具合をなめてはいけない、の方が正しいかも


差し出されたポップコーンと私との間に視線を数回巡らさせたが、意を決してお父様はまたしゃがみ込み私の指先にあるポップコーンを口へと入れた






感想ありがとうございます!

気になる点などございましたらお気軽にお伝えいただけたらと思います


励ましの言葉は続きを書く活力になるので、是非是非よろしくお願いします

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