こんなはずではなかった。誰もこんな事になるとは思いもしてなかった(別目線)
誘拐した男たち目線です
主人公以外の目線の場合は題名に()で記載するようにしますので、ご参考にどうぞ
本当なら、今頃大金を手に入れてうはうはと気分良く酒を飲んでいるはずだったんだ
最初は乗り気じゃなかった
貴族を誘拐なんて、成功するはずがないと思ったからだ
確かに王都では貴族街には多くの貴族や貴族と縁深い人間が暮らしている
だからといって、そう簡単にその子供を誘拐なんて出来るわけがない
だってそうだろう?貴族ってのは俺たちにはできない《魔法》を使うことができる。子供は魔法は使えないと聞いているけど、どこまで本当なのかなんて、平民の俺たちにはわかりっこない
お貴族様が護衛もつけずに市民街に出るわけもないだろうし、誘拐計画を立てたところで未遂に終わると思っていた
だから、まさか本当に貴族の娘さんを誘拐することができるとは思ってもみなかった
リーダー曰く、その娘さんというのは子爵家の末っ子で貴族街の中でも家が市民街に近く、よく顔を出している。だからこそ、薬さえ使って暴れさせなければ問題なく連れてこられるんだそうだ
そう上手くいくものかと思ってアジトで待っていた俺だが、リーダーと相棒が子供を連れてきたときには驚いたもんだ
だが、相棒のヘマのせいで連れてくる予定の娘さんではなく、別の娘さんを連れてきちまったらしい
そのせいで、身代金を要求する家自体がわからず、手をこまねくはめになっている
金は必要だ。悪事を働いたって手に入れたいもんがある。嬢ちゃんには悪いがたっぷりと俺たちのために働いてもらうしかない
なーに、言うことを聞いてくれれば俺も他の2人も痛い目をみせるつもりはない。金さえ手に入ればそれでいいのだ
乗り気じゃなかった計画。だが、参加してしまったからには俺は今さら関係ないと言うことはできない。なら、甘い蜜は吸わせてもらって美味しい思いをさせてもらおうじゃねーか
くくっと喉から笑いが漏れる
今いるのは市民街からも少し離れた貧民街に近い人気のない小屋だ。元からこの辺りには人がいない。見つかることはない
あとは目覚めた嬢ちゃんから家のことを聞き出し、それを伝えて金をいただく
そして、大金を持ってトンズラしちまえばこっちなもんだ
楽して手に入る金のなんといいことか
金が手に入ったら何に使うか、そんな算段を立てていると気分も次第に良くなってくる
相棒も同じなのか手持ちのカードを見ながら口元をニマニマ動かしている
リーダーも同じだ。表情は上機嫌。酒さえこの場にあれば3人で乾杯しているのだが…それは金が入った後にゆっくりとしようじゃねーか
ガチャンっ
そんなことを考えていると、嬢ちゃんの眠っている部屋から大きな物音がした
やっとお目覚めか?
金の匂いが強くなる。自然と口角が上がる
相棒が立ち上がり、部屋の扉へと近づく
南京錠をガチャリと開ける
ゆっくりと扉を開く。ギィっと立て付けの悪い扉が音を立てた
「よぉ、お目覚めか…っ!?」
部屋に相棒が入っていく。すると不自然に声が途切れる。何かあったのか!?あんなガキにやられる訳がない。だが、問題が起きたことは明白だった
俺はすぐさま相棒の後を追うような形で部屋へと足を踏み入れた
部屋の中は明かりを置いてなかったせいで薄暗い
元々いた部屋が明るかったせいで中の様子が見えるまで時間がかかる。目を凝らすと相棒が倒れているのが見えた
「おい!なにがあっ…」
相棒のことしか頭になくて、俺はガキを探す前に相棒の元へと駆け寄ってしまった
ぼふっと、顔に布の塊がぶつかる
痛みはない、が、ハラリと解けたそこから粉末が宙を舞う
「げほっげほっ!なんだぁ!?」
粉が目に入る。前が見えない。息を吸った時に粉を思い切り吸ってしまったようで咳が止まらない
ふらふらと、足を進める
何も見えないが、自然と足が動いてしまう
ごんっ!
頭に強い衝撃を受けて、俺は意識を失った
ーーーーーー
部屋へと入っていった2人は呻き声を残して帰ってこない
間違いなく、あの部屋で何かが起きている
見た目が子供だからといって舐めてかかってしまったのが悪かったようだ。どんな方法を使ったのかは分からないが、中にあるガキが2人に何か危害を加えたのだろう
全く、手のかかる奴らだ。だから、バカは嫌いなんだ
俺はあいつらとは違う
所詮、相手はガキだ。貴族の子供と言えども魔法も何も使えないはずの子供。力と体力も何ない。大人に勝てっこないガキなのだ
ガキの土俵に入らなければこちらのもの
どうせ外に出るには俺の背後にある扉を通るしかないんだ。俺は悠々とガキが部屋から出てくるのを待っておけばいい
扉と扉を直線で結んだ間へと立つ。もちろん、目線はガキのいる部屋だ
さあ、どうする?
そう待たずして、動きがあった
逆さになった木箱がずずっと動いて部屋から出てきた
流石は子供。考えることが浅はかだ
姿さえ見えなかったらバレないとでも思っているのか?それとも、俺がいることに気付いていないのか?どちらにしても、愚かなことだ
ゆっくり、足音を殺しながら木箱へと近づく
「ほぉーら、出てこい!!」
木箱の前に移動したところで勢いよく木箱を持ち上げる
確かに中にはガキが居た
だが、そのガキはその手に空のワイン瓶を持っていた
そして、飲み口を手に両手で持ったそれを、勢いよく持ち上げた
そしてそれは、俺の急所へと思い切りぶつかった
脳天を直撃するような、言い難い衝撃とともに痛みよりは衝撃が身体に走る。両手が自然と痛みを感じた部位を守るように包み込み、力の入らない足は曲がって床へと膝をつく
ガキは俺とは対照的に立ち上がると一気に扉へと駆けて行く
くそっ!!やりやがった
だが、そう上手くいかせてやるものか
「!!」
扉が開かないことにガキは驚きを浮かべる
扉には上の方に別で鍵をつけてある。ガキでは手が届かない位置だ
絶望して顔を見てやろう
まだ身体に力は入らないが、ゆっくりと立ち上がりガキへと目を向ける
ガキはその手に何かを持っていた
そして、ガキが何が口にしたかと思うと、その手元が眩く発光し、俺の目はイカれてしまった




