衝撃の事実、青ざめる人々、まさかの結末③
「「「「「全員の!?」」」」」
みんなが口を揃えて驚きの声をあげる。私も声に出た
んな、アホな…私の中の関西人がツッコミを入れる。いや、誰だよ
失礼、混乱してます。
クラウスの一言一言が私を迷宮へと迷い込ませる…事件は迷宮入りか、なんて言ったけど、こんなジェットコースターと迷路が混ざったような謎解きは求めてなかったよ!ついていくので精一杯!むしろ、ついていけません!!
「そう、皆さんが食べた食事全てに毒は入っていたのです」
私以外の大人たちも困惑を隠せない様子。もう一度しっかりとクラウスは同じ内容を口にした。まあ、何度言われたところで“ああ、そうですか”と納得なんて出来ないんだけどね
「私はなにも!なにもしていません!!」
焦る料理長
「私もです!」
同調する執事
叔父様たちのことがあるからかなんとも言えない表情のお父様達
あーはい、ある意味修羅場だわ。うん
面倒くさいというかなんというか…心労がたたってもう一度死ぬとかないかな?と心配になるレベルだわ
「料理長、そう、貴方の問題はそこですよ」
次のターゲットは料理長らしい。見てるだけなら無害そうな微笑みを浮かべてクラウスはまたスラスラと言葉を吐き出していく
「なにが…」
「何もしてないことです」
「え…?」
もうね、クラウスの独壇場ですよ。大の大人たちが7歳の少年相手に手も足も出ない状態。誰一人としてクラウスの話してることを理解することができてない(私もだけど)
まるで演劇の舞台でも見てる気分になる。お芝居を見て楽しんでいるような、そんな自分とは違う世界の話を聞いている気分になる。
実際は、その舞台に自分もいるんだけどね…はは、笑えんわ
「料理長、食事の際の前菜の内容について覚えていますか?」
「え、ええ!勿論!あの日の前菜は丁度市場が開かれたので新鮮な野菜を使いました!」
思い当たる節はまだないようで、料理長は必死にその日の自分の行い…というか、クラウスに聞かれたことに答える
「具体的には?」
「2種類のトマトとチーズ、パプリカとカンパーネのカプレーゼです。その日に仕入れてものを使い、傷んでいたことはありません!」
「では、ルーナ嬢とそれ以外の方々について何か気を配ったことはありますか?」
「……あ!」
「そう、それが貴方の間違いです」
クラウスの言葉に何やら気づいた様子の料理長。2人の間では問題は解決したようだけど、正直、外野である私やお父様たちにはなんのことやらさっぱりである
誰かー、私にわかるように説明してくれー!
「あの、どういうことですか?」
ありがとうお母様!!黙ったままだったお母様がみんなを代表して聞いてくれました!はい!みんなで心の中で感謝を述べましょう!ありがとうお母様!貴女はとても空気の読める人です!
「その…稀に、なのですが…カンパーネを食べると魔力に作用する、ということがあるのです」
料理長が説明を始める。汗がじんわりと滲んでいる。自分がしてしまったことを自覚しているようで、叔父様たちみたいに顔色が悪い
あ、カンパーネというのは魔法植物の一種で、薬草に近い作用がある。そのため、魔力の回復に使えると言うことでポーションの材料になったりするもの。ゲームの中であるミニゲームではこのカンパーネを制限時間内にいくつ集められるか、というものもあった。まあ、今は関係ない話だけどね
「だが、我々とルーナは同じ物を食べたはずだ。魔力に作用するのなら、私達にも変化があっても…」
お父様が疑問を口にする
「ルーナ嬢だけに作用した理由、それは“食前酒”です。カンパーネの効果はアルコールにより中和されてしまいます。しかし、ルーナ嬢はまだ未成年。当然食事の際にはアルコールはまだ口には出来ない」
補填する形でクラウスが説明を加える。へぇ〜と心の中で感心してしまう。もう、すべての謎はクラウスが何でも解決してくれるんじゃないかな?それこそ、私がここにきた理由とか。流石に聞けないけど
「だからこそ、料理長はルーナ嬢の食事にはカンパーネを使わないもしくはカンパーネの作用をなくす為の処置をしなければならなかったのです」
クラウスの言葉に料理長は膝から崩れ落ちた。公爵家の娘を殺しかけたこと、何より自分の料理のせいで人が生命の危機に瀕したことがショックだったのだろう、大粒の涙を流して小さく、何度も謝罪の言葉を口にしている
「カンパーネの作用を中和されなかったルーナ嬢だけに症状が現れた。魔力を増幅され、増幅した魔力はカンパーネの力により波打つように変化が加わる…当然身体に影響が出る。そこに身体に見合わない毒物が加わる…幼い体には強すぎる刺激でしょう」
料理長の状態と相まって、部屋はシーンと静まり返ってしまった。料理長の懺悔の声だけが小さく響いている。みんなの顔は暗い…いや、でもおかしいことが出てきたぞ
「あの…しつじは?かれからは、なにも…もらってないですよ?」
そう、給仕を行った執事。叔父様や叔母様、料理長とは違って本当に私は彼の手が加えられたものを口にした覚えはないのだ。他の3人の行いは注意不足というには危険なことではあるが、わざとではなかった。事故であったのだ
でも、執事だけは違う。彼だけは意図を持って私に何かをしなければ害を及ぼすことはできないのだ
私の言葉に大人達はパッと俯いていた顔をあげ、一斉に執事へと視線を向けた
執事の顔は最初の時のように焦ったものではなくなっていた
「あーあ、バレてしまいましたか」
そう言って、嗤っていた




