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097 神造兵器『フリーデン』

「勝った、のか……?」


 真っ暗な空間。父上の呟くような疑問が響き渡る。


 あれだけ何度も復活してきたガレスゴディアだ。父上が疑問に思うのもわかる気がした。


「こう暗くてはわからんな。誰か、明かりを」


 父上が緊張を滲ませた声で指示を出す。


 先ほどまでガレスゴディアの炎で明るかったので、みんなここが地下空間で、松明が必要なことなんて忘れていた。


「我、望むは輝鮮たる光。ライト!」


 シンディーが魔法を唱え、僕の後方が明るくなる。


 すると、僕の前方に倒れているトムを発見した。


「シンディー! トムが倒れてる! 早く治療を!」

「はい! 我、望むは輝鮮たる光。彼の者に癒しを。ヒール!」


 僕はトムに駆け寄ると、ヒールの光がトムを包み込む。


「トム! しっかりして! みんなで帰るって約束したじゃないか!」

「いてて。坊ちゃん、儂は大丈夫ですぜ? ただちょっと疲れただけでさあ……」


 トムの体は、触るとビックリするほど熱かった。


 ひょっとして熱中症だろうか?


 いやでも、いくらヒールで癒されたとはいえ、あんな炎のブレスを真正面から喰らって、熱中症で済むのか?


 なんにせよ、冷やした方がいいかもしれない。


「おわ⁉」


 そう思った時、なにか冷たくて柔らかいものがぶつかってきた。


 アクアだ。その大きさはいつもの半分くらいまで減っていた。アクアにとっても激戦だったのだろう。最初の方とか、一対一でガレスゴディアと闘っていたわけだし。


「アクアもがんばったね」


 その冷たい表面を撫でると、アクアが嬉しそうにぽよんぽよん弾む。


 そうだ。


「アクア、悪いけど、トムの体を冷やしてあげてくれないかな? トムの体がビックリするほど熱いんだ」


 アクアは、任せとけとばかりに触手を生やして力こぶを作ってみせる。


 そして、その触手でトムを持ち上げると、トムを自分の中に取り込んだ。


 僕から見ると、アクアからトムの頭が生えている感じだ。


「ああ……。こいつぁ、気持ちいですねえ……」

「しばらく涼んでなよ。ありがとう、トム。おかげで助かったよ」

「なんの、なんの」


 見たところトムの体に怪我はなさそうだし、あとは冷やせば大丈夫だろう。念のため、シンディーに見ててもらおう。


「シンディー、トムを頼むね」

「かしこまりました。こちら、用意した松明です。使ってください」

「ありがとう」


 僕はシンディーから松明を受け取ると、振り返る。


「うわ⁉」


 ぼくのすぐ後ろには、無表情のディアナが立っていた。心臓が飛び出るかと思うくらいビックリしたよ!


「ディアナも無事でよかったよ……」


 僕の言葉にコクリと頷くディアナ。そのメイド服は少しだけ焦げている。


 使っている武器の関係であんまりガレスゴディアにダメージを与えられなかったディアナだけど、命を張って時間を稼いでくれたし、陽動として動いてくれた。その働きは決して小さいものではない。


「行こう、ディアナ。ガレスゴディアを封印しないと」


 コクリと頷くディアナを引き連れて、僕は大空間の中央へと向かう。


 そこには父上の姿もあった。なにやら困っている様子だ。


 そして、そこにはぼんやりと光を放つ刃の付いてない大剣が刺さっていた。


 これこそ、ガレスゴディアを討伐、そして封印するために女神が創った神造兵器。まるで汚れを知らない新雪のような透き通る白い大剣だ。


 その名も『フリーデン』。その名を象徴するように、この大剣には元々刃が付いていない。


 これが神造兵器『フリーデン』か。ゲームではそれこそ千回は見たけど、実物を見るのはもちろん初めてだ。


「奇麗だ……」


 洗練され尽くされたような造形美の極致。思わず呟いてしまうほど、そんな衝撃的な印象を受けた。


 この大剣を見ることができた。それだけでガレスゴディアに挑んだ甲斐があるとまで思ってしまうほどの美術品。


 しかし、これがただのアンティークではないことを僕はもう知っている。


 ガレスゴディアを封印する要にして、作中でも屈指の攻撃力を誇る最強武器候補だということも。


 そんなフリーデンを前に、父上は腕を組んで困っている様子である。


「どうしたんですか、父上?」

「いや、どうしたものかと思ってな……」

「?」


 いつものようにハッキリとした物言いではなく、なんとなく戸惑うような雰囲気の父上。


 それもそのはず。よくよくフリーデンを見れば、ゆらゆらと陽炎のようにその刀身が揺れて見えた。


 オーラとかそんなのじゃない。陽炎のようにじゃなくて陽炎だ。あまりにもフリーデンが熱を持ちすぎて、景色が歪んで見えているのだ。


 これでは持つこともできないだろう。父上も困るはずだ。


 それに、父上はガレスゴディアの封印方法を知らない。そういう意味でも困っているのだろう。


「父上、ここは僕に任せてください」

「キース? 熱いぞ? 気をつけろよ?」

「はい」


 そう言って、僕は背伸びしてフリーデンの柄を掴んだ。


「あ! おい!」

「大丈夫ですよ」


 慌てた様子の父上に、僕はそう答えた。

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