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082 遺跡調査

 両親のキスシーンを見た僕はやれやれといった気分だ。


 まぁ、両親の仲が良いのいいことかな。


「キース」

「はい」


 母上がかがんで、僕を強く抱きしめる。僕はおでこにキスをされた。


「必ず、生きて帰ってきて」

「はい!」


 母上のお腹は、少しだけ膨らんでいる気がする。ここに新しい命が宿っていると考えると、神秘的な気持ちになる。


 こうして命のバトンは繋がれていくんだなぁ。


「村の警備は任せたぞ!」

「お任せください!」


 トムが村に残る警備隊の肩を叩いて激励し、コリンたちが応えている。


「領主様! 俺たちも連れて行ってください!」


 その時だった。いつもの『赤いキツネ』の三人組が、木剣を持って父上に直訴する。彼らの目は本気だ。本気で村のために、アクロイドのために戦いたいと申し出ている。


「そうか」


 父上はその大きな体をかがめると、三人組の頭を順番に撫でながら口を開く。


「お前たちの心意気は嬉しい。しかし、残念だがお前たちを連れていくことはできん。お前たちには別のことをしてもらいたいからだ」

「別のこと……?」

「そうだ! これから村を出るオレたちの代わりに、村を守ってほしい。オレたちの帰る場所を守ってほしい。どうだ? やるか?」

「やります!」

「ぜってー守ります!」

「んだ!」

「頼んだぞ! 若き戦士たちよ!」

「「「はい!」」」


 父上って意外と子供の扱い上手だよなぁ。


 僕はそんなことを思いながら、父上と『赤いキツネ』のやり取りを見ていた。


「では、行くぞ!」


 父上が先陣を切って歩き出すと、村のみんなが声援を送り始める。アクアスライムたちもぽよんぽよん弾んで応援していた。


「ご領主様の出発だ!」

「みんながんばえー!」

「トム! がんばれよ!」

「シンディー先生! がんばってください!」

「キース様、応援してます!」

「領主様万歳! キース様万歳! アクロイド万歳!」


 村人たちに応えるように父上が大剣を担いでいる背中から抜いて天を差す。


「アクロイドに栄光あれ!」

「「「「「アクロイドに栄光あれ!」」」」」


 父上の言葉を復唱する村人たち。その姿に満足そうに頷くと、父上はまた歩き出した。父上に遅れないように僕たちも歩き始める。


「坊ちゃん! 無理しちゃダメですよ!」

「トム! 帰ってきたら、儂の秘蔵の一杯おごっちゃる!」

「シンディー先生! 必ず帰ってきてください!」

「領主様のお帰り、お待ちしておりやす!」


 結局、村人たちとアクアスライムたちは、村を包む水のヴェールの端まで来て、最後まで声を枯らして声援を送ってくれた。


 村人たちの期待に応えるためにも、僕たちもがんばらないと!


 それから歩くこと一時間ほど。


 トムを先頭にして、昨日発見した遺跡の入り口までやってきた。


「ここが発見したという遺跡か……」


 父上が睨み付けるように遺跡の入り口を見ている。遺跡の入り口は日の光が当たっているが、その奥は真っ暗な闇が広がっている。


「まずは隊列を決める。一番最初はトム、次にオレ、シンディー、ディアナ、キース、アクアの順番だ。異議のある者はいるか?」


 父上の問いかけに手を上げる者はいない。シンディーを真ん中に置いたのは、治癒魔法を使えるシンディーが僕たち調査団の生命線だからだ。


 そして、前方にトムや父上を置くのは、前方での戦闘が多く想定されるから。


 そして、後方にアクアや僕を置いたのは、アクアが敵の攻撃を防ぎ、僕がその間に敵を倒すことを期待してのことだろう。父上はちゃんとバックアタックへの対応も考えている。


「松明はトムとシンディー、そしてアクアに持ってもらおう」


 父上の言葉に、トムが背負ってきた大きなリュックの中から松明を三本取り出した。


 ゲームだったら、なぜか通路や部屋の中が見通せて松明など必要なかったけど、現実ではそうもいかないらしい。やはり、父上やトムの経験は役に立つね。僕もこの経験を活かせるようになろう。


「松明に火を着けたら、さっそく遺跡に潜る。何か質問のある者はいるか?」

「ご領主様、ご領主様の身になにか起こった時、指示は誰が? 例えば、撤退の指示などは誰が出しますの? ご領主様が健在であればよろしいですが、そうでない場合も考えられます」


 普通なら訊くだけで怒られそうなこともちゃんと確認するのはシンディーだ。


 たしかに考えたくないことだけど、父上の身になにか起こる可能性もありえる。その時どうするか、それも考えないといけない。


「オレの身になにか起きた時は、トム。トムもダメな時はシンディーに任せよう」

「わかりやした」

「かしこまりましたわ」


 父上の言葉にうなずくトムとシンディー。二人とも慣れているのか、そこに戸惑いの表情はなかった。


「探索中、何か気が付いたことがあれば、遠慮なく声をあげるといい。今回は、あくまでも遺跡の探索調査だ。各人、命を大事にいこう。帰ればまた来られるからな」


 父上がそう話を締めくくると。いよいよ遺跡の調査が始まった。

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