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098 ガレスゴディアの魂

 陽炎が出るほど熱しているはずのフリーデン。


 でも、僕がフリーデンに触れても火傷どころか痛みすら感じなかった。


 その代わりに感じるのは、悔しい、自分はダメなのではないかという自己批判的な感情だ。


『まさか、二度もニンゲンごときに敗れるとはな……。誇るがいい、ニンゲン。貴様はこの原初の炎、ガレスゴディアを破ったのだからな』

「うお⁉」


 まさかガレスゴディアがしゃべれるとは思わず、ビックリしてしまった。


「キース⁉ 大丈夫か⁉」

「大丈夫です。まさかしゃべるとは思わなくて……」


 僕がそう答えると、父上は不思議そうな顔をしていた。


「は? しゃべる?」

「え?」


 もしかして、ガレスゴディアの声は父上に聞こえていないのかな?


 確認のためにディアナの顔を見るけど、そこにはいつもの無表情ジト目があった。


 これは、どう判断するべきだろう?


『何をキョロキョロしている? 我を倒した者が、あまり無様な姿を見せるな』

「この声って、僕にしか聞こえないの?」

『いかにも。我を打倒してみせた貴様にしか聞こえないはずだ』

「はえー……。でも、僕一人でキミを倒したわけじゃないよ?」


 そう。僕は一人でガレスゴディアを倒したわけじゃない。父上が、アクアが、ディアナが、トムが、シンディーが、みんなが力を合わせたから、やっと掴めた勝利だ。


 事実、トムがいなかったら僕は死んでいたしね。


『たしかに、あのスライムしかり、そこにいるニンゲンしかり、驚くべきことはたくさんあったのは事実だ。だが――――』


 そこで言葉をいったん切るガレスゴディア。


 僕はなんだか緊張でゴクリと息を呑んでいた。


『我の一番の驚きは貴様だ。貴様の魔法は、魔力量はおかしい』


 そんなこと言われてもなぁ。


『よもや、アラスティアラの転生体ではないだろうな?』

「違うよ!」


 僕が聖氷竜アラスティアラの転生体? そんなわけないない。


 まぁ、転生者という意味では当たりだから、ニアピンってところかな?


「キース? さっきから誰としゃべってるんだ?」

「あ……」


 そうだった。ガレスゴディアの言葉は他の人には聞こえないんだった。


「その、驚かないで聞いてほしいのですけど、どうやらガレスゴディアに止めを刺した僕にはガレスゴディアの声が聞こえるみたいなんです」

「なに⁉ あのドラゴンは死んだんじゃないのか⁉」


 父上が驚いたように僕の肩を掴んで問いかけてくる。


「父上、ガレスゴディアは元から死んでいますよ? さっき戦ったのは、封印が解けかけたガレスゴディアの魂です。そして今、ガレスゴディアの魂はこの大剣に封印されています」

「ほう? じゃあ、この大剣の中にあのドラゴンの魂が入っていると……。なんで魂だけなのにしゃべれるんだ? 普通できないだろ、そんなこと」

「それは原初のドラゴンだからとしか……」


 僕に訊かれても困る。


「というかだな、そもそも封印は成功したのか? キース何かわかることがあれば教えてくれ」

「封印は成功しているみたいですよ。僕たちが戦ったガレスゴディアは、封印をすり抜けた魔力でできたものだったみたいですし、その魔力の核になる部分は僕が完全に破壊しました」

「封印された状態でもあの強さだったのか……。完全に復活していたら……もう恐怖しかないな」


 父上が珍しく苦そうな顔をしてしみじみとそう言った。


 父上の言う通り、ガレスゴディアの魂は封印が機能していてもなお、あの強さだった。原初のドラゴンのデタラメな強さの片鱗が見えた気がした。


「まぁ、シンディーの話では、ガレスゴディアの魂は不滅らしいので、また出てくる可能性はありますが――――」

「なに⁉ そうなのか⁉」


 父上がギュッと僕の肩を掴む手に力を込めて、怖い顔で訊いてくる。


 痛い、痛いってば。


 でも、父上から見てもあんなデタラメな強さを見せたガレスゴディアが復活するかもしれないと聞いて、居ても立っても居られなくなったのだろう。


 でも、安心してほしい。


「父上、ご安心ください。ガレスゴディアの魂は、また力を取り戻すかもしれませんが、それは百年や二百年の話ではありません。あの炎のドラゴンは、ガレスゴディアの魂がそれこそ神話の時代から何千、何万の時間をかけて少しづつ集めた魔力の塊です。すぐには復活しませんよ。それに――――」


 これは、僕がフリーデンを触った時に感じた感覚が正しければ――――。


「僕ならこの大剣に封印されているガレスゴディアの魂が持つ魔力をゼロにすることも可能です」

『なんだと⁉』

「そんなことができるのか⁉」


 父上の言葉とほぼ同時にガレスゴディアの驚く声が重なって聞こえた。彼らにとって、それだけ僕の言葉は驚くに値するものだったらしい。


「この大剣を触ってみた時にできると思ったんですよね。感覚的な話で実証とかはできないですけど、たぶん僕ならできます。今は魔力がもう少ないので難しいですけど……」

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