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090 大英雄マッサランと神造兵器

「こちらのレリーフは、人間の大英雄、マッサランが邪炎竜ガレスゴディアの首を刎ねたシーンですわね」


 そこには、おびただしい数の人の死体と、邪炎竜ガレスゴディアの刎ねられた首のレリーフがあった。


 邪炎竜ガレスゴディアの首を刎ねた人物、大英雄マッサラン。女神から神造兵器を託された人物であり、人類で唯一、ドラゴンスレイヤーの称号を持つ神話の人物である。


 マッサランの活躍ばかりに目が行きがちだが、僕は敢えて聖氷竜アラスティアラに注目したい。


 聖氷竜アラスティアラは二対一という不利な状況で七日七晩も戦い抜き、邪炎竜ガレスゴディアを人が倒せるまでに瀕死に追い込み、邪嵐竜ヒューブソップにも大怪我を負わせて退かせた一番の功労者だ。


 この戦いで聖氷竜アラスティアラは命を落としてしまうが、女神と人類は彼女の働きに感謝し、水の神殿を造る。


 ちなみに、この世界でも一週間が地球と同じ七日なのは、属性が全部で七つだからというのもあるけど、聖氷竜アラスティアラの偉業を称えたという説もあるらしい。


「マッサランか。男なら、かくありたいものだな!」


 父上が大英雄マッサランと思わしき人物のレリーフを見ながら頷いている。


 父上もマッサランの名前は知っているらしい。


 まぁ、すべての戦士の憧れなのかもしれないね。人類史上唯一のドラゴンスレイヤーだし、世界一有名な戦士ではあるだろう。父上が憧れるのもわかる気がした。


「ですが、これでここが邪炎竜ガレスゴディアの封印された遺跡、もしくは邪炎竜ガレスゴディアに関係する遺跡だと確定しましたわね」

「そういうことになるか……」


 シンディーの言葉に父上が重々しく頷く。


「しかし、ここまで来てから訊くのもアレだが、もしここがそのドラゴンの封印された遺跡だとしたら、オレたちは何をすればいいんだ? ドラゴンの封印の仕方など、オレは知らんぞ? シンディーは知ってるか?」

「私にも封印の術式などわかりません。封印自体も神造兵器によるものですし、我々人間に御せるものなのかどうなのかもわかりませんわ」


 シンディーの言ってることは、おそらくそう考えるのが正しいのだろう。


 でも、一つ視点が抜けている。女神は、神造兵器を人間のマッサランに託した。


 つまり、人間に制御できる神造兵器を作ったのだ。


 あとは、邪炎竜ガレスゴディアの魂と戦闘して、その力を削れば自然と再封印されることを僕は知っている。


「おいおい、それじゃどうするんだ?」

「今回はあくまで調査が目的です。対策を考えるのはその後かと。もしかしたら、エルフの術者に要請する必要があるかもしれませんわ」


 まぁ、父上とシンディーたちにとっては、この遺跡も神造兵器も邪炎竜ガレスゴディアの魂も未知の存在だ。おそらく、シンディーの言葉からもわかる通り、今回はあくまで調査であり、その結果次第で対策を練るのだろう。


 でも、僕は今回の調査でアクロイドの呪いを解いてしまう気でいた。


 もちろん、懸念点はある。


 それは、ゲームの時代から百年も経っている点だ。


 百年前でさえ、邪炎竜ガレスゴディアの魂から漏れ出した魔力の影響で、この地は雨の降らない乾いた土地になっていた。もちろん、『炎帝の祠』にはモンスターが溢れていたし、邪炎竜ガレスゴディアの魂もそれなりに力を取り戻しつつあったのを覚えている。


 でも、それから百年だ。邪炎竜ガレスゴディアの魂は、ゲームの時とは比じゃないほど強力になっている可能性がある。今回、僕の知る限り最高のメンバーを集めたけど、倒せるかどうかは未知数だ。


 でも、勝算はある。


 それは、僕の扱える魔法が水魔法という点だ。


 邪炎竜ガレスゴディアは、その名の通り火属性のドラゴンである。つまり、水に弱い。


 僕がエンチャント・ウォーターを使ってみんなの攻撃をサポートし、アクアヴェールで火属性ダメージを軽減できれば、まだ戦えるかもしれない。


 それに、水神の腕輪を手に入れた僕の魔法は、さらに強力になっている。


 これが水属性に強い雷属性のドラゴンが封印されているなら僕も諦めたかもしれない。


 でも、相手は火属性のドラゴン。しかも半ば解けかけているとはいえ封印されている状態だ。勝算は十分あると判断した。


 勝てるといいなぁ。


 いや、勝つんだ!


 絶対に勝って、このアクロイド男爵領を豊かにするんだ!


「行きましょう、父上! 僕たちでアクロイドの未来を掴むんです!」

「そう、だな。行くぞ、皆! ぐずぐず考えるのはもう止めだ! どうせ、オレが考えたところで正解などわからん! それなら、行けるところまで行ってみようじゃないか! 壁にぶつかったら、また悩めばいい!」


 父上は覚悟を決めたのか、大股で階段を下りていく。


 僕たちもそれに続いて階段を下り始めた。


 この先は一本道だ。迷うこともない。いよいよ邪炎竜ガレスゴディアの魂との戦闘だな。


 勝つのは僕たちだ!

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