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099 怪物

『貴様! まさか、マッサランと同じ真なる魔法使いか⁉』

「真なる魔法使い……?」


 マッサランって、たしか神話に登場するガレスゴディアを討ち取った英雄だったよね? 真なる魔法使いって何のことだろう?


『それでか……。すべてが合点がいったわ。まさか、あのような怪物がまた生まれてくるとは……』


 ガレスゴディアは何かに納得した様子だった。


 というか、ガレスゴディアに怪物扱いされるマッサランって何者だよ!


「ということは、この大剣はここに置いておこうかとも思ったが、ウチに持ち帰った方がいいな。その方がキースも魔力を注ぐのも簡単だろう? なにより、その方が安心だしな」


 父上の中ではガレスゴディアの魂の魔力をゼロにする方向で考えているのだろう。


 たしかに、そうすればガレスゴディアは完全に力を失う。その魂は不滅かもしれないけど、力がなければ無害だしね。父上の考えもわかる。


 というか、父上はフリーデンを置いていくつもりだったんだ。そんなのもったいなさすぎて、僕の頭には欠片もそんな思考はなかったよ。


「盗まれてもことですし、やっぱり村に持ち帰るのがいいと思います。それこそ、父上の新しい武器にすればいいのではないですか?」


 フリーデンはゲームで登場する大剣としては最高レベルの武器だ。一応神造兵器だからね。そんじょそこらのレア武器では太刀打ちできないレベルの武器である。それこそ、大剣が得意な父上に相応しい。


 本当は自分で使ってみたい気持ちはある。ものすごくある。血涙を流しそうなほどある。


 でも、父上の大剣は先端が融けてしまったし、父上なら十全にフリーデンの力を引き出せるだろう。


『無駄だな。その者の大剣捌きは見事であったが、その者はフリーデンを使う資格がない』


 頭の中に響くガレスゴディアの声。その声は嘘を言っているようには思えなかった。


 というか、フリーデンを使うのって資格が必要なの?


 そういえば、ゲームでも主人公は『炎神の祠』に挑戦する前に女神の祝福を受けているし、もしかして、使うのに女神の許可が必要なのかも?


「よく見ろキース。この大剣には刃がない。これでは鈍器にしかならんぞ? おそらく、封印専用の儀礼的な大剣なのだろう。実戦では使えん」


 たしかに父上の言うように、フリーデンには諸刃が付いていない。


 でも、それには秘密があって――――。


『物の価値がわからぬ愚物め。資格のない者は黙っているがいい。資格があるのは……キース、貴様だ』

「僕?」


 これは予想外の事態になってきたぞ?


 フリーデンはゲーム主人公の専用武器だったから、てっきりゲーム主人公しか資格がないと思ったのだけど、ガレスゴディアが言うには、僕にも資格があるらしい。


 どういうことだろう?


「それって――――」

「ご領主様、キース様、ご無事ですか?」


 僕がガレスゴディアに質問しようとしたら、シンディーたちがやってきた。トムはまだアクアの中に入って気持ちよさそうな顔をしている。


「トム、こりゃまたすごい格好だな」

「領主様、こいつは最高ですよ。一度体験してみてください」

「う、うむ……」


 トムのとろけ切った言葉に父上がなんとも言えない顔で頷く。


「これが、邪炎竜ガレスゴディアが封印されている神造兵器ですか……!」


 シンディーが感動を抑えきれない様子でフリーデンを舐め回すように見ている。


「とても熱そうですけど、触っても大丈夫なのですか?」


 たしかに、フリーデンはまだ陽炎を纏っており、とても熱そうだ。


 でも、僕は触っても全然熱くない。むしろ涼やかな冷たさを感じるくらいである。


 でもそれは、ガレスゴディアの言葉を借りるなら、僕が資格があるからなのかもしれない。


 一応、ガレスゴディアに確認してみよう。


「ガレスゴディア、シンディーが触っても大丈夫かな?」

『やめておいた方が無難だろうな。我が顕現した影響でまだ高熱を帯びているはずだ。むしろ、平然と触れるキースの方がおかしいのだ。おそらく、フリーデンが持ち主に認めたのだろう』

「今はやめておいた方がいいって」


 僕ってフリーデンに認められていたんだ。ガレスゴディアと話していると、新しい情報ばっかり出てきて楽しい。


「そうですか……。え? 今、ガレスゴディアと言いましたか? え? 邪炎竜ガレスゴディアと会話できるんですか⁉」

「そうだよ。なぜだかわからないけど、僕はガレスゴディアの魂と会話できるみたいなんだ」

「それはすごいことですよ!」


 シンディーが父上を押し退けるようにして僕の肩を両手でガッシリと掴む。


「邪炎竜ガレスゴディアといえば、世界の始まりと共にあった原初のドラゴンです! つまり、今や神話になってしまった時代の生き証人! 考古学や神話学の常識を覆す大発見があるかもしれません!」


 学者であるシンディーにとっては、ガレスゴディアの記憶は一級品の資料という認識なのだろう。


 つまり、ガレスゴディアとしゃべることができる僕自身が生きた資料館みたいな感じなのかな?


 まぁ、僕の言葉が信じられるかどうかは置いておいて。

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