↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
95/143

095 邪炎竜ガレスゴディア④

「水よ……!」


 僕が召喚したのは、千を超える水球だ。


 その一つ一つが直径二メートルを超える限界まで圧縮された水の塊である。


 おそらく、すべてを解き放ったらこの大空間を埋め尽くして余りあるほどの水量だろう。


 僕は水球を大空間に配置し、準備完了だ。


「なんという……!」


 驚いているガレスゴディアをこれから消し飛ばす。


「タイダルウェーブ!」


 続いて召喚するのは、すべてを根こそぎ洗い流す大津波である。


 場所が限られている関係で規模が小さくなってしまったけど、タイダルウェーブは水魔法の最高位魔法だ。これで少しはガレスゴディアのMPを削れるはずである。


「マジかよ……」


 しかし、このまま消し飛ぶのではないかと思っていた僕の予想とは裏腹に、ガレスゴディアは大津波の中でも健在だった。


 熱だ。


 ガレスゴディアは自身の温度を上げ、次々と迫るタイダルウェーブを蒸発。無効化している。


 水蒸気の白い靄のかかった視界の中、煌々と輝く赤い炎はもはや恐怖だ。


 でも、それぐらい僕も想定済みである。


 ガレスゴディアが自身の熱を上げたということは、それだけMPを消費したということ。確実にガレスゴディアにダメージが入っている。


「切り裂け!」


 僕は展開していた千を超えるすべての水球からウォーターカッターの魔法を発動する。


 先ほどのタイダルウェーブが大質量による面の圧力ならば、今度はすべてを穿つ点の一撃だ。これでガレスゴディアの体を削る。


「よもやこれほどとは……。だがッ!」


 そこでガレスゴディアが動いた。


 ウォーターカッターの魔法による集中砲火で、ガレスゴディアの体はボロボロだ、腕や翼が断ち切られ、何度も首を刎ねられている。


 でも、その炎の輝きだけは消しきれない。


 何度斬り飛ばそうと、ガレスゴディアの体は炎に包まれて完全に復活する。


 ガレスゴディアの狙いは……僕だ!


 魔法使いである僕を倒せば、僕の展開しているすべての魔法は力を失う。その一点に賭けた、なりふり構わないガレスゴディアの前進。


 炎が、死が迫っている。


 心なしか、だんだん暑くなってきた。


 正直、めちゃくちゃ怖い。


 でも、僕は下がらない。


 というか、下がれない。


 今、僕がやっていること。用意した千二百十三個の水球の制御で僕の脳の処理能力はいっぱいいっぱいだ。指を動かすどころか、瞬きさえもできない。


 ジリジリと、しかし確実にこちらに向かってくるガレスゴディア。


 千を超えるウォーターカッターの魔法を受け続け、ガレスゴディアの魔力はガリガリと削れていく。


 これは、僕がガレスゴディアを倒しきるのが先か、ガレスゴディアが僕を殺すのが先かの勝負だ。


「貰ったぞ!」


 そんな勝利の確信を滲ませる声と共に、もうドラゴンの姿も保てないガレスゴディアだったものから火柱が迫る。


 ウォーターカッターで迎え撃つが、消し切れない。


 僕はウォーターカッターを発射する水源として千を超える水球を作ったけれど、その水も無限ではない。徐々に水球が小さくなっていく。


 これは僕の負けか……。


 これがもし、僕一人の挑戦ならね。


「坊ちゃん!」


 そんな声と共に、僕の目の前に大きな背中が現れた。頼もしい背中だ。


 トム。僕たちの最年長にして、盾と金属で補強された鎧に纏った父上に次ぐ大男。


 トムは迫る炎の柱に対して盾を構える。


「やらせるものかあああああああああああああああああああああああああ!」


 大空間に響き渡るトムの雄叫び。


 しかし、その姿はボロボロだった。


 あんなに頼もしかった大盾は熱で歪な形に変形し、鎧も一度燃えたのか、穴が開いている。


 シンディーに癒してもらったのか、怪我こそないものの不安になる姿だ。


 その不安は一番トム自身が感じているだろう。


 しかし、トムは退かない。


 ついに炎の柱とトムが激突する。


 ガレスゴディアが確実に僕を屠るために用意した炎だ。その威力は計り知れない。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 しかし、トムは一歩も下がらず、その場で耐え続ける。


 大盾はまるで粘土のようにぐにゃりと曲がり、盾を持つトムの両手にも火が移る。肉が焦げる臭いがここまで漂ってくる気がした。


 トムの胴体を守る鎧にまで火が移り、革と金属で作られた鎧まで壊れていく。


 このままでは、トムが死んでしまう!


 僕は大急ぎで空間に配置した水球をかき集めていく。水球一つの大きさはビー玉ほどにまで小さくなっていた。


 僕の魔力も無限じゃない。


 今ではこんな小さな水球も大切に使わないといけないほど魔力が枯渇していた。


「く……っ」


 今まで大魔法を連続して行使してきた弊害なのか、ズキリと頭が痛む。


 しかし、急がなければトムの命がなくなってしまう。


 急ぐ僕の耳にシンディーの声が聞こえてきた。


「我、望むは輝鮮たる光。彼の者に癒しを、ヒール!」


 シンディーの詠唱と共にトムの体が光に包まれる。


 光属性の代表的な治癒魔法、ヒールの魔法だ。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。