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083 『炎帝の祠』

 遺跡『炎帝の祠』。


 その構造は、迷路のような第一ステージと、シンプルな一本道の第二ステージに分けることができる。


 迷路のような第一ステージには、火属性のモンスターが登場し、第二ステージの一本道の先には、まるで地下神殿のような祠があり、邪炎竜ガレスゴディアの魂が封印された神器が安置されている。


 僕たちは今、第一ステージである迷路部分を探索中だ。松明の明かりに照らされた通路は、すごく冒険っぽい雰囲気で、僕は大満足である。


 もちろん、『レインボー・ファンタジー』のガチ廃人だった僕には迷路の正解のルートがわかる。しかも、落ちているアイテムをすべて回収する最短ルートだ。


 でも、そんな知識を披露したら、なぜそんなことを知っているのかと疑問に思われてしまう。とてももどかしいけど、ここは黙秘一択だね。


「領主様、分かれ道です。どうしやすか?」

「ふむ。では右に行こう」


 僕たち、調査団の指揮を執るのは父上だ。そして、最も安全な場所にいるシンディーがダンジョンのマッピングをしていく。


 最初のT字路を右に曲がると、通路の先が明るくなっていた。


「儂たち以外に人がいるのか……?」

「いや、こいつは……モンスターの臭いだ!」


 暢気なトムの発言を父上が即座に否定する。


 僕の目の前にいるディアナも武器を構えているあたり、本当にモンスターなのだろう。


 というか、父上って臭いでモンスターがわかるんだ……。すごいね?


 暗い石造りの通路を明るく照らしている存在。それは三匹のコモドドラゴンぐらいのサイズのトカゲだった。


「あれは!」


 当然、僕はそのモンスターに見覚えがあった。


 ファイアリザード。この『炎帝の祠』で出現するモンスターの一つだ。その最大の特徴はルビーを思わせるような赤い体。そして背中の中心、ちょうど背骨に沿うようにメラメラと炎が燃えている点だ。


 相手がモンスターだとわかってからのトムと父上の行動は迅速だった。


「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 トムが通路の反響するほど大きな声をあげ、盾を構えてファイアリザードに突っ込んでいく。その後を追うように父上が大剣を抜いて駆けていく。


「マズい!」


 ファイアリザードは、アクロイド男爵領に出現する毒を持っているだけのサンドリザードとは違う。火炎放射という技を使うのだ。


 僕は万が一のために床に水を高速で走らせる。


 対する三体のファイアリザードは、トムと父上を迎え撃つように二体が後ろ足で立ち上がるが、残りの一体が大きく口を広げている。きっと火炎放射の予備動作だ。


 予想通り、ファイアリザードの喉が赤く光り、紅蓮の炎を吐き出す。


 ゲームの画面越しではなく、リアルで見るファイアリザードの火炎放射は、とても迫力満点だ。このままではトムや父上が火傷を負ってしまうだろう。


 だが――――!


「よっと」


 僕は床を走らせていた水を操ると、ファイアリザードの火炎放射を包み込み、そのまま大きく開いたファイアリザードの口に水を詰め込んでいく。


 すると、ファイアリザードは驚愕したように暴れるが、それも長くは続かない。


 口の中に水を詰め込まれたファイアリザードは、お腹を爆ぜさせ、背中の炎も消えてしまう。まずは一匹かな。あとはトムと父上に任せよう。


「はあああああああああああああああああッ!」


 トムがファイアリザードの鋭い爪の一撃を避けると、その顔に強烈なシールドバッシュを喰らわせる。


 後ろにひっくり返るように倒れていくファイアリザード。


 その上に馬乗りになるように、トムが剣を突き刺す。


 急所を刺されたのか、ファイアリザードはジタバタ暴れることなくそのままぐったりと力が抜けていった。


 これで残るは一匹。


「どりゃあああああああああああああッ!」


 父上の戦闘は相変わらず豪快だ。


 いつもは食堂に飾られている豪華な大剣。それが振り下ろされると、防ごうとしたファイアリザードの両腕を断ち切り、それだけには留まらず、そのままファイアリザードを上から下まで両断する。


 その威力はいくら大剣を使っているといっても常軌を逸ししていると思う。


「トカゲが火を噴いた時は驚いたが、なんとかなったな! あの水はキースがやったのか?」

「はい!」

「いい判断だ! おかげで救われたぞ! さすがはオレの息子だ! 戦場の空気が読めてきたな!」

「あははは……」


 僕はファイアリザードが火炎放射をすることを知っていたから、もしものために備えていただけである。さすがに僕はまだ父上みたいに臭いでモンスターを発見できる気がしないよ。


 でも……。


「なんとなくだけど……」


 僕はなんとなくあのファイアリザードたちがいることが事前にわかっていた。感覚的な話だから言語化が難しいけど、何かが三ついるような気配をT字路を曲がる前から感じていたのだ。


 あれはいったい何だったのだろう?


 そして、その感覚によれば、後方から何かがこちらに近づいている感覚があった。

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