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079 打ち明ける

「何⁉ アクロイドの呪いの元凶がわかっただと⁉」


 翌日、早朝。


 僕とディアナ、父上と母上、そして、トムとシンディーは客間に集まっていた。


 大きなソファーの中央に父上。その右に母上、左側が僕だ。ローテーブルを挟んだ向こうのソファーにはトムとシンディーが座っている。ディアナは僕の後ろに立っている。


 もちろん、みんなを集めたのは僕だ。そして、今まで父上に口止めしていたのも僕である。父上には心から宴会を楽しんでもらいたかったからね。トムとシンディーには黙ってもらった。


 そして、大宴会から一夜明けた今日。僕は父上に昨日の探索で遺跡を発見したことを伝えたのだ。


 父上は今まで見たことがないほど目と口を開いて驚愕し、父上の隣に座る母上も両手を口に当てて驚きの表情をみせていた。


「どうして昨日言ってくれなかったんだ!」


 父上が僕を問い詰めるように訊いてくる。


 父上としては、一刻も早く聞きたかった情報だろう。でも、それを口止めしたのは僕だ。


「昨日は宴会だったので……。宴会中に領主である父上が難しい顔をしていたら、みんな全力で楽しめませんよ」

「それはそうだがなあ……」


 父上は腕を組んでもどかしそうにしている。


「ご領主様、昨日、私たちが帰ってきたのはもう夕暮れ前でしたし、その時出発しても遺跡に到着するのは夜になっていましたわ。それなら、翌日話しても同じだろうと思いまして。それに、まだ元凶と断定できたわけではありませんでしたので……」


 僕を擁護するようにシンディーが言った。


「そうでさあ。あまり坊ちゃんを責めないでやってくだせえ」


 トムも父上に言ってくれる。


「わかった、わかった。それで? 具体的には何を見つけたんだ?」

「先ほども言いましたけど、遺跡ですわ。それも古い時代、おそらく神話の時代の遺跡です」


 シンディーの話を聞いて、父上が神妙な顔をして首を傾げる。


「遺跡……。そこが元凶なのか? まさか、魔族の遺跡か⁉」

「その可能性もありますが、もっと悪い可能性も……。キース様がおっしゃるには、火の邪悪な魔力を感じるようです。遺跡の作られた年代から考えて……邪炎竜ガレスゴディアが封印されている可能性も……」


 シンディーが深刻な顔で言うけど、父上も母上もピンとこなかったのか、首を傾げるばかりだ。


「邪炎竜、がれ……?」

「シンディー、その邪炎竜とは何なのでしょう? 貴族院の講義では習っていない単語です」

「邪炎竜ガレスゴディアですわ。ご領主様たちが知らないのも無理はありません。邪炎竜ガレスゴディアは、神話時代に邪神の味方だった炎を操るドラゴンですわ。神話時代に討伐され、封印されているとされてきましたが、どこに封印されているのかはこれまでわかっていませんでした」

「うーむ……。そのドラゴンは、もう大昔に討伐されているんだろう? なんでそれがアクロイドの呪いの元凶になるんだ?」


 シンディーの説明を聞いた父上がさらに質問を重ねていく。母上の話では貴族院でも習わない内容みたいだし、まったく邪炎竜ガレスゴディアに対する情報がないのだろう。


 僕は前世で設定資料集を見たから大体のところはわかるけど、そうじゃなければ普通は学者じゃなければ知らないような専門的な知識なのだろう。


「邪炎竜ガレスゴディアは、今のドラゴンと一緒に考えてはいけません。神が創った原初のドラゴンの一つですわ。たしかに、邪炎竜ガレスゴディアを討伐はできましたが、その魂までは消滅できなかったのです。そして、邪炎竜ガレスゴディアの魂の力の影響がこの大地を乾き、雨の降らない呪われた土地にしている可能性は否定できませんわ」

「…………」

「そんな……」


 あの即決即断の父上が腕を組んで難しそうな顔で無言だ。母上に至ってはまるで絶望したように悲観的な顔をしている。


 ただのドラゴンでも軍隊が動くレベルなのに、相手は魂だけとはいえ原初のドラゴンの一体だ。その影響力は、ここで暮らしてきた者なら嫌でもわかってしまう。


 さすがに慎重に動かなければならない。だから父上も考えているのだろう。


 しかし、父上の顔がだんだんと苦々しいものに変わっていく。


 昨日シンディーが言っていた通り、国に支援を求めても無駄だという結論が出たのだろう。


「私の伝手でマクマホン辺境伯に直接手紙を届けることは可能です。マクマホン辺境伯は初代アクロイド男爵の功績を認めている味方ですわ」


 これにはちょっと驚いた。マクマホン辺境伯といえば、旧リンドグリーン王国の南部を纏める顔役だ。そんな大物が、まさかアクロイドの味方とは思わなかった。


 でも、よくよく考えれば、初代アクロイド男爵や兵士たちの活躍がなければ旧リンドグリーン王国はめちゃくちゃになっていた。旧リンドグリーン王国の貴族の中には、初代アクロイド男爵の功績を認めてくれる貴族が少なからずいるのかもしれない。

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