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088 権威の利用と隠し通路

「なるほど。王族の権威を利用するのか……」


 父上が唸るように考え込むような仕草を見せた。


 たしかに、今の僕は嫌われ者のアクロイド男爵家の嫡男でしかない。ぶっちゃけ僕を殺したとしてもそう問題にならないだろう。


 でも、僕が王宮考古学者になれば話が少しだけ変わってくる。


 シンディーも言っていたが、王宮学者は王族に認められた学者の最高位だ。そんな人物が不審な死を遂げれば、王族が調査に出てくるかもしれない。


 それだけでも僕を狙う学者たちの背後にいる貴族たちが逡巡するかもしれない。


 まぁ、中には王族の権威よりも魔法の研究を優先する輩もいるだろう。


 だが、敵の数を確実に減らす。


 それが狙いだ。


「すべてはキース様のお言葉が事実なら……ですが」


 シンディーはそう話を締めくくった。


 そう。僕の言葉の正しさが証明されていない今、すべてはまだ仮定の話でしかない。


「そうだな。こんな危険な所で悩むのもバカらしい。まずはキースの言葉を確認してみよう」


 そう言って、父上が背中に吊っていた大剣を抜きながら、僕の指差した壁へと歩いていく。


「キース、ここか?」

「はい!」

「ふんっ!」


 父上が大剣の柄で壁を思いっきり殴ると、レンガのように積み上げられていた石が崩れ、ぽっかりと黒い穴が開いた。


「トム」

「へい!」


 トムが松明を持って近づくと、壁の穴の向こうにも通路が続いていることがわかる。隠し通路だ。


「本当にあったな……」

「へい……」


 驚きすぎて言葉を失ったように父上とトムの言葉が通路にポツリと響く。


「これは……。キース様の教育計画を変更する必要がありそうですわね……」


 シンディーが僕を見下ろしながら呟いた。


 これは、考古学者になるために歴史の授業が増える感じだろうか?


 僕としては『レインボー・ファンタジー』の裏設定とか知れるから、歴史の授業は大好きだから全然OKなんだけどね!


「これぐらいでどうだ?」


 ゴツゴツと剣の柄で人が通れるほどの大きさに穴を広げる父上とトム。


 トムの持つ松明の明かりに照らされて、穴の向こうにも通路があるのが見える。


「シンディー、隠し通路があるのは確定したが、これはどう考えればいいんだ?」


 父上の質問を受けて、シンディーが少し考えるような仕草をする。そして、困ったような表情を見せた。


「他の遺跡でもこうした隠し通路は見つかっていますが、その造られた理由はさまざまですわ。重要な施設への入り口だったり、本当の神殿への入口であった場合もあります。重要なアイテムが保管されている場合も……。ただ、本当にただの通路だけの可能性もありますので……。なんとも言えませんわ」

「ようは行ってみなければわからんか。では、行こうじゃないか」


 そう言って、父上は壊れた通路の破片をまたぐようにして隠し通路に一歩踏み出した。


「行ってみよう。もしかしたら、こっちが当たりかもしれんからな」


 よしよし。僕の予想通り、隠し通路も探索してくれるみたいだね。


 この先に何があるのか。『レインボー・ファンタジー』のガチ勢だった僕はもちろん知っている。できれば手に入れたいと思っていたアイテムだし、それが現実のものとして見れる触れる舐められるのはテンションぶち上がりである。


 あぁ、早く見たいよ!


 父上とトムとともに隠し通路を進むと、すぐに行き止まりにぶち当たった。


「何かありますぜ!」


 通路の行き止まりが見えたところで、トムが叫ぶ。


 そこにあったのは、今まで見つけた宝箱とは一線を画すほど豪華な青い宝箱だった。


「宝箱だな……。しかも、豪華だ。シンディーはどう見る」

「おそらく、今までよりも重要なアイテムが入っている確率が高いですわ。ですが、その分危険もありえます」

「ふむ……」


 シンディーの話を聞いて、父上が考えるような仕草を見せた。


 僕としてはすぐにでも開けたいのだけど、父上は意外と慎重派らしい。


「父上、僕にやらせてください!」

「いけるか?」

「はい! これまで宝箱を開けてきて、自信も付きました」

「……よし! 任せたぞ、キース!」

「はい!」


 少し迷うそぶりを見せたけど、最終的に父上は僕に任せてくれた。


 あとは期待に応えるだけ。そう言いたいところだけど、僕はこの宝箱にトラップがないのをもう知っているので、いまいち緊張感が持てないけどね。


 でも、精一杯緊張しているフリをして、僕はいつものように宝箱を水で覆う。


 父上やトムは、大剣や盾を構えて僕を守る位置に陣取っていた。


 そして、ゆっくりと宝箱を開けていく。


 誰かが息を吞むような音が聞こえた気がした。


 宝箱から出てきたもの。 それは、一本の青と白の長剣だった。まるで流れる水を思わせる流麗な装飾は匠の技を感じる逸品だ。


 アクエリアス。


 水を運ぶ者という意味のロングソードだ。その最大の特徴は、この剣で攻撃したすべての攻撃が水属性になるという点だ。


 水魔法であるエンチャント・ウォーターが常にかかっている状態だね。

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