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086 マナポーションと新しい魔法

「私はマクマホンの研究施設で本物のマナポーションを見たことがありますの! この輝く青い液体……。詳しくは調べてみなくてはわかりませんが、まず本物のマナポーションとみて間違いないでしょう! 文献によると、飲むと一瞬で魔力が回復する霊薬です。今まで数々の研究機関がマナポーションの複製に挑戦していますが、そのことごとくが失敗していますわ」


 ゲームの時代でも、マナポーションはお店で売っておらず、こうしたダンジョンで手に入れるしかなかった。


 でも、あれから百年経っているのに、まだマナポーションの複製は成功していないらしい。


「なるほどな……」


 父上は珍しく考えるような仕草を見せる。


「ふむ。どうするのが最善か、後々考えるとしよう。それよりもキース!」

「はい?」

「お前って奴はすごいな! いつもオレの予想の斜め上を行きやがる!」


 そう言って、父上が僕の頭を乱雑に撫で回してきた。


 僕はぐわんぐわん揺れる視界の中でなんとか口を開く。


 それよりも父上に言わなくてはいけないことがあるのだ。


「父上、遺跡にはトラップがあったりするんですよね?」

「うん? そうだな。だから、むやみに壁とか触るんじゃないぞ?」

「そのことなのですけど、もしかしたら、僕の魔法を使えば、トラップの場所がわかるかもしれません」

「なにッ⁉ それは本当か⁉」

「はい。たぶん、いけます!」


 元々僕はこのダンジョンの宝箱の位置からトラップの位置、隠し通路の位置まで完全に頭に入っている。


 どうやってそれを父上たちに伝えようか悩んでいたけど、魔法ということにしてしまえばいいんだということに気が付いた。


 宝箱を見逃すくらいならまだいい。でも、トラップの中には毒矢など危険なものもある。どうにかしてトラップの位置を事前に伝えられないか考えていたのだ。


「試してみてもいいですか?」

「トラップはオレも危惧していたんだ。キースの魔法でその位置がわかるならありがたい。だが、失敗しても大丈夫だぞ? あんまり気負うなよ」

「はい!」


 そんなこんなで僕の魔法をとりあえず試してみようということになった。


 魔法を使うには集中力が必要だろうと、僕のポジションは父上の隣になった。ここなら何かあった時も父上が僕を守れるからという判断らしい。


 まぁ、僕としては魔法を使うことに支障はないんだけど、父上の気遣いが嬉しかった。


「じゃあ、使います」

「うむ!」


 父上が頷くのを確認し、僕は水を生み出す。


 そして、生み出した水を床はもちろん壁や天井も走らせる。


「へー……」


 トラップの位置を元々知っている僕としては、この水の魔法でトラップの位置を探してますよというただのアピール的な意味しかなかったのだけど、嬉しい誤算があった。


 なんと、本当にこの魔法でトラップの位置がわかったのだ。これは使えるね。いつ使うのかわからないけど。


「トラップの位置がわかりました。ちょうどそこにありますね」


 僕が指差した先の床には、そこだけ水が残っていた。


「そこにトラップがあるのか?」

「はい。そこを踏むと発動するタイプのトラップみたいですね」


 僕は水を生み出すと、壁にある小さな穴を矢印を作って差してみる。


「どうやらこの穴から毒矢が発射されるトラップのようです」

「そんなことまでわかるのか⁉」

「はい」


 驚く父上たちに頷いて答えると、父上がニカッと笑顔を浮かべた。


「すげーじゃねえか! キースの前ではトラップなんて意味がないな! 危惧していた自分がバカみたいだぜ!」

「さすがは坊ちゃんだ!」

「まさか、遺跡の高性能なトラップまで……。キース様は私をどれだけ驚かせば気が済むのでしょう?」

「すごい……」


 ダンジョンのトラップはみんな怖かったのか、ディアナまでいつもの無表情で拍手している。


「これで安全に進めるな。いくぞ!」

「はい!」


 トムを先頭に、僕たちはダンジョンの探索を再開した。


「この先、モンスターがいます! 数は三体!」


 僕の開発したトラップ探知魔法。トラップが探知できるなら、モンスターも探知できるよね。そういうことにして、僕は自分が探知できたモンスターの情報をあげる。


 いやぁ、この魔法を使ってよかったなぁ。いろいろと誤魔化せそうだ。


「そうか。気を引き締めろよ!」

「はい!」

「へい!」


 通路を曲がると、まるで電気がついているように通路の一角が明るくなっていた。しかし、そこにはモンスターの姿はない。


 まぁ、僕はもうモンスターがどこにいるのかわかっているけど。


「どうなってやが……上だ!」


 父上の言葉に、みんなが上を向く。


 そこには、まるで天井から滴り落ちるマグマのような光景が広がっていた。


「何だ、ありゃあ?」

「モンスターです!」


 トムの気の抜けた声に答えると、僕はマグマに向けて水を走らせる。


 すまない、マグマスライム。本当は飼いたいけど、きっとアクアがダメだって言うし、キミは危険すぎるんだ……。

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