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094 邪炎竜ガレスゴディア③

 僕のウォーターカッターの魔法によって胸から上を失った邪炎竜ガレスゴディア。


 しかし、僕はまだ油断しない。


「父上、トム! 逃げて!」


 僕の声に呼応するように、邪炎竜ガレスゴディアの胸から炎が噴き出し、その体が修復されていく。


「マジか……」

「こいつぁ……」

「とりあえず、逃げるぞ!」

「へい!」


 徐々に復活する邪炎竜ガレスゴディア。その姿を見て、父上がトムに肩を貸すようにしてこちらに向かって走ってくる。


「父上はトムをシンディーのところに」

「お前はどうするんだ?」

「時間を稼ぎますよ」

「あ、おい⁉」


 僕とディアナは、父上とトムと入れ替わるように邪炎竜ガレスゴディアの前に出た。


 邪炎竜ガレスゴディアはもう完全に元通りだ。


「倒せます?」


 さすがに不安に思ったのか、めったに口を開かないディアナが僕に尋ねてくる。


「倒せるさ」


 僕は自信満々に答える。


 僕はゲームの知識で知っているし、それが正しいことを感じられるのだ。


 一見無敵に見える邪炎竜ガレスゴディアだが、確実にその魔力は減っている。その魔力を削り切れば、僕たちの勝利だ。


 そして、その魔力は最初に感じた時よりもう八割以下に減っている。


 アクアが滅多打ちにしたのと、僕のウォーターカッターの魔法がかなり効いたみたいだ。


「我がこうも容易く斬られるだと……? 貴様、何者だ?」

「ッ⁉」


 隣でディアナがビクッと体を震わせた。


 邪炎竜ガレスゴディアがしゃべるだなんて思わなかったのだろう。


 しかし、このセリフは初めて聞いたな。


 僕は世界の管理者だった原初のドラゴンに敬意を持って答える。


「キース・アクロイド。キミを倒す者の名だ」

「大きく出たな。我が名は原初の炎ガレスゴディア。その挑戦を受けよう」


 そう答えるガレスゴディアの姿はどこまでも威厳に満ちているように見えた。


「キミが男神に付いたのが残念でならないよ」

「人は、堕落しすぎた……」


 その問答を最後に、僕たちの戦闘が始まる。


 最初に動いたのは、アクアだった。


 うにょんと触手を伸ばすと、今度は八本のハンマー触手で滅多打ちにしようとする。


 それに対してガレスゴディアは右腕を振ることで応える。


 なんと、この大空間を二分してしまうほど大きな炎の壁、ファイアウォールだ。


 もちろん、僕はガレスゴディアがファイアウォールを使うのを知っていた。


 でも、こんな大きなファイアウォールを見たのは初めてだ。底知れないガレスゴディアの力を見た気がした。


 しかし、ガレスゴディアのHPとMPはイコールであることを僕は知っている。涼しい顔をしているように見えるガレスゴディアだが、その力は確実に衰えている。


 ファイアウォールを前にそのまま触手ハンマーを叩きつけるアクアだけど、ファイアウォールに触れるとまるで熱したフライパンに落としたバターのように触手ハンマーが蒸発してしまう。


 これではアクアは参戦できない。


 ここは僕とディアナでガレスゴディアの相手をするしかなさそうだ。


 最近発見した魔法。モンスターの体内の水分の水蒸気化魔法はガレスゴディアには通用しない。水分が存在しないからね。


 ガレスゴディアは普通の生物のように見えるけど、その正体は魔力を操って作ったハリボテである。僕が創っている猫やクジラなんかと大差はない。


 ならば、そのハリボテも作れないほど魔力を消費させればいい。


 そのためには!


 ガレスゴディアの大きな瞳は、僕を直視している。


 おそらく、水の魔法を使える僕を警戒しているのだ。


 そして、ディアナにはまるで警戒していない。


 そこで僕は、ディアナに秘策を授ける。


「ディアナ、三秒だ。三秒だけ時間を稼いでくれ」

「かしこまりました」


 こんな場面だというのにいつものように答えるディアナが少しおかしかった。


 そんな僕のことが不思議に見えたのか、ディアナが首を傾げる。


「いや、なんでもないよ。じゃあ、頼んだ!」

「はい」


 その瞬間、ディアナの姿が消えた。


 最近は僕も鍛錬して、ディアナの姿を追えるくらいには目が慣れてきたと思ったんだけど、どうやらディアナの速さはまだ上があったらしい。すごいね。


「ッ⁉」


 さすがにこれには驚いたのか、ガレスゴディアが目を見開いた。


 その刹那、ガレスゴディアの頭の上部にドドドドドドドッと穴が開く。ディアナの暗器! 上か!


 しかし、僕は上に目を向けず、魔法を仕込んでいく。


 ガレスゴディアも上を見ない。あくまで僕に集中するらしい。


 その間にディアナはガレスゴディアの背後に回っていた。そしてそのままガレスゴディアに向けて疾走する。その行く先には、ガレスゴディアが封印された剣があった。


「こやつッ!」


 剣はガレスゴディアの封印の要だ。さすがに自分の封印されている神造兵器に触れられるのは看過できないのか、ガレスゴディアの意識が一瞬だけディアナに向くのがわかった。


「ジャスト三秒でございます」

「さすがディアナだ!」


 僕はこの時を待っていた!

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