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本物の安心感とお前が原因ーーそう、それだよ。それこそアンタだ



ただひたすら走る。後ろは振り返らない。だから、追いかけてきているのかすらわからない。でも、止まってしまったらダメだと思ったのでテントが見えるまでただただ必死に足を動かした



どれだけ走ったかわからない。気づけばテントが見えてきた

テントから少し出た道のところに人影が見えた


イーサン?違う、あれは…


「あれ、お姫様?」


クラウスだ


走ってきた私に驚いた顔を見せるクラウス。私は私でそこに立っていたのがクラウスだと気付き、スピードを緩めずにそのままの勢いでクラウスへとぶつかりにいく


「え?うわっ!?」


クラウスは何が何かよく分からないまま、でも飛び込んできた私を避けずに受け止めて2人して勢いそのまま倒れ込んでしまう


「いたた…どうしたの?何かあった?」


私のことをよく分からないまま庇ってくれたクラウスは当然ながら結構な勢いで背中というか後頭部を地面にぶつけた。痛みに顔を歪めながらもすぐに私なことを心配してくれた


7歳とは思えない配慮ができる女の子に優しい男の子、それがクラウスだ


触れている胸元からトクントクンと心臓が脈打つ音が聞こえる。生きてる、幽霊じゃない

でも、ちゃんと確かめたい


「ねえ、わたしのこと、よんで」


「?」


私の突然の言葉に首を傾げるクラウス


「はやく!」


「よくわからないけど、怖いことでもあったの?お姫さま」


何かあった時に慰めてくれるのと一緒で右手で私の頭を優しく撫でながらいつもの口調で、いつものように呼んでくれる。ああ、よかった、本物だ



「…クラウスのせいだからね」


「なにが?」


そうだ、元を辿ったらクラウスが全部悪いじゃないか。私がこうなったのは眠れないせいで散歩したからだし、眠れなかったのはクラウスの昼間の発言のせいなんだから、責任はクラウスにあるじゃないか


「クラウスが、このそうげんに出るとか言うから、こんなことになったのよ」


恨みを込めた目でクラウスを見上げる

こっちを見ていたクラウスはその蜂蜜色の目をキョトンと丸くした


「僕、何か言ったっけ?」


こいつ、しらばっくれる気か?

ムッとしながら私はわかっていない様子を見せるクラウスに丁寧に説明してあげる


「ひるま、あなたが言ったんじゃない、このそうげんには“出る”んだって!そのおかげで、わたしはひどいめにあうところなったんだから、わすれてなんて言わせないわよ」


「出る?…お姫様は何が出ると思ってるの?」


んん?どういうことだ?


「そりゃ…オバケがじゃないの?」


むしろ、それ以外に出るという表現が似合うものがいるこ?特に、あの言い方をしたら、誰だって幽霊だのオバケだのを想像するだろう


「…オバケだと、思ってたの?」


え?違うの?逆に?逆にあんな含みのあるような言い方をしておいてそういうことじゃないの?

普通、あんな言い方したらどう考えたも幽霊フラグがたったと思うじゃない。違うとはどういうことなんだ


「そっか、勘違いさせちゃったんだね。それはごめんね、そういうつもりはなかったんだけどね」


またよしよしと慰めるように頭を撫でられる。また子供扱いされている。こういうことをされると自分の年齢がわからなくなる。私の中身は立派なアラサーなんですよ、坊や


「じゃあ、お姫様のご機嫌を治すチャンスを僕にいただけませんか?」


ヨイショとクラウスに起こされる。先に私のことを立たせると私に対してクラウスが跪く

そして、私の片手を掬い上げ、クラウス自身の口元に寄せて口付ける仕草をしながらそう尋ねてきた


なんともまあ、クサイ演技である。だが、嫌いじゃない。相変わらず、何をしても様になるというか目の保養になる人間だ


「しかたないから、チャンスをあたえましょう」


クラウスとつながっている手に力を込めて手を握り返して肯定の気持ちを示す

クラウスが本物であるなら、もう大丈夫でしょう


「ありがとうございます。じゃあ、少し移動するよ」


クラウスがゆっくりと私の手を引いて歩き出す

それは、私が走ってきた方角とは反対だった


クラウスは道案内をしているので私の前を歩いてはいるものの斜め前くらいをゆっくり私のペースで進んでくれている

そう、クラウスはこういう何気ない配慮が出来る優男なんだよ


と、一人でうんうんと納得している



「どうかした?」


「べつに、なにも?」


私が不審な動きをしていることにもすっかり慣れてしまったクラウスはそれ以降何もそのことについては触れなかった

その代わり、草原にまつわる話だとかを移動している最中話し続けてくれた


クラウスはきっと、現代とかに転生してもすんなり順応してデートとかもそつなつというか、めちゃくちゃ上手くできそうだな

クラウスのトークに楽しませてもらっていたおかげなのか移動もそんなに苦痛もなく終わった


クラウスが立ち止まったところは草原の中でも少し草の高さが高いところだった。でも、それくらいで別に何も気にするところがないみたいだけど…


「ねえ、ここになにかあるの?」


ぐるりと見回しても何もない。歩いてきた道中と特別変わりはないように思う。これで私の機嫌をどう治すというのだろうか。別にそこまで機嫌が悪い訳ではないんだけどなぁ、私。だって、大人だからね!



「まあまあ、少し待ってね」


はやくはやくと答えを知りたがっている私を焦らしてくる。こう、何が起きるのかわからないモヤモヤがわからないんだろうか



「一気にいくから、ちゃんと見ててね。“光あれ”」


いつも間にか以前の誘拐事件の時の杖を持っていたクラウスは私に小さく注意したかと思うと、杖をくるりと小さく回して何やら魔法を使った


杖の先からは豆電球くらいの小さな灯りがふわりと現れ、高さのある草の元へと飛んでいく


灯りが草へと触れた瞬間に、それは起きた



一斉に草の合間から色鮮やかな淡い光の粒が溢れ出てきたのだ





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