人はそう簡単にはかわれないーーコミュ障なので次回から本気出すことにします。ほんとだって
「よし、まだおわってないわね」
アーサーから教えてもらった通りに廊下を進んでいくと懐かしの中庭へと無事に戻ってこれた。案の定、私がいなくなったことを気にしている様子は全くなく、私が最初にいた時と同じようにあちらこちらで楽しそうに雑談を繰り広げている
時間的にもまだお茶会はギリギリ終わっていない。主催者である王子がこの場に姿を表していないことも理由に挙げられそうだけど
アーサーはリオンを探していたのはこのお茶会に王子として姿を出させるためだったんじゃないかと思う
ぱっと周囲を見てみたけど、新入生として入学したあとクラスのグループに属さなかった子みたいな立ち位置になってる気がする…なんでみんなそんなに固まって話し続けられるのか。混ぜてよ!中身おばさんでも外面は一級品よ!?
ふ、ふんっ!まあいいさ!本格的な社交デビューはまだまだ先だから!その時に本気出すから!!まだ私は情報収集してるだけだから!!なんて1人言い訳してると虚しくなってくる…頑張って同世代のお友達を作れるようにしよう……次回から
今回は元からリオンのことが第一目的で、その目的は十分過ぎるほどに達成したのだから褒められるべきよ。私は頑張った!よくやったよ、うん!帰ったら自分で自分を褒めてあげることにしよう
さて、お茶会に戻ってこれたはこれたとして、他の人と絡む勇気がない私は結局、初心へと帰ることになった。つまり、お菓子のはしごである。今回はちゃんと食べる量はセーブしている
他の子供たちはお菓子よりも交流の方がいいらしく用意されているお菓子は全然手がつけられていない。なんともったいないのか…だからといって食べ過ぎるわけにはいかないので好きそうなものを厳選してちょこちょことつまんでいく。どれもやっぱり美味しいです
いい感じに好きなものを食べ終わったくらいのタイミングで、大きなざわめきが起こった
「リオン王子の御成です」
アーサーだ。胸を張り大きな声でリオンがこの場に訪れたことをお茶会に参加している人間に伝える。その後ろから私と会った時のは違ったきちんとした王子らしい正装に身を包んだリオンがやってきた
長い髪は一つに結ばれていて、白をベースとした正装に青いネクタイが印象的だ。リオの姿の時は日の打ちどころのない美少女だったけど、男の子の格好は格好で非常によく似合っている。ちゃんと男の子に見えるね。でも、表情が乏しいせいか顔立ちが綺麗すぎるからなのかお人形さんみたいでもあるかな。あと、やっぱり中性的だ
「みな、きょうはわたしのためにきてもらってすまない。たのしんでもらえているだろうか」
予め何を言うのか覚えているのか5歳とは思えない迷いのないハキハキとした口調で流れるように挨拶の言葉を出しているリオン。その声はアーサーのように張り上げているわけでもないのに中庭の隅から隅までしっかりと響いていて、お茶会に参加している全員がその言葉一つ一つに耳を傾けている
リオの姿の泣き顔がまだ脳裏にあるらしい、リオンの顔を見ていると複雑な気持ちになってしまう。よくよく考えるとさっきも何か言いかけていた気がする…私に余裕がなかったのでさっさとあの場からいなくなったものの、アーサーが間に入ってこなかったらリオンは何を言おうと思っていたのかな?
うーーん、ゲームキャラ同士の過去の交流についつなんてあんまり出てこないし、幼少期とゲームの時とでは性格が違いすぎているせいで予想をするにしたって判断しかねるな。いっそ、ゲームの時間軸に一気に転生していたらこんな悩みはなかったのかもしれないな
その場合はゲームキャラとの好感度が良くないだろうから、ロクでもないエンドまっさぐらか…それは困るな、今のままでいいや
「いじょうで、こんかいの茶会はしゅうりょうとする。まだだんしょうするもよし、かえるもよし…好きにしてくれ」
知らない間にリオンの言葉も終わってしまっていたようだ。締め括りの言葉を言ったかと思えば視線もよこさずに振り返り、その場を後にしようとするリオン
ただ、振り返る最中に中庭の隅っこで片手に食べかけのケーキが乗った小皿、反対の手にフォークを持つ私と目があった。そして固まった
やっば、流石に不敬か?怒られるか?
だって、まだ残ってるんだもん!適当に置いてて誰かに触られたりしたら嫌なんだから、持っておくしかできないじゃない!!と、まだ何も言われてないのに言い訳を準備しておく私。姑息である
私のことに気がついたのかリオンは目を少し見張ると体勢を変えて私の方へとつかつか歩み始めてきた
どんどん近づいてくる…これ、やっぱり私に向かってきてるよね〜…はあ、王族侮辱罪とそんなんか?えーでも、ケーキを食べてたわけじゃなくてケーキを持ってただけのんだけどなぁ…話してる最中は食べてなかったし
そうこうしている間に既にリオンは目の前にいた
「…ルーナ」
「さきほどぶりです、でんか」
目の前にいるのに流石にそのままではいられない。近くにあったテーブルに小皿とケーキを置く。リオンと向き合うように体勢を変えかえてから、スカートを摘みながらペコリと頭を下げる
周囲は王子が声をかけてくるというイベントに釘付け状態になっている。つまり、シーンと周囲は静まり返っているわけで。うっわ、気まずい。他の令息令嬢が心の中でこそこそ言ってる気がする…聞こえないから気にしないけど
「ルーナ」
私の名前を何度も呼ぶ。いや、そんなに呼ばなくても聞こえてますけど。リオンもリオンでらしくないというか、煮え切らない態度であちらこちらへと視線を彷徨わせている
どうしよっかな。さっきの時みたいに逃げてやろうかな
「でんか、わたしはそろそろしつれいし…」
「ルーナ!!」
「…はい」
リオンが覚悟を決めて何かを言い出す前に同じように逃げてやろうと思ったが、挨拶を避けがられてしまった。退路を塞がれた気持ちである
「ルーナ」
また名前を呼んでは言葉に詰まるリオン
私は私でもう帰ることは出来ないと諦めたので大人しくリオンの言葉を待っているがいつになったら話し出すのか。日が暮れるのではないのかと私も、あと多分周囲の人間も思ってきたくらいのタイミングで。やっとリオンはその口を開いた
「ルーナ、わたしとともだちになってくれ!」




