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こんな結末、誰が予想できますか!?ーーもうだめだ、疲れました



さっきまでは自分の無罪を主張し、焦りの表情を浮かべていた執事は今ではすっかり見る影がなくなっている

表情はまるで仮面をつけているかのような微笑みを浮かべており、その目に見つめられると蛇に睨まれているような、そんな感覚になる

ぞくっと、背筋を冷たいものが這っていくような、そんな感覚


気味の悪い感覚に、私はついクラウスの背へと隠れるように身を寄せた

クラウスもクラウスで小さな背中に私のことを庇うように片手を私の前に出して守ろうとしてくれた


「そんなに怯えないでください、お嬢様。今回のことはまだ始まりに過ぎません」


私の様子を見ても大した態度の変わらない執事。いや、執事と呼ぶのはもう適切ではないのかもしれない。だって、彼は本当にこの家の執事だったのかさえ、わからないのだから。一先ず、これからは執事(仮)とすることにしよう


「…どういう、こと?」


「それを説明するのは、今ではないのです。ですが、幸運にも貴女は生き延びた!今回は貴女の勝ちにございます」


私の質問には答える気はないようだ。答えにならない、独り言と言った方がしっくりくる芝居がかった台詞回しで執事は続ける


「私は…そうですね、楽しいことが好きなのです。貴女がこれからも楽しませてくれるのなら、貴女の質問に答える日が来るやもしれませんね」


1人でどんどん話を進めていく執事(仮)。口を挟む隙がないというか、横から口出し出来ないような、そんな雰囲気だ。周りで何も言えずに立ち竦む私達とは対照的に柔らかい表情で先ほどまでのクラウスのような流れるような口調で話し続ける執事(仮)


「先ほどから黙って聞いておれば…よく回る舌じゃな。お前が口を割るつもりはなくとも、ワシが割らせてやろうじゃないか」


私達の中で唯一腰に剣を携えていたお爺様が怒りを露わにしながら愛剣を鞘から抜きつつ床を蹴る

ズンッと地響きがしたような気がした

次の瞬間にはあっという間に執事(仮)までの距離を詰めたお爺様が彼に向かって剣を振り下ろそうとしているところだった



「残念ながら、私と戦うには貴方は力不足です」


執事(仮)がすっ、と片手を上に上げるとパチンっという大きな音と共にお爺様が弾き飛ばされてしまった。彼の手とお爺様の剣は直接触れてはいなかった。こんなことが出来るのは…


「まほう…」


「そんな、馬鹿な…っ!」


ファンタジー世界ならではの力と言っても過言ではない魔法の力。魔法自体は貴族であれば多くの人間が使う事が出来るものではあるが、彼が行った魔法にはこの世の理を無視しているところがあった。そのことに攻撃を弾かれたお爺様は真っ先に気づき、驚きを顔に浮かべる


何がおかしいか、それは彼が魔法を使う際に片手をあげるという動作しか行わなかったことになる

ナナコイの世界の魔法には必ず必要なものがある。

《魔力》《呪文》《媒介》の三要素だ

媒介とは簡単に言うと杖のこと、魔法を扱うものはそれぞれの特性に合わせた杖を作るものなのだ。そして、魔力を媒介である杖に通し、呪文で声を広く周囲に広げる。それにより、魔法を使う為に力を借りる精霊へと協力を仰ぐのだ

つまり、この世界の魔法を使うには杖と呪文が必要不可欠になる。それを用いずに魔法を使うなんて芸当聞いたことがないのだ



私を除いての話だけどね



ゲームの中のキャラクターを始め、主人公であるヒロインも悪役令嬢であるルーナも例外なく人間である限りは魔法を使う際に必ず杖と呪文は必要になる

しかし、どんな世界にもそんなルールを破ってくるキャラクターが必ずと言っていいほど出てくるのだ。そこは例にも漏れずナナコイにも登場する


先ほど説明したが、魔法とはつまり精霊の力を借りる技術のことである。では、その精霊に対して媒介なく声をかける必要もなく意のままに動かせるのは誰か?

察している人がいるかもしれないが、つまりはそうだ

精霊達の頂点である“精霊王”または“精霊女王”のどちらかである


ナナコイ中の彼らは主人公への守護を与えたり、いざと言うときに手助けするお助けキャラになる。その姿は作中にも登場せず、出てくる時は音声のみだった

だから、私も目の前にいる彼が精霊王や聖霊女王のどちらかかもしれないと言う可能性には気づけても、確信を持って誰なのか、と特定することはできない


私が知っているのはゲームや漫画などで知り得たことだけなのだから、仕方ないと言えば仕方ないけど


補足すると、作中の彼らはとても主人公に献身的だ。清らかな心が好きな精霊たちはやっぱり主人公のことが大好きなのである。勿論、そのトップである二人もだ。大好きな主人公のためだからこそ、多少の無理難題も手伝ってくれたりするわけで

だからこそ、主人公も出てきていない現段階で彼らのような高位の存在もといレアキャラに出会うということが解せぬ


もしかすると、私の置かれている状況というのは思っているよりも複雑なのかもしれないな。困ったことに、そうなったところで私に出来ることは限られているんだけど



「じゃあ、私は今回はこの辺りで身を引くことに致しましょう!いつかまた、会いましょうね」


執事(仮)がそういうとその身体はキラキラと淡い輝きを待つ霧になりながら霧散していった

お爺様や他の人たちが動いた頃にはもう、彼がそこにいたと言う痕跡すら綺麗さっぱりなくなっていたのだった


「くそっ!なんなんだアイツは!」


唯一攻撃することができたお爺様が悔しそうに顔を歪めながら行き場のない剣を元の鞘へと戻す


「外に逃げたのだろう!周囲を警備するように!」


部屋から姿を消した執事(仮)を逃さないようにするためにエミリーに伝来の指示を出すお父様。多分無駄なことは本人もわかっているだろうね

あれだけの未知なる力がある相手、こっちの常識で語るには場が悪すぎる 



ああ、なんだか、みんなのこえがとおくきこえる

しかいも、ぼんやりしてきた


「ルーナ嬢…?」


くらくらする

ちかくにいるクラウスのかおが、にじむ


「ルーナ嬢!」


心配しているクラウスの顔を最後に、私は倒れてしまった


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