元が大人だからといって大人の味が美味しいことはないようでーー飲み物の開拓、視野に入れておきましょう
「お嬢様!すみません、遅くなってしまいましたね」
廊下に出ると叔母様に言われたようで飲み物をトレーに乗せたエミリーがこちらに向かってきているところだった
私の姿に気づいたエミリーは慌てたように小走りで近づいてきた
メイドとしての技術なのか走っていてもトレーの上のものが揺れておらず、溢さないのは流石である
というか、エミリーも来ていたのか。てっきり王都にいる間は領地の屋敷にお留守番なのだと思っていたよ
「エミリー!きてくれてたの?」
「お嬢様あるところに私ありですから!お嬢様のお好きなアップルティーをお持ちいたしました。中で飲まれますか?」
駆け寄ってくれたエミリーの持つトレーには確かに冷やされている紅茶があった。ほのかにリンゴの甘い香りがするので彼女のいう通りアップルティーなのだろう
あと、私がアップルティーを好きなのはコーヒーが飲めないからです。ヨーロッパ風なだけあって日本人に馴染みのある麦茶とかはなく、食事の時も大人はお酒で子供はお水と落ち着く味がない
大人の時に飲めたコーヒーを一度口にしてみたんだけど、子どもの身体には合わなかったみたいで全然美味しくなかったのでそれ以降フルーツティーを楽しむようになったのだ
将来的にはカフェオレとか飲みやすい飲み物を提案していきたいな。多分流行ると思うんだよね
「うーん、おばさまたちと飲もうかな。おばさまたちはどこかしら?」
部屋から出てきたところなので元に戻るのはちょっと気が引ける。何事も前進あるのみだよね。エミリーには悪いけど、もう少し飲み物を持ってもらっておこう
「オリビア様たちでしたら少し先のお部屋に行かれましたよ。ご案内致しますね」
エミリーは私の言葉に嫌な顔一つせずににっこり笑顔でそう答えると私の歩調に合わせながら少し前を歩き始めた。よく出来たメイドである
私が休んでいた部屋からそう遠くない部屋に叔母様達は居るらしく、その部屋の前まで来るとエミリーは私にどうぞ、と道を譲るように扉の横へと身を寄せた
私も私で扉へと近づくとコンコンと控えめにノック、中に聞こえるくらいの声量を意識して声を出す
「おばさま、ルーナです。はいってもいいですか?」
私が声をかけてからすぐに中から人の動く音が聞こえたかと思うと、扉がガチャリと開かれた
「あら!ルーナちゃん。お部屋から出てきたのね。どうぞ、入って頂戴」
叔母様が出迎えてくれた。中は応接室のようになっていて、中央にふかふかそうな2人がけくらいのソファが向かい合うように2つとローテーブルがあった
ローテーブルには既に飲み物が置いてあってそれぞれ向かい合う形で置かれているので叔母様とヴェントは対面で座っていたみたい
ヴェントはヴェントで私の登場にまだ理解が追いついてないのかビックリしたような顔をして固まっている。うん、子供らしくて可愛いね、イイネ!!
叔母様に促されるまま部屋へと入室。エミリーも私の後ろから続くように入ってきた
どこに座ろうか悩んだものの、面白そうなのでヴェントの隣へと歩み寄る
「おとなり、よろしいですか?」
なんて、愛らしく微笑みながら聞いてみる
「え…っ…す、すきにすればいいだろ!!」
声をかけられて放心状態から帰ってきたヴェント。言葉に迷った様子を見せたあと、素っ気なくそう言いふんっと顔を背けてしまった
かわいい〜!!子供らしい姿百点満点!!生意気そうなところがポイント高いよ!!
「ふふ、ではしつれいします」
本人の許可も取れたので失礼しましょう。ヴェントの隣に腰掛ける。うっわ、ソファふわっふわ!身体が沈んじゃうよ!流石国を担う財務官幹部のお屋敷なだけあって家具もいいもの置いてるんですね
エミリーは私が腰掛けるのに合わせて私の前へと飲み物が入ったグラスを用意してくれる。若いのに、本当によく出来るメイドさんだ。確か年齢は18歳くらいだったかな?思ってるよりも若かった気がする
寝起きから何もとっていなかった身体は思ってたよりも渇いていたようで、エミリーが用意してくれたアップルティーを一口口にすると、そのままくぴくぴと半分くらいまで一気に飲んでしまった
程よくお砂糖も加えられているので絶妙に私好みの味だ。大変おいしいです。そんな気持ちを込めてエミリーに視線を向け、目があってからニコッと笑いかける。エミリーも私の意思に気づいたのか嬉しそうに笑い返してくれた
「おばさま、わたし、ねむってしまっていたようですみません。なにかそそうをしていませんでしたか?」
「粗相だなんて…初めてのお茶会だったのだから疲れるのが当然よ。むしろ、もっとゆっくり休んでくれてよかったのに…ごめんなさい、うちの愚息が起こしてしまったのよね」
私のことは既に叔母様から聞いているのか私のことを起こしたという件を叔母様が口にした際、ヴェントはビクッと身体を跳ねさせた。大切なお客様とでも言われたのかな?それとももうしっかりと叱られたのだろうか
「いいえ、せっかくおうとに来たのですからねむっていてはもったいないですもの。かれにおこしてもらえてよかったです」
本当はもっと寝ていたかったけど、いい子のルーナちゃんはそんなことは言いません。優しく気遣いのできる天使のような女の子に私はなるのです
「え…」
私に庇われると思ってなかったのかヴェントが隣で声を漏らしたけど、知らない知らない。今は叔母様の相手をする方が大切なので
「そう?そう言ってもらえると助かるけど…」
「おばさま、お父さまたちはどうされているのですか?」
「お義兄様達は別室でお仕事の話をしているはずよ。…そうね、そろそろ一段落つく頃かもしれませんしれないわね。少し見てくるから待っててもらえるかしら?」
「はい、もちろんです。かれといっしょにまってますね」
叔母様からの提案にヴェントを巻き込んで答える。隣のヴェルトは反論しようと口を開こうとするが、それより先に叔母様が言葉を被せる
「あら!じゃあお願いするわね!」
息子と私が仲良くなることは望ましい展開なのだろう、叔母様は快く頷いたくれた。そしてそのままさっさと部屋を後にしてくれた。ああ、仕事のできるエミリーはお菓子でも持ってきますと叔母様に続いて部屋を出て行ってくれた
よし、これでヴェントと2人っきりになれた
交流を深めることにしようじゃないか




