この世界の生き物についてーー動物、魔獣、幻獣
お屋敷といっても私が最初に目覚めた公爵家の屋敷と比べると今過ごしている叔父様のお屋敷は小さい。ただ、小さいと言っても元1Kの安いアパート暮らしだった私からすれば十分な豪邸ではあるけど
書斎は叔父様の趣味で集めた本がまとめられていて、仕事関係のものは別室に置いてあるんだとか。ここで過ごしていて退屈している話をした時に好きに見ていいと許可をもらったのだ
許可をもらっているので書斎に着いてもそのまま中へと入ってしまう。この時間、大人たちは忙しいのでこんな部屋にはいないから、いい子でいる必要がないのである
書斎は天井近くまである本棚が壁に沿うように四方を囲っていて、中央に読書できるようにテーブルとソファーが用意されている。叔母様は読書よりもお茶の方が好きみたいで叔父様以外にこの部屋を利用する人はいないそう
おかげで1人でゆっくり過ごせる場所なので、私としては有難い限りなんだけどね
叔父様の趣味の本は植物に関するものと地理学、各地域の伝承なんかが多い。前世でいうところの都市伝説とかそういうのだね
前世と違って魔法や精霊やらと摩訶不思議な生き物も現象もあるので本当にふんわりとした、子供に言い聞かせる内容のものから過去に起きた事件でも参照しているんじゃないかと思うくらい詳しい内容のものもある
例えば、1人でしてはいけないことにあるのが夜が暮れる時間に明かりを持たずに外で過ごしていると霧に包まれて攫われてしまうとか。雨上がりの日に新しい靴を履いてはいけない、何故なら水溜りは精霊界に繋がっていて引き摺り込まれてしまうからとか
実際はないだろうけど、危ないとされたことが形を変えて伝承されて今の形に収まってるんだろう
植物の本にはカンピローネのことも書いてあった。他にも薬草とかも詳しく書いてあったので将来役立ちそうなので熟読した。全部が全部覚えられないけど、主要そうなものはこの屋敷にいる間に頑張って覚えてしまおう
ナナコイの世界では何が起きるかわからない。今から備えていても遅くはない
なんせ、知は力なり
転生者である私の強みは前世の知識が一番!次いでルーナとしての能力なので。知識を磨くことは私を、ひいては世界を救うことになるから蓄えて蓄えて磨いておかないといけない
ああ、他にも本があった
この世界にいる動物についての本だ
この世界にも前世のような犬や猫なんかの動物はいる。それと同時に見た目が私の知っている動物とは違う生き物も存在している
成人男性よりも大きな大兎とか雷を纏っている黒い毛並みを持つ雷狼とか。こういう生き物は動物は動物でも《魔獣》の部類に入るみたいだけど、呼び方はそこまで気にしなくていいか
魔獣は人を襲うことも多いので、魔獣が多く生息する森とか湖とか危険なところには近づかないようにするのがこの国の基本だ。魔獣は魔法の心得のある貴族やら剣に覚えのある騎士ならまだしも平民には太刀打ちする手段がないからである
魔獣はシステムは解明されていないんだけど、貴族と同じように魔法を使うことが出来る種族も存在する。本によると雷狼も纏っている雷を自由に操ることができるそうだ
ということは、今の私はそこらにいる魔獣よりも能力が低いということか…ちょっとショック。早く魔法を使えるようになりたい
魔獣の皮は魔力を含有しており、非常に丈夫で質がいいらしい。その為、魔獣を倒して一攫千金を狙う平民の腕自慢が毎年何人も犠牲になっているのだとか。
恐ろしや恐ろしさや…力量差くらいはわかる技量は持ってないとダメだよね
絶対に勝てない相手と対峙して、それでも尚立ち向かうだなんて馬鹿のすることだもの
へー
魔獣の中にファンタジーでよく聞く一本角とかは含まれないんだって。それらは《幻獣》に分類されるんだって。ややこしいな
でも、幻獣は名前に幻と入っているだけあってその姿を見る方はほとんどできないそう。そりゃ、そうだ
どこに生息しているのかとか、どんな性格なのかとか、魔法を使えるのかとかも分かっていない幻獣の方が多いようだ。本の記載も“不明”という言葉が多く記載されている
それに比べ魔獣についてはかなり細かく書き込まれている。どんな生態を持っているとか、狩りのスタイルに生息地、魔法の使用の有無やその内容に大まかな生息数なんかまで書いてる種類まである
これは、魔獣の方が人間に害を及ぼすという理由で退治されてきた歴史からここまでのことがわかっていて、同じ事を繰り返さないために後世に伝えるために本にしてあるのかな
人に害を及ぼすファンタジー生物が魔獣というのがわかりやすい認識っぽい。魔獣自体は街に出てくることはほとんどなくて街の外に出た馬車や旅行客、森に迷い込んだ人間なんかを襲うんだとか
魔獣の発生要因とかについては謎。倒し方とかその手のことはよく書いてあるけど、根本的なことについてはまだまだ研究していかないといけないみたい
パタンと本を閉じる
顔を上げるとなんとなく身体が怠い。思っていたよりも集中して読んでいたようなので、もしかすると姿勢が悪かったのかもしれない
取り出してきた本を元の位置へと戻していく
ゲームにない知識はこうして地道に身につけていくしかないな
千里の道も一歩から、すべての道はローマに通じる、何事も積もり積もって身になることだ。コツコツ頑張ろう、私
「ルーナ、そろそろでてこいよ」
ガチャリと扉が開かれてヴェントが顔を見せる
タイミングもよくタイムオーバーのようだ
読書の続きはまた明日かな
「うん、いまいくわ」
ヴェントの元へと私は駆けていった




