私にスキップモードはないみたいですーーこの光景をいつか自分の手で
本来なら、10歳から魔法の実技で、その時に杖を渡されるんじゃないの?
と、クラウスの持つ杖を見つめながら訴える
「ああ、これ?」
私の視線に気づいたクラウスが持っていた杖を軽く掲げる
それに肯定を示すためにこくんと頷く
「ホロスコープ家はね、なにかと特殊なんだよ」
クルクル、杖の先で円を描きながらクラウスが話し始める
「星読みは呪術の一種と言っても魔法なんだ。ホロスコープ家では5歳から星読みの実技が始まるんだよ。それに付随して他の魔法もチラホラね」
「じゃあ、クラウスはすきに魔法をつかえるの?」
「うーん、まだまだ勉強中だよ。基礎は出来るけどね」
言い分はわかったけど、納得したくないというか……羨ましい。私だって魔法を使いたい
「お姫様にはまだ早いよ。早期の魔法の実技は負担もあるからあまりいいことじゃないんだから」
顔に出ていたようで、小さい子供に言い聞かせるようにクラウスはそう言い、頭を優しく撫でてくる
そんなに私は顔に出やすいか?とか頭撫でるの好きだな!とか言いたい方はたくさんあったけど、少し複雑そうな…辛そうにも見えるクラウスの顔に、何かを言うのはやめておいた
「なら……なら、クラウスは、だいじょうぶなの?」
いくら保有魔力量が多いからと言ってもさっきの話だと負担は大きいのでは?むしろ、普通の子供よりも大変そうに思うんだけど
「僕は……」
僕は?
「お姫様のおかげで平気だよ」
ニッコリ、と素晴らしい笑顔と一緒にそう言われました
おい!!誤魔化すなや!!
おっと、久しぶりに出てきた心の中の関西人。出てこなくていいよ、お帰りください
私のおかげとか言ってるけど、私が何もしてないことはわかり切っている事実なのではぐらかされたことは間違いない。なんてやつだ、7歳のくせに!
絶対精神年齢私と変わらないだろ!見た目は子供!中身はおっさんだろ!!白状しろ!!
って、言ってやれたらスッキリするのになぁ〜〜!!
言いたい言葉をグッと堪える
私の精神年齢の話とかになると頭のおかしな子認定されてしまう。それはよくない。私にはまだまだやりたいことごあるのだから。無難に無難に生きていくのだ
「…そう」
せいぜい今の私には納得してない態度を示しながら詮索しないくらいしか出来ない。私がクラウスの言葉を信じていないことはちゃんと伝わったようだけど、どこ吹く風のクラウスさんはクスクス笑って私を見ているだけだった
たく、こういうことをされるからクラウスの精神年齢が7歳じゃないだろうと思ってしまうんだよ
………沈黙が痛い。自分で会話を終わらせてしまったので何か話し始めた方がいいんだろうけど、なんだか気まずくて口を開けない。でも、このまま静まり返った部屋でずっと、というのも気が引ける
えーー、クラウス、空気読んでちょうどいい感じの話題とかふってくれないかな?頼むよ、三百円あげるから!
「お姫様、魔法、少しだけ使ってみますか?」
え?私の心の声が届いた?やっばい、私テレパスの能力にでも目覚めたの?
なーんて、はいはい、どうせ顔に出てたんですよね、知ってます
学園に入学するまでにポーカーフェイスを覚えないとダメだな
クラウスの考えていることはわからない。本当、全然わからない。これなら、お父様とかの方がよっぽど何考えているのかわかる。それくらい、クラウスという少年は何を考えているのかわからない
ただ、クラウスが私に害を及ぼすつもりはないことは今までの彼の行動が示しているので信頼はできる
それに、この提案はとっても魅力的だ。断ることなんて出来ない
「…いいの?」
「少しだけ、旦那様たちには内緒ですよ?」
私の機嫌を取るために言ったのか知らないけど、わかっていたのなら、クラウスは人の心を読める妖怪かなんかじゃないかな。くだらない想像が頭に浮かぶ
「する!」
そんなことより、目先の魔法だ
折角の提案だ。怒られないうちにしておく方が絶対に楽しい!
私の返事を聞いてクラウスは私の背後へと回る
そして、覆いかぶさるように身を寄せてきた
近いな、おい!
私の右手に自分の杖を持してくる。そして、その上から自分の手を重ねる
「一回だけだから、ちゃんと見ててね」
私が魔法を使うというよりかはクラウスが魔法を使い、私が使った気分になるようにするだけみたい
出来ればゲームみたいにサクサクっと色々な魔法を使っていきたいけど、身体を壊してもいけないから言うことを聞いておこう
ギュッとクラウスの杖を握る
上から被さっているクラウスの手の感触も相待って、魔法を使ってる気にならないのが現段階での難点だ
「“光よ瞬き、流れよ”」
クラウスの手が動くのに合わせて杖を握る私の手も動かされる
杖の先から私が岩石で出した光とは違うキラキラしたエフェクトみたいな光が溢れ出てくる
溢れ出た光はそのまま上へと浮かぶと天井へと広がっていき、室内にいるのに星空の下にいるような気分になる
今、猛烈に部屋の明かりを消したい。明かりを消して方が綺麗なのはわかりきってる
でも、明かりは消せないので残念ながら、という気持ちである
仕方ないので、いつか自分で魔法を使えるようになったら暗くした部屋で楽しむことにしよう
なので、今はこの輝きを目に焼き付けておこう
数分しただろうか、光は自然と霧散するように消えてしまった
「はい、楽しんだ?」
後ろから顔を覗き込まれる
至近距離で見ると、つくづく顔のいい少年である
それに加えて聡明で魔法の才能もある
天は二物を与えずというが、この男にいったい幾つのものを与えるつもりなのか
「…あなたって、ほんとうにずるいわ」
なんて、ちょっと恨み言を言っても許されるでしょう
「それはそれは、光栄です」
私の意図することがわかっているようで、気分を害した様子もないクラウスは一歩下がると恭しく頭を下げてきた
その学校もまた様になるので嫌になる
この男の格好悪い姿をいつか見てみたいものだ




