093 邪炎竜ガレスゴディア②
僕たちが蛇に睨まれたカエルのように動きを止めた瞬間、邪炎竜ガレスゴディアの顔が殴り飛ばされた。
「何だ⁉」
「はあ……?」
父上とトムの驚きの声。
でも、僕だけはそれを為した存在を知っている。
「アクアあああああああああああああああああああああああああああ!」
僕の叫びに呼応するように、崩れた壁からにゅるりとアクアが現れた。その大きさはいつもと同じサイズだが、どんどん大きくなっていく。
アクアのサイズはすでにビッグスライムを超え、キングスライムを超え、エンペラースライムさえも超えて、この広大な空間の半分を覆いつくすほどだ。
そこからアクアは二本の触手を伸ばすと、その先端をまるでハンマーのような形にし、邪炎竜ガレスゴディアを滅多打ちに殴り続ける。
邪炎竜ガレスゴディアもただやられてばかりではない。ハンマーを避け、殴り返し、ブレスで向かえ撃つ。
しかし、そのドラゴンブレスの規模は先ほどのものと比べるとかなり小規模だ。
でも、ドラゴンブレスの威力に陰りは見えない。ドラゴンブレスで片方の触手を失うアクア。
だが、そんなものでアクアを止めることはできない。
二本だけだった触手は、今や六本に増え、邪炎竜ガレスゴディアを滅多打ちにする。
アクアと邪炎竜ガレスゴディアの戦いは、まさに大怪獣大戦争だ。
「みんな、行くよ!」
僕は立ち止まっているみんなに声をかけて、戦闘に介入する。
「おう!」
一番に応えてくれたのは父上だった。
父上は一瞬で僕を抜き去ると、邪炎竜ガレスゴディアの懐に潜り込んだ。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
大空間に響き渡る父上の咆哮。
父上の大剣は、邪炎竜ガレスゴディアの首に振り下ろされる。
アクアの攻撃にかかりきりになっていた邪炎竜ガレスゴディアにとって、完璧な奇襲になったはずだ。
しかし――――!
「ちッ!」
父上の舌打ちが聞こえた。
たしかに父上の大剣は、邪炎竜ガレスゴディアの首を捉えた。
しかし、傷が浅い。
寸前のところで邪炎竜ガレスゴディアが回避したのだ。
でも、それで終わらないのがアクロイド流大剣術だ!
「せあッ!」
父上の渾身の蹴りが大剣に炸裂する。
生まれるのは、強烈な大剣による斬り上げだ!
「GYAAAAAAAU⁉」
これには邪炎竜ガレスゴディアも予想外だったのか、首の半分以上が断ち切れる。
しかし、次の瞬間には首から血の代わりに炎が噴き出し、その傷が完全に治癒される。
「なっ⁉」
今度は父上が驚く番になった。
致命傷を与えたと思ったら、次の瞬間にはなかったことにされたのだ。それは驚くだろう。
驚きで一瞬固まってしまった父上は、邪炎竜ガレスゴディアには格好の獲物だった。
その大きな左手を振り上げ、父上を叩き潰そうとする。
「領主様!」
そこに飛び込んできたのはトムだ。その大きな盾で邪炎竜ガレスゴディアの一撃を受け止めようとする。
でも、さすがのトムもドラゴンの本気の一撃を受け止めることはかなわないだろう。
「間に合えええええええええええええ!」
僕は魔法を発動する。みんなにはまだ見せたことのない僕の必殺技。ウォーターカッターの魔法だ。日本で見たウォータージェット切断を参考にして開発した魔法。実戦では初めて使うぶっつけ本番だけど、上手くいってくれよ……!
しかし、かなりタイミングがシビアだ。
もしウォーターカッターの魔法が上手くいったとしても、父上とトムが潰されてからでは意味がない。
その時、腕を振り上げた邪炎竜ガレスゴディアの挙動が一瞬止まった。まるで何か嫌がるように首を動かしたのだ。
僕の横では、何かを投げたポーズのディアナ。
もしかしたら、ディアナが暗器を投げて牽制してくれたのかもしれない。
しかし、依然としてタイミングがシビアなことには変わりがない。
横でディアナが追加で暗器を投げ続けるが、飛び行く暗器は邪炎竜ガレスゴディアに当たる瞬間、消滅する。
邪炎竜ガレスゴディアが自身の温度を上げて、鉄を蒸発したのだ。
ついに邪炎竜ガレスゴディアの左腕が振り下ろされる。
アクアも邪魔しようとするが、ドラゴンブレスによって触手を一気に蒸発させられてしまった。
「はああああああああああああああああああああああッ!」
トムの覚悟を決めた咆哮。
ついに邪炎竜ガレスゴディアの拳がトムの盾と接触する。
拳は相当な熱を纏っているのだろう。
トムの盾を持つ左腕や、顔などに水ぶくれができる。
一瞬にして融解し、燃え上るトムの盾。
しかし、トムの稼いだ一秒にも満たない微かな時間が奇跡を起こした。
「断ち切れえええええええええええええええええええええ!」
加速した時間の中、やきもきするほど発動に時間がかかった僕の魔法がついに発動する。
ウォーターカッターの魔法は邪炎竜ガレスゴディアの拳を切り裂くだけではなく、その体を横に二つに断ち切った。
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